新・読書日記 2015_153
『呪文』(星野智幸、河出書房新社:2015、9、30第1刷・2015、10、30第2刷)
書評で見て、面白そうだなと思って読んでみた。この著者の本を読むのは初めて。
1965年、米・ロサンゼルス生まれ。1988年早稲田大学卒業。新聞社勤務後メキシコに留学。1997年デビュー。2015年『夜は終わらない』で読売文学賞受賞。もう新人さんではない、堂々とした中堅、いやベテランだ。
都会の、少し郊外に近い駅のさびれかけた商店街。高齢化で人も減って・・・という中で若い人たちが、新しい店を経営すべく入って来るのだが、長続きしない。それをなんとか立て直そうと商店街の理事会の理事になって頑張る、青年居酒屋店主・図領。その熱意と理想に集まる人たち。
ここまでは、まあいいのだが、あるクレーマーがこの居酒屋にネットでクレームを付けたところから、居酒屋店主の中の「怪物」が目覚める。
新興宗教のような、ファシズムのような熱狂の中から、恐ろしい世界が商店街を支配するようになる。最初は、なんとなく「コワさ」を感じて居酒屋店主に反抗していた、儲からないメキシコ料理のスタンドをやっている霧生も、次第に取り込まれていく・・・。
怖い。
今、似たようなことが、現実の世の中でも起こっているのではないか・・・。そんな気持ちにさせる一冊。
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