新・ことば事情
5884「性転換・性適合」
2015年8月5日の「ミヤネ屋」に出て来た「KABA.ちゃん」が「男」から「女」になろうとしているという話題で、リードでは、
「性転換手術」
と言いましたが、VTRやスーパー、スタジオコメントでは、
「性適合手術」
と言っていました。その昔は「性転換手術」と言っていましたが、10年以上前からは、
「性適合(化)手術」
と言うようになっています。これは、
「『性転換』という言葉についた『悪いイメージ』を払拭するため」
でもありました。この話題を報じた女性誌やスポーツ紙では、
(見出し) (本文)
「女性自身8/18・25」 性転換手術 性別適合手術、いわゆる性転換手術
「デーリー7/27」 **** 性転換手術
「日刊スポーツ7/22」 性転換"工事" 性別適合手術(性転換手術)
「日刊スポーツ7/14」 性転換手術 性別適合手術(性転換手術)
「スポーツ報知7/14」 性転換手術 性別適合手術(性転換手術)
「スポニチ7/14」 性別適合手術 性別適合手術(性転換手術)
とありました。
「性適合手術」というのは、
「性同一性障害」
という「疾患(病気)」を治す手段としての手術だということを、定着させるための名称変更でした。
さらに去年(2014年)春には、日本精神神経学会が、「精神疾患の病名」の新しい指針を公表しました。それによると、
「性同一性障害」⇒「性別違和」
などに変更されています。差別意識や不快感を生まないようにしながら、病名を周知させるのが狙いだとのことです。
しかし、「性同一性障害」は法律名(「性同一性障害特例法」)にもなっていて、まだ名称が変わっていませんので、マスコミ各社も「性同一性障害」のままです。
国(厚生労働省)が決定したら、その段階で「新しい名称を採用する」ことになるだろうというのが、去年6月に開かれた「新聞用語懇談会 放送分科会」での、各社の用語委員の見解でした。
『読売テレビ放送用語ハンドブック第三版』にも「性同一性障害」とは、
「自分の心の性と身体の性との不一致が容認できないこと。2004年に『性同一性障害特例法』が施行され、一定の条件下で『性別の取り扱いの変更審判』を受けることが認められている。『性同一性障害』が疾患のひとつであることを理解し、この言葉を適切に使うことに留意すべきである。」
とあります。
10月28日放送の「ミヤネ屋」のパネルに、また、
「性転換」
という言葉が出て来ました。見出しとして使うので、「性適合」というのでは、うまくマッチしません。ディレクターが考えて、
「男⇒女」
という見出しにしました。