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『道浦TIME』

新・読書日記 2015_119

『下流老人~一億総老後崩壊の衝撃』(藤田孝典、朝日新書:2015、6、30第1刷・2015、8、10第5刷)

2か月で5刷、という事はかなり売れている。誰が買うのだろうか?「下流老人」は買えないだろうから、「下流老人」の恐れを感じる人が買うのか?

著者は1982年生まれのNPO法人の代表理事。若者である。サブタイトルは「一億総老後崩壊の衝撃」。

「一億総○○」と聞いて思い浮かぶのは「一億総中流」。30年ほど前は、ほぼそんな状態だった。おそらく1985年の「プラザ合意」あたりから、それが崩れて来たのではないか。「グローバル化」という名前の「アメリカン・スタンダード」が広がり、2000年初頭の小泉政権でそれがさらに加速し、揺り戻しの民主党政権の無能さが更にその後の自民党・安倍政権に勢いをつけた。「中流」が崩れたことによって、「下層老人」が大量に発生することになった。

本書における「下流老人」とは、「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」と規定している。具体的な指標は「3つのない」。すなわち、

(1)収入が著しく少「ない」

(2)十分な貯蓄が「ない」

(3)頼れる人間がい「ない」(社会的孤立)

そして、第2章で紹介される「下流老人の現実」は、先日書いた「2015読書日記117」の『老人に冷たい国・日本「貧困と社会的孤立」の現実』(河合克義、光文社新書:2015、7、20)と全く同じである。そして、もともと「下流老人」は「最初から下流であった訳ではないのだ」という現実が、「誰でもが下層老人に陥る危険性をはらんでいる」ことを想像させる。

著者は「下流老人の問題点」として、以下の4つの悪影響を挙げている。

(1)親世代と子ども世代が共倒れする

(2)価値観の崩壊

(3)若者世代の消費の低迷

(4)少子化を加速させる

既に、これらの悪影響は出ている。若者は、未来のためにお金を使うのではなく「貯蓄しよう」とする傾向が強いが、その若者層や子どもの貧困が、現実のものとなっている。

OECDの「対日審査報告書」(2012年版)によると、日本の「相対的貧困率」は、過去最悪を記録。OECD加盟34か国のうち6番目に高い数値で、子どもの貧困率も、なんと16,3%にも上るという。

著者は、「下流老人」を減らすためには「生活保護制度を使いやすくする」ことを提案している。現在の「救貧制度」としての「生活保護」ではなく、「防貧」的視点を取り入れてはどうかと。中でも「住宅費」の占める割合が想像以上に大きいので、民間借家への家賃補助など「衣食住」の「住」を支える案を提案している。一考の価値はあるだろう。


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(2015、9、3読了)

2015年9月16日 11:03 | コメント (0)