新・読書日記 2015_117
『老人に冷たい国・日本「貧困と社会的孤立」の現実』(河合克義、光文社新書:2015、7、20)
「貧困」が日本でも広がっている。日本は先進国なので貧困などないと思っている人が多いが、ここ15年ほどで急速に「貧困」が広がっているのが現実だ。それは「超高齢化」とも歩調を合わせている。「貧困」は「孤立」を生み出し、その結果「孤立死」が生じる。
貧困と孤立は、最も弱い層を襲う。著者は明治学院大学の副学長で、実際に孤独な貧困老人の生活の実態を調べることで、その原因を探って来た。結論は「政策が、貧困と孤立を作り出す」。高齢者政策の中で大きな影響を与えているのは「介護保険制度」。2000年の導入以降、生活保障制度を大きく変え、高齢者に多くの負担を強いるようになった。実は「介護保険制度」を利用している高齢者は、たったの15%なのだ。そして貧困と孤立の問題は、残りの85%の中で発生しているというのだ。
「おわりに」から引用する。
「先進国の中で、日本ほど『老人に冷たい国』はない、とつくづく思う。我が国で高齢者の貧困と孤問題がこれほど深刻なのは、個人責任の範疇を越えた社会的背景を持つ。(中略)不安定な仕事をしてきた人の高齢期の貧困と社会的孤立、しかし生活態度は控えめで、困難な状況にあって助けてと言わない人、そうした人を無視した政策の展開が、孤立死・餓死を生み出してきた。」
そして「老人福祉法の理念」の一節を引き写した後、こう、本書を締める。
「高齢者を敬愛し、生きがいを持てる健全で安らかな生活を保障するために、いまある貧困と社会的孤立の問題を解決しなければならない。『老人に冷たい国・日本』を変えるために。」
我々「中年」も、「若者」も「子どもたち」も、いずれ行く道なのだから。
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