新・ことば事情
5845「戦死」
8月14日の「ミヤネ屋」は「戦後70年」の特集で、硫黄島(いおうとう)からの全編生中継でお送りしました。「全編」とは言いつつ、実は「VTR」部分だけでも70分以上ありました。そのVTR部分を、原稿とスーパー合わせて事前にチェックしていました。
その際に、硫黄島の旧島民で、18歳と16歳の2人のお兄さんが「軍属」として島に残されたという奥山登喜子さん(82)。2人の兄は、戦争で亡くなりました。その「死」を、最初の原稿では、
「戦死しました」
と書いてあったのですが、それに疑問が。というのも、「軍属」というのは、
「軍人ではなく軍に所属する文官・文官待遇者など」(「広辞苑」)
なのです。「戦死」というのは、
「『軍人』が死んだ場合だけ」
なのではないでしょうか。「軍属」や「民間人」が死んだ場合は「戦死」とは言わないのではないでしょうか?そう思ったので、一応、「戦死しました」という表現はやめて、
「亡くなりました」
にしました。その後、国語辞典を引いてみると、
(広辞苑)戦闘で死ぬこと。うちじに。
(明鏡国語辞典)軍人が戦闘によって死ぬこと。
(精選版日本国語大辞典)軍人・兵士が戦場で死ぬこと。うちじに。
(デジタル大辞泉)戦いに参加して死ぬこと。
(岩波国語辞典)戦争に行って戦闘によって死ぬこと。
(三省堂国語辞典)戦争に参加して、戦って死ぬこと。
(新明解国語辞典)戦闘に参加して死ぬこと。
というようなことで、「戦死」が「軍人・兵士」と記しているのは、
「精選版日本国語大辞典」「明鏡国語辞典」
だけでした。でも、きっとそうだよな。だって、「民間人」が空襲で亡くなっても「戦死」とは言わないですよね。
あと、少し疑問に思ったのは、
「戦闘によって死ぬこと」
とあるのですが、たとえば「兵糧」が断たれたりして、
「戦闘することなく病死・餓死」
した場合は、「戦死ではない」のか?いや、これは「戦死」に当たると思いますが、どうなんでしょうか?
また「戦争に参加して」という表現が多い中で、「岩波国語辞典」は、
「戦争に行って」
とありますが、「戦場」は必ずしも「国外」とは限らないので、「行って」という表現はどうなのか。
こんなことは考えなくてもいい世の中にしたいものですが・・・。