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『道浦TIME』

新・ことば事情

5842「米軍・米兵の読み方」

 

新聞など「文字」のメディアでは「アメリカ軍」「アメリカ兵」のことを、

「米軍」「米兵」

と書きますが、これを「読む」ときに、

「ベイグン」「ベイヘイ」

とそのまま読むのか、あくまでも「米」は「アメリカ」を略した「表記」に過ぎないので、読む際には、

「アメリカグン」「アメリカヘイ」

と読むのか?といった問題が、「音声」のメディアでもある「テレビ」では生じます。もちろん「音声」のメディアである「ラジオ」でも。

「どっちでも、おんなじやん」

とは思いますし、そんなに気にはならない(と思う)のですが、気にしだすと気になります。

以前、新聞用語懇談会の放送分科会で、これを議題に出したことがありました。まず、10年前(戦後60年)の「2005年7月」。

『最近「米軍」と書かれたものを、そのまま「ベイグン」と読んでいるのをよく耳にするが、これは「アメリカグン」と読み直すべきではないか?「英国」「独」「仏」にしてもそのまま読むことは少ないのではないか?』

これに対する各社の反応は、

『基本は「アメリカグン」と読み直すべきであろう。例外として「米」をそのまま「ベイ」と読むケースとしては、「米軍基地」「在日米軍」「日米首脳会談」「日米関係」などがある。「英国」も基本的には「イギリス」と読み直す。「独」「仏」も「ドイツ」「フランス」と言うべきである。おそらく、最近は新聞を紹介するコーナーが増え、新聞の見出しや本文の中のそういった漢字を、そのまま読んでしまっているケースが増えたのではないか。』

というものでした。

また、それから5年後の「2010年2月」にも、議題に上がっています。

『「米軍基地」「在日米軍」と文字で書かれている場合の「米軍」は、「アメリカ軍」に言い直しているか?』

これに対する回答は、TBSが、

『以前は必ず「アメリカ軍」と言い直すように指導されたし徹底していたが、今はバラバラになっているかも・・・。「在日」は「日本に滞在している」、「駐日」も「日本に駐在している」と言い直すように言われたが、今はそのままのことが多い。』

それ以外の社は、「うーん」というような表情で、

「たしかに言い直した方がいいだろうけど、必ずしもやっていないかなあ・・・」

というような感じでした。

「ミヤネ屋」のきょう(2015年8月14日)の放送は、「戦後70年」の節目ということで、「硫黄島から全編生中継」でお伝えしました。その際に出て来たVTRの中の「米軍」「米兵」の読み方は、当時の話で「旧日本軍の視点」は、原則、

「ベイグン」「ベイヘイ」

としました。ただ「アメリカ側の視点」や「現在のアメリカ」の話の中では、

「アメリカグン」「アメリカヘイ」

という読み方もOKとしました。混在はしていますが、それぞれ「どちらの読み方にするか」を検討した上での読み方です。

そもそも「アメリカ軍」「アメリカ兵」のことを、表記上の略字として「米軍」「米兵」と書くのは、「アメリカ合衆国」「アメリカ」も「米国」「米」と書くのと同じですね。でも、それは「文字表記上の省略」であって、読む場合は略さずに、

「アメリカグン」「アメリカヘイ」「アメリカ」

と読むのが、やはり原則です。

しかし、歴史的には(つまり「太平洋戦争中」は)「米軍」「米兵」「米国」と書いて、

「ベイグン」「ベイヘイ」「ベイコク」

と読んでいた(呼んでいた)と思われます。クリントイーストウッド監督の映画、

『硫黄島からの手紙』

の中でも、渡辺謙扮する栗林中将率いる旧日本軍は、

「米軍(ベイグン)」

と言っていました。こういった場合はやはり、

「ベイグン」「ベイヘイ」

とするのが、一番良いのではないでしょうか。

ちなみに、最近の他局の放送では、7月30日のテレビ朝日のお昼のニュースでは、

「米軍機」

を、

「ベイグンキ」

と読んでいました。同じ日のNHKのお昼のニュースでは、スーパーは、

「米軍機」

でしたが、アナウンサーの「読み」は、

「アメリカ軍機」

でした。

 

(追記)

8月14日の「ミヤネ屋」は、「戦後70年」特集で硫黄島(いおうとう)から全編生中継でした。その番組の中のVTRでインタビューに答えた硫黄島からの生還兵・大越晴則さん(87)「米軍」を、

「ベイグンに見つかってはいけない」

と、「ベイグン」と呼んでいました。

(2015、8、17)

 

(2015、8、14)

2015年8月17日 11:18 | コメント (0)