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『道浦TIME』

新・ことば事情

5830「リンチ」

 

7月23日のNHK正午のニュースを見ていたら、アメリカの「ヘイトクライム」による大量殺人事件のニュースで、アメリカの司法長官がコメントを発表している様子を伝えていました。その司法長官の名前(名字)は、

「リンチ」

でした。「ヘイトクライム」で「リンチ」って...と思って、

いわゆる『私刑』の意味の『リンチ』の語源」

を調べようと、『広辞苑』を引いてみたら、こう載っていました。

 

「リンチ(lynch)」=(アメリカの判事W.Lynch17421820の名に由来)法によらない私的制裁。私刑。

 

え!そうだったのか!「アメリカの判事」で「リンチ」って人がいたのか?でも、

「その人が行ったから『リンチ』という名になった」

のか、それとも、

「そういった私刑はいけないという判決を出した」

から「リンチ」と言われるのかは、是だけではわかりません。もう少し調べて見ましょう。

「語源由来辞典」

http://gogen-allguide.com/ri/lynch.html

というサイトによると、

『1770年代、アメリカ・バージニア州で私的法廷を主宰していたキャプテン・ウィリアム・リンチ(Captain William Lynch)の名前が語源である。リンチは施設法廷で正規の手続きによらず、残酷な刑罰を加えたことから、そのような刑罰を「Lynch Law」と呼ぶようになった。この「Lynch Law」は、日本で名詞として使われている「リンチ」と同じ意味で、英語で「Lynch」は「リンチにかけて殺す」という意味の動詞になる』

とありました。また「ウィキペディア」では、

『語源はアメリカ独立戦争時のバージニア州の独立派有力者チャールズ・リンチ大佐、同じくバージニア州のウィリアム・リンチ判事などに由来する等の諸説あるが、詳細についてはわかっていない。』

となっています。また、「とっさの日本語便利帳の解説」というサイトでは、

「リンチ」=『ウィリアム・リンチ(William Lynch。一七四二~一八二〇)▼米国バージニア州の治安判事。一七八〇年に市民グループの指導者として、社会の秩序を乱していた暴徒たちを処罰するため、「リンチの法」(Lynch's law)と呼ばれた私的裁判権を行使した。米独立戦争時代の治安判事で、農場主でもあったチャールズ・リンチ(Charles Lynch。一七三六~九六)も、この語に名を残したといわれる。彼は、英国本国に味方する人々を私的裁判にかけ、絞首刑に処したと伝えられる。さらに、一五世紀のアイルランド、ゴールウェイ市長のジェームズ・フィッツスティーブン・リンチ(James Fitzstephen Lynch)は、一四九三年に自分の息子を裁判にかけて処刑した。このリンチも名祖の一人である。』

とありました。

リンチ、結構いるじゃん。しかし、やはり「リンチ(私的制裁)」を行っていた人の名前が「リンチ」だったのですね。あ、そういえば映画監督に、

「デイビッド・リンチ監督」

という人もいたな。わりとアメリカではよくある名前(名字)なのかも知れませんが、それが、こんな意味の代名詞になるなんて、ねえ・・・。

(2015、7、29)

2015年7月29日 18:10 | コメント (0)