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『道浦TIME』

新・ことば事情

5829「少年院の新名称」

 

「少年法」の改正に伴って、「少年院」の分類が、ことし6月1日から66年ぶりに変更されました。それによると、「旧少年法」では非行歴、年齢、心身の状況によって、

「初等少年院」

「中等少年院」

「特別少年院」

「医療少年院」

の「4つ」に分類されていたのが、改正によって、新しい「少年法」では、

*「第1種少年院」(旧法での16歳未満の「初等少年院」と16歳以上の「中等少年院」を統合)

「第2種少年院」(旧法での「特別少年院」)

「第3種少年院」(旧法での「医療少年院)

の「3つ」に分類となったそうです。

7月13日に、長崎・佐世保の高1女子同級生殺害事件の実行犯の少女(16歳)を、旧法の「医療少年院」送致とする保護処分を決定したニュースでは、(いずれもインターネット版)

「読売新聞」=「第3種(旧・医療)少年院」

「毎日新聞」=「医療少年院(第3種少年院)」

「産経新聞」=「医療(第3種)少年院」

「日経新聞」=「医療(第3種)少年院」

「朝日新聞」=「医療少年院」

地方紙では

「中国新聞」=「医療(第3種)少年院」に送致

という表記でした。

「読売テレビ」では、NNN(日本テレビ系列)からの原稿(出稿は恐らく「長崎国際テレビ」)で、

「医療少年院」

と伝えました。テレビ各社・新聞各社は、どのような方針で、どういう表現で報じられたのか、各社の用語担当者に伺ったところ、以下のような回答が来ました。

 

【MBS】

TBS系のネットニュースでは7月13日のNBC(長崎放送)からの放送で、リードは、

「加害少女を医療少年院送致とする保護処分を決定しました」

本記では、

「第三種少年院、いわゆる医療少年院送致の保護処分とすることを決めました」

とした。

 

【ABC】

ABCラジオのニュースでは、

「医療少年院」

という従来どおりの表現で、一方、テレビ系列局である「長崎文化放送」の出稿も、

「医療少年院」

という表現になっていた。

 

【フジテレビ】

系列「テレビ長崎」の原稿をそのまま放送した。リードは、

「医療少年院」

本文の中で、

「長期の治療教育が期待できる第三種少年院、いわゆる医療少年院に送致」

と説明している。今後も、基本的には、「医療少年院」と言わなければわからないだろうから、「医療少年院」を使うことになるだろう。

 

【KTV】

このニュース、弊社「ワンダー」(関西ローカル)では全く扱いがなかった。

きのう(7月15日)のFNN「全中ニュース」では

「第3種少年院、いわゆる医療少年院」

になっていた。定着するまでは、このような言い回しが続くのかもしれない。

 

【共同通信】

共同通信の新聞原稿は「医療(第3種)少年院」で、放送原稿は「医療少年院」。

6月1日に改正少年院法が施行されたのに伴い、以下のように用語を統一している。

 ▽初等少年院と中等少年院は「初等・中等(第1種)少年院」

 ▽特別少年院は「特別(第2種)少年院」

 ▽医療少年院は「医療(第3種)少年院」

 

【読売新聞】

少年法改正を受けて、記事では単に「少年院」で足る場合は、「少年院」と表記する。

 ただし、種類の記述が必要な場合は、

「第1種(旧・初等、中等)少年院」、

「第2種(旧・特別)少年院」

「第3種(旧・医療)少年院」

とする。また、重大案件などで、より丁寧な説明が必要な場合は、

「通常の非行少年を収容する第1種(旧・初等、中等)少年院」

「犯罪傾向が進んだ少年を収容する第2種(旧・特別)少年院」

「医療措置が必要な少年を収容する第3種(旧・医療)少年院」

などと記述することにした。

「見出し」については、「医療少年院」を許容。今後も見出しは、

「医療少年院」

とし、記事中は、

「第3種(旧・医療)少年院」となるのかと思う。

 

【朝日新聞】

社会面での扱いは、東京・大阪とも「記事本文」で、

「第3種(医療)少年院に送致」

とし、「見出し」では、

「医療少年院送致」

としている。法改正の趣旨が「特別」という呼称を消すことにあるので、「心身に障害のある少年」を収容するのが目的の「第3種少年院」については、従来通り「医療少年院」と表記した方が、読者の理解の助けになるものと思う。

 

【毎日新聞】

2015年7月13日付で以下のような「用語連絡」が出ていた。

『「第1種(初等・中等)少年院」「第2種(特別)少年院」

「第3種(医療)少年院」とします

~6月1日より「改正少年院法」が施行され、法律上の少年院の名称が

  初等少年院、中等少年院→第1種少年院

  特別少年院      →第2種少年院

  医療少年院      →第3種少年院

にそれぞれ変更されました。これに伴い、記事での少年院の表記を

初出「第1種(初等・中等)少年院」、2度目から「第1種少年院」

初出「第2種(特別)少年院」、2度目から「第2種少年院」

初出「第3種(医療)少年院」、2度目から「第3種少年院」

とします。今後の行政文書は「第○種」という言い方になりますが、旧名称が浸透しているため、しばらくは両方を併記します。

 新名称の「第○種」の言い方がまだ浸透していないため、見出しについては旧名称を使ってもかまいません。』

 

【中国新聞】

弊社の場合、「医療(第3種)少年院」の表記は、共同通信の表記に従っている。

少年法が規定した用語をそのまま使ってはいない。想像だが、おそらく分かりやすくするために「医療」と「第3種」をミックスした表記にしたのだと思う。

 

 

なお、実際の7月14日の各紙朝刊の表記は、以下のようなものでした(大阪版)

(見出し)       (本記)

(読売)少女を医療少年院送致   第3種(旧・医療)少年院  ※解説有

(朝日)少女医療少年院送致    第3種(医療)少年院

(毎日)少女医療少年院送致    第3種(医療)少年院 

※社会面の見出しは「少年院送致父、涙」

(産経)16歳少女医療少年院に  医療少年院に送致 

                 ※決定骨子の表は「医療(第3種)少年院」

(日経)少女を医療少年院送致   医療(第3種)少年院

 

今後も注目していきます。

(2015、7、22)

2015年7月29日 16:03 | コメント (0)