新・ことば事情
5827「満天の星空」
7月23日、油井亀美也未注飛行士が、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地から、ソユーズで宇宙へ飛び立ちました。それを報じた「ミヤネ屋」のテロップをチェックしていたらこんな表現が。
「満天に広がる星空を見上げること」
これは、実は間違いですね。正しくは、
「満天の星を見上げること」
です。というのも、
「満天」=「空全体」
であり、「満天(=空全体)」と「広がる」がやや重複の上、「星空」は「天=空」なので、「重複語」になります。また、
「満天の星」
が、成語(決まった表現)ですね。
読売新聞東京本社の校閲部主任の島津暢之さんが、ついこの間、7月24日に出された、
『知らないうちに間違えている日本語』(宝島社)
にも「いらない言葉を重ねる失敗」として載っています。ちょっと引用してみると、
『(正)満天の星を見に行こう
(誤)満天の星空を見に行こう
星の輝きが美しい季節、恋人をデートに誘うときなどは、言葉遣いにも注意が必要です。「軽井沢へ満天の星空を見に行こうよ」――これでは彼女も興ざめです。満天は「空一面」という意味なので、「満天の星空」だと「空一面の星空」ということになって「空」がダブってしまいます。ここは「満天の星」という正しい言い方でビシッと決めましょう。インターネット上では「満天の空を仰いで」「満天の空の下」など、「満天の空」という使い方も目にしますが、これでは「空一面の空」となり意味不明。気を付けましょう。』
なるほど。
なんとデートマニュアルにもなる一冊だったのですね、この本は。
でも「満天の星空」と間違って言ってしまっても、「軽井沢」ならきっと彼女は「興ざめしない」と思いますが。その彼女が、新聞社の校閲部勤務でなければ。