新・ことば事情
5825「蚊に刺される?食われる?かまれる?」
昨年(2014年)、蚊に刺されることで感染する「デング熱」患者が出て、聞き慣れない病気に対する警戒が高まりました。その際に、「蚊に刺される」ことを、方言として、
「蚊にかまれる」「蚊に食われる」「蚊に噛まれる」
ということが話題になりました。(私の周囲で)その際に行ったグーグル検索では、
グーグル検索すると(2014年9月18日)
「蚊に刺される」=45万1000件
「蚊に食われる」= 2万8700件
「蚊に咬まれる」= 4570件
「蚊に噛まれる」= 1万8800件
でした。
ことし(2015年)になって「蚊取り線香」の藤原竜也さんが出ているコマーシャルで、女性とこんなやりとりが。
女「あ、かまれた」
男「今、『かまれた』って言ったね?出身は?」
女「滋賀県だけど」
男「『かまれた』と『刺された』の境界線は、このあたりかな。」
(と言って、滋賀県あたりの地図に「かまれた」と書き込む)
男「刺されても、かまれても、金鳥蚊取り線香」
このコマーシャルは、方言的に見て大変興味深い、面白いコマーシャルですね!
一応、現在のグーグル検索数は(7月21日)
「蚊に刺される」=50万1000件
「蚊に食われる」= 5万6900件
「蚊に咬まれる」= 8万6100件
「蚊に噛まれる」= 7万1600件
「蚊にかまれる」= 1万3800件
でした。
そして、その「境界線」を調査したサイトがありました!やはり「デング熱」がらみでしょうか、去年(2014年)の12月12日の記述です。
http://j-town.net/osaka/research/results/197920.html
「『蚊に食われる』『かまれる』は方言? 『刺される』は都会人?」
というサイトで、そこで行われたアンケート(総投票数1313票、2014年11月7日~12月8日=Jタウンネットしらべ)では、
「刺される」=43,5%
「食われる」=39,8%
「かまれる」=14,9%
で、全国の分布は
「刺される」21=北海道、秋田、栃木、茨城、千葉、埼玉、神奈川、静岡、岐阜、三重、
奈良、和歌山、大阪、滋賀、京都、兵庫、岡山、山口、福岡、大分、熊本
「食われる」15=青森、宮城、山形、新潟、富山、石川、福井、群馬、東京、愛知、
徳島、愛媛、長崎、鹿児島、沖縄
「かまれる」5=鳥取、島根、広島、香川、宮崎
「刺される/食われる」4=岩手、福島、山梨、長野
「刺される/かまれる」1=高知
★その他・少数意見
「くっつかれる」=山梨(22,2%)、静岡(8,3%)
「吸われる」=奈良(9,1%)、滋賀(5,6%)
「かぶられる」=埼玉(2,0%)、福岡(2,2%)
だそうです。これらを通じて、
『「刺される」が全国で広く使われているのに対し、「食われる」は主に東日本、「かまれる」は主に西日本に浸透していることが確認された。』
としています。
そして翌日の12月13日には、分布の解釈に関して、やや修正というか、
『「食われる」は西日本でも浸透。関西でもかなり使う』
と題して、また日本地図が。
http://j-town.net/osaka/research/results/197921.html?p=all
「蚊に食われる」
を選んだ割合(Jタウンネット調べ)を記して、
「50%以上」13=青森、岩手、宮城、山形、福島、新潟、長野、富山、石川、福井、
長崎、鹿児島、沖縄
「30~50%」20=北海道、秋田、茨城、千葉、埼玉、東京、群馬、神奈川、山梨、静岡、愛知、岐阜、滋賀、大阪、岡山、徳島、高知、愛媛、福岡、熊本
「20~30%」7=栃木、三重、和歌山、兵庫、鳥取、山口、大分
「20%未満」6=京都、奈良、広島、島根、佐賀、宮崎
また、同じく、
「蚊にかまれる」
を選んだ割合は、
「50%以上」3=鳥取、島根、宮崎
「30~50%」5=京都、奈良、和歌山、兵庫、高知
「20~30%」7=山形、滋賀、大阪、徳島、愛媛、山口、長崎
「20%未満」=たくさん(残り全部)
という状況で、「山形」以外はほとんど西日本だけです。
筆者は、
『「東の食われる、西のかまれる」というよりは、ほぼ全国区の「食われる」に対し、関西~中・四国に「かまれる」が食い込んでいる状態。関西では、食われる・かまれるが混在している状態。関西人だからといって「かまれる」とは限らない。』
『「境界線」は東は滋賀、西は山口、南は香川といったところだろう。』
と記しています。更に、言葉の広がり方として「3つの仮説」を立てています。それは、
(1) 元々、西日本は「かまれる」だった。そこへ大阪へ「食われる」が上陸し、関西全体に広がった。
(2) 元々、全国的に「食われる」だった。そこへ広島あたりから「かまれる」が入って来て広がった。
(3) 「食われる」がより古い言葉で、京都から同心円状に広がり、その後「かまれる」が新たに流行り、再び同心円状に広がった。東日本で根付いた「食われる」が逆輸入され、関西で「かまれる」と混在するようになった。
私は、柳田国男の「蝸牛考」の「方言集圏論」である(3)番の意見を支持しますね。
また、「青森」「山形」あたりに、西日本系の言葉が残っていることに関しては、
「北前船の影響」
が残っているのだと思います。
私は個人的には「刺される」「かまれる」「食われる」、全部、違和感なく使います。