新・ことば事情
5824「赤い手拭い」
ちょっと黄ばんだ新聞・・・・2013年3月26日の日経新聞夕刊「いまドキ関西」のスクラップが出て来ました。「歌ものがたり」というコーナーで取り上げた曲は、かぐや姫の歌で大ヒットし、「四畳半フォーク」という言葉も生み出した、
「神田川」
この曲を作詞をした、大阪出身の「喜多條 忠さん」が、会ったことも話したこともなかった大先輩の作詞家「なかにし礼さん」に、
「君はたぶん関西以西の出身。そうでしょう」
と言い当てられて驚いたというエピソードが載っていました。実際、喜多條さんのご実家は、大阪の昆布卸商なのだそうでですが、「神田川」の歌詞の中にも「関西」らしい風情は全くなかったはずなのに、どうして・・・と驚いた喜多條さん。
なぜ、なかにしさんが、喜多條さんの出身が「関西以西」と言い当てたか?なかにしさんによると、
「『赤い手拭い マフラーにして』とあるでしょう。東日本では手拭いといえば木綿の平織り、いわゆる日本手拭いのこと。ところがマフラーの代わりになるのはタオル地のもの。これを慣用的に手拭いというのは西日本だよ。それと、クレパスという商品名がクレヨンの代名詞として定着しているのも関西ならでは。」
とのことです。なかにしさん、さすが、観察の鋭い言葉の専門家ですね!歌詞からそこまで読み取るとは!舌を巻きますね。私はこれを読むまで、「手拭い」と「マフラー」については、何十年も全く気付きませんでした。「クレパス」が「商品名」というのは気付いていましたが。
あ、ちょうどこれを書き終えて、「PHP新書」から出たばかりの、
『大林宣彦の体験的仕事論』(大林宣彦・語り、中川右介・構成)
という本を読んでいたら、「タオルと手ぬぐい」が出て来ました!
73ページに、こういう記述が。
『東宝のような大企業の撮影所では、映画に使う「タオル」と「手ぬぐい」では、持ち場が違うんです。タオルは小道具部、手拭いは衣装部の扱いなんです。まだ慣れていない助監督が小道具部に手ぬぐいを借りに行くと、「馬鹿もん」と言われたという笑い話がある。』
そうだったのか!大変、勉強になりました。