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『道浦TIME』

新・ことば事情

5810「祇園か?衹園か?」

 

2013年の7月に出た疑問。当時の番号は「平成ことば事情5170」でした。書きかけて止まっていましたが、また今年も7月が巡って来ました。「ぎおん祭」の季節です。

その「ぎおん」の「ぎ」の字、漢字で書くと、

「祇」

なのか、はたまた、

「衹」

なのか?つまり「へん」が、「示」なのか「ネ」なのか?という問題です。

京阪電車の駅で、

「衹園四条駅」

「衹」は、「示」ではなく「ネ」でした。これは「2013年」に調べたところね。

その後、いろいろ見ているんですが、今年「2015年」、京阪電車の中のポスターでは、

「衹園祭」

と「ネ」でした。

新聞では、2015年6月25日の朝刊各紙に、「祇園祭ドローン禁止」という記事が出ましたが、その際の字体は、

(読売新聞)衹園(ネ)

(朝日新聞)祇園(示)

(産経新聞)祇園(示)

と分かれました。

ことし、読売テレビの報道デスクからも、字体について質問を受けたのですが、

「両方あるけど、やはり伝統のあるお祭りだから旧字体の『示へん』の『祇』のほうがいいんじゃない?」

と答え、そのようになりました。しかし、実は去年、もっとややこしい問題が出ました。

「示へん」の「祇園」と書いた(打った)つもりが、「漢字が違った」のです。

「示へん」は合っていたのですが、「つくり」のほうが「氏」ではなく、「氏」の下に、1本「―」(横棒)が引っ張られた字だったのです。つまり、

祇園

と書いたつもりが、

祗園

となっていたのです。

なぜ「ぎおん」で変換して、そんな字が出るのか?そもそも、そんな漢字があるのか?あるとすれば何と読むのか?

調べたところ、あるんですね、別の字が。『漢字源』を引くと、下に横棒が引かれた漢字は、「音読み」で、

「シ」

意味(訓読み)は、

「つつしむ」「うやまう」「ただ」

だそうです。「示へん」は「神に仕える」という意味で、「つくり」は「テイ」という音を表しているそうです。注釈には、

「祇(ギ)=(地の神)とは別字」

とあるので、やはりよく間違われるのでしょう。

「祇園」の「祇」の字で思い出しました。

中学の時の同級生で、「漢字の書き取りテスト」で「ぎおん」の「ぎ」を、

「下に横線を引いた『祗』」

と書いて「×」を付けられた友人がいました。彼は、憤然と先生に、

「先生、何で×なんですか?合ってるやんか!」

と抗議したところ、

「横線が1本多いから、×」

という、至極まともな回答をされました。しかし、彼はこう答えました。

「ええやんか、1本ぐらい!まけといてや!」

もちろん、先生はまけてくれませんでしたが、彼はその回答に納得できず、授業の途中だというのに、

「窓から飛び出してエスケープ」

してしまいました・・・、1階だから、よかったようなものの・・・。

今、もし私が国語の先生なら、

「別の漢字なんだよ」

と教えてあげたのになあ。

 

 

(追記)

今、これをプリントアウトしたところ、「明朝体」で書かれた「ぎおん」の「ぎ」は、どちらの字体も「ネ」で出ているではありませんか!真ん中あたりの「ゴチック体」のものは「ネ」と「示」に分かれています。「書体」によって、印刷する際に「書体が違う」のですね!面倒な話だなあ・・・。

(2015、7、9)

 

 

 

(追記2)

「スギヤマ ケイイチさん」という読者の方から連絡を頂きました。ありがとうございます。

『2013年の7月に出た疑問。当時の番号は「平成ことば事情5170」でした。書きかけて止まっていました』

と書いてある部分、「5170」は「なぜ『サケ』は濁るのに『サンマ』は濁らないのか?」なので、間違っているのではないか?というご指摘です。

ややこしいことを書いてしまいました。すみません。

実は、ブログにアップするまでに「タイトルだけ書きかけて置いてあるコラム」がたくさんありまして、この間、整理したら「(仮)の通し番号」はすでに「6054」まで行っています。その中で、気が向いたものを書いていくので、「(仮)の通し番号」と、「実際にアップされる時の番号」が異なるのです。

実際にアップする際には、「(仮)の通し番号」は消してしまいますが、

『その「(仮)の通し番号」が「5170」であった』

という意味だったんです。これは分かりにくいですよね。

今後、この番号のことを書くのは、やめます。いつ頃書きかけたかだけを記します。

ご指摘ありがとうございました。

(2015、7、14)

 

(追記2)

大変久しぶりに、川崎市の西尾さんからメールを頂きました。

 

『川崎の西尾です。5810「祇園か?衹園か?」を拝読して気づいたことをご報告します。 この「衹」は、示へんの「ネ」ではなく、衣へんになっています。つまり、「祇」とは別字と思われます。』

 

え!そうなの?と確認した所、文字を拡大してみたら、あ!確かに!「ネ」の「へん」で出したつもりが「衣へん」になってる!

 

『示へんの「祇」は、音読:キ・ギ・シ・ジ、訓読:<なし>

衣へんの「衹」は、音読:キ・ギ・シ・テイ・タイ、訓読:<なし>

従来のJIS漢字コード規格は、示へんは「ネ」になっていましたが、2004年の改定で常用漢字は「ネ」のまま、表外字は「示」に統一(本来の字形に変更)されました。これは御承知かと思いますが2000年の国語審議会答申「表外漢字字体表」を反映したものです。

 

22期国語審議会答申「表外漢字字体表」(平成12128日)

http://kokugo.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/joho/kijun/sanko/hyogai/index.html

 

経済産業省「JIS漢字コード表の改正について」(平成16220日)

http://law.e-gov.go.jp/announce/040220kanjicode.pdf

 

Windowsパソコンでは、Windows XPまでは旧漢字コード規格でしたが、Windows Vista以降は 2004年版の漢字コード(俗に「JIS2004」と呼ぶ)を採用していますので、表外字は基本的に「表外漢字字体表」の字形で表示されます。

文字コードは変更されていないので、同じ文書でも、旧規格のフォントを内蔵したパソコンでは「ネ」へんの「ネ氏」で、新規格のフォントを内蔵したパソコンでは「示へん」の「示氏」で表示されます。

また、昔のパソコンで「ネ氏」で書いたはずの古い文書を、新しいパソコンで開いてみると、勝手に「示氏」で表示されます。表外字の「辻」などの「一点しんにょう」が「二点しんにょう」に変わったり、「葛」の字形が変わったのも、同様に「JIS2004」のせいです。』

 

うーんややこしい、難しいけど、途中で規格の変更などもあったことが原因のようですね。そして、結論としては、

 

『いずれにしても、同一文書内で同一フォントを使って「ネ氏」と「示氏」を書き分けることはできません。』

 

そうなのか!困ったな。

 

『5810「祇園か? ~」の記事は、Wondows8パソコンでは(MS明朝でもMSゴシックでも)「示氏」で表示されます。スマートホンの2種類のフォント「Droid Sans(サンセリフ)」「UD新丸ゴ」では「ネ氏」で表示されます。「衣へん」の「衹」のほうは、JIS漢字コードに存在せず、unicodeに存在する漢字ですが、パソコンでもスマートホンでも「衣へん」で表示されます。俗にいう「環境依存文字」なので、機器によっては表示できません。』

 

こうなったら、もう、

「どちらでも同じ字なので、許してね」

としか言えないですねえ・・・。

きょう・16日は「宵山」ですが、「台風11号」のほうも気になりますけど、「字体」も気になる「事態」で・・・。

(2015、7、16)

 

 

 

 

 

 

 

 

(2015、7、9)

2015年7月12日 18:54 | コメント (0)