新・読書日記 2015_095
『国家の攻防/興亡~領土、紛争、戦争のインテリジェンス』(佐藤優、角川新書:2015、4、10)
会員制の情報誌で、著者が2006年11月から2015年1月まで、ロシア情勢に関して書いたコラムを集めたもの。
最初の方(2006年)のものは情報としては古いのだが、そこに書かれていること(「予想」、ある意味で「予言」)が、その後、実際に世界で起こっているという事実を知れば、著者の眼力・未来を見通す目の確かさを確認できるエビデンス(証拠)だと見ることもできる。
たとえば、最初の大統領を辞めて首相になったときのプーチンは、次の大統領選挙に出馬して、2020年まで2期、大統領を務めて「プーチン王朝」を作るつもりだという読みは、おそらく当たっていると言えるだろう。
本書を読みながら赤線を引いた部分を、いくつか抜き書きする。
*「新自由主義は、経済主体が行動するにあたって障害になる要素をすべて除去するという排除の思想である。(中略)頭を使って何か難しい思想を構築するという作業は必要とされない」(46ページ)
*「ロシア側は小細工を軽蔑する」(156ページ)
*「ロシア外務省の姿勢を牽制できる 安倍首相のソチ五輪『開会式出席』(198ページ)
*「ウクライナ政府は占拠を行っている自国民に『テロリスト』というレッテルを貼り、翌一四日にトゥルチノフ大統領代行がテロ作戦を開始する大統領例に署名した」(217ページ)
*「トゥルチノフの狙いは、ロシアに(中略)軍事介入を行わせることだ。そうすれば、ロシアによる侵略を口実に新政権は、米国、EUから政治的・経済的・軍事的な支援を得ることができる。その結果、財政破綻の危機を回避できる」(217~218ページ)
いやあ、やっぱり国際政治の現場は一筋縄ではいかないな!「肉を斬らせて、骨を断つ」じゃないけれど「奇奇怪怪」ですねえ・・・。さらに、
*「米国は、『敵の敵は味方』という単純な論理でウクライナ暫定政権の抱える深刻な問題から目を逸(そ)らせている。ロシアが毒蛇ならば、ウクライナは毒サソリである」(219ページ)
*「GRU(ロシア軍参謀本部諜報総局)は、"独立王国"で、簿外の資金が潤沢にある。それは、GRUがインテリジェンス活動だけでなく武器売買にも従事しているからだ。武器市場に『定価』は存在しないので、簿外の資金を作ることが容易である」(220ページ)
そうなのね・・・。