新・ことば事情
5803「最後の晩餐」
6月21日に開かれた新聞用語懇談会放送分科会で、こんな質問を出しました。
『「豚生レバー問題」で、規制が始まる前夜までに食べることなどを指して「最後の晩餐」を使うのは、宗教上問題があるでしょうか?なお、「ミヤネ屋」では" "を付けて"最後の晩餐(ばんさん)"として放送しました。 』
これに対する各社の委員の意見は、
(読売新聞)この慣用句本来の意味での使われ方ではない。「最後の晩餐」は、キリストの「人生で最後の食事」という意味だが、今回の使われ方は「豚生レバーが食べられる最後の食事」となって、意味が変わってしまっている。
(MBS・A氏)「冥福を祈る」などは宗派によっては使わないが、こういった比喩表現は、みんなが笑って「OK」であるようならば、どちらでも良い。
(MBS・B氏)宗教関連の言葉は、「その宗教の信者がどう思うか」が重要。例えばイスラム教なら「ブタ」を使うのはダメ、といったこと。
(MBS・A氏)日蓮宗で使われる「お題目」だが、比喩的に「会議ではお題目しか出なかった」「お題目を唱えてばかり」と否定的な内容で使っている某局のアナウンサーがいて、知り合いの日蓮宗の僧侶が抗議の電話をかけたところ、以後ピタッと使わなくなったそうだ。
(WOWOW・C氏)半年ほど前、サッカー・スペインリーグ(リーガ・エスパニョーラ)の、数年前の「レアル・マドリードvs.バルセロナ」戦に、新たに実況をつけて放送するというケースがあり、バルセロナからレアルに移籍して「禁断の移籍」と言われた「ルイス・フィーゴ選手」が「裏切り者」という意味の「ユダ」と呼ばれていたことがあった。実況の音声では「ユダ」とは言わずに、「裏切り者」という意味を伝えたが、画面には「ユダ(Judas)」と書かれたプラカードが映っていた。(そのまま放送した。)
(NHK・D氏)「最後の晩餐」に関して、もし問い合わせがあったら「使うのはやめたほうがいい」と言うだろう。ただ、「お題目」に関しては、辞書を引いても1番目には宗教的な意味が載っているが、2番目の意味で「口先ばかり」と載っているので、問題ない。先日「歴史番組」をチェックしていて、満州国建設の場面で「お題目ばかり」というセリフがあったが、そのまま通した。
とのことでした。
その後、7月5日のフジテレビの人気アニメ「サザエさん」で、
「アナゴさん最後の晩さん」
という回があったそうで、
「アナゴさんが死んじゃうのか?」
と注目されたそうです。内容は、
「アナゴさんの奥さんが家出して、その際に『お世話になったお礼に『最後の晩さん』を作っておきます』と書き置きがしてあった」
というものだそうです。見てないけど。やはり、使われるのですね、「最後の晩餐」。