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『道浦TIME』

新・ことば事情

5793「オービス」

 

<2008年12月に書きかけたままになっていました。当時の番号は「平成ことば事情3571」でした>

 

2008年12月19日の各紙朝刊に、大阪府堺市に設置された「自動速度違反取締装置」(商品名の通称は「オービス」)で、偶然テスト撮影された車(タクシー)を、違反車両反車両と勘違いして大阪府警が運転手を書類送検してしまったという"事件"が載っていました。これを報じた新聞の表記が微妙に違いました。「オービス」は「特定商品名」なので、それを使っているかどうか、またその言い換えは?ということに注目しました。

<本文>           :     <見出し>

(朝日)自動速度違反取り締まり装置(オービス):オービス試験で罰金。

(読売)速度違反自動取締装置(オービス)オービステスト画像「速度違反」大阪でも誤る

(産経)自動速度取締装置:テスト画像で誤って速度違反摘発

(日経)速度違反自動取締装置:大阪府警テスト画像で誤検挙

(毎日)記事なし

 

うーん、「朝日新聞」と「読売新聞」は「オービス」を( )の中で使っていますね。これは、

「商品名ではない」

という判断なのでしょうか?それに対して、「産経新聞」と「日経新聞」は、「オービス」は使っていません。

また、日本語(漢字)での表記が、各社、微妙に違います。「自動」が先に出てくるのが「朝日と産経」、「速度違反」が先に出てくるのが「読売と日経」。また「取り締まり」と「送り仮名」を送っているのが「朝日」、他の3社は、「取締」と、「漢字のみ」の表記です。微妙な違いだ、内容は同じだけど。

このあたりについて、「朝日新聞」の知り合いに聞いたところ、

「『オービス』は、もともと『ボーイング社』が開発したもので、日本では『東京航空計器』という会社が商標登録している。朝日では今のところ取り決めていないが、新聞協会の調査結果では、一般名としては『使用不可』扱い。他の会社の製品も含めて『オービス』と言っているようにも思うが、商標権者がいる以上は『通称使用は、やめる方向』だと思う。一般名は新聞協会の調査結果では『速度違反取締装置』。『自動』が必要かどうかはよくわからない。『取り締まり』については、朝日の基準では『送り仮名省略例』に当たらないので『送り仮名つき』」

とのことでした。

また、「読売新聞」の知り合いに聞いたところ、

「『オービス』は『東京航空計器』の商品名。新聞協会で作成した『特定商品名』の一覧にも載っている。ただ、この商品は、この会社しか作っておらず、他社の製品と紛れたりするなどの問題は起こらないため、当面様子を見ながら、用いている。『タミフル』などと同様のケース。一覧表の言い換えでは『速度違反取締装置』だが、これはあくまで参考情報で、新聞協会として、これに統一するということではない。『自動』を付けるかどうか、付けるなら、どこに入れるかなどは、『各社判断』でやっている。」

とのことでした。

 

とここまで書いて7年間、ほったらかしだったのですが、2015年6月23日、奈良県警奈良署交通2課の巡査部長・中西祥隆容疑者(44)が、スピード違反を見逃す代わりに違反者が経営する風俗店を無料で利用させてもらったり、金品を受け取っていた事件で再逮捕されて、また「オービス」問題が出て来ました。

各紙の表記をネット上で拾ってみると、

<本文>           :<見出し>

(毎日)速度違反自動監視装置(オービス):オービスももみ消しか(6月23日)

(産経)自動速度違反取締装置(オービス):オービス不正操作で (6月23日)

(朝日)速度違反自動監視装置(オービス):速度違反もみ消し  (6月24日)

(読売)自動速度違反取締装置      :オービス画像不鮮明に(6月24日)

(日経)自動速度違反取り締まり装置      :速度違反もみ消しか(※6月23日)

(「日経」はネット上では見つからず、夕刊に記事がありました。)

 

日経除き、各紙メーンではないけれど、「オービス」使っていますね。

「読売新聞」は、「本文」では使わないけど、「見出し」単独で使っています。

また、7年前の記事(本文)と比べると、

【2008年】          :  【2015年】

(朝日)自動速度違反取り締まり装置(オービス):速度違反自動監視装置(オービス)

(読売)速度違反自動取締装置(オービス)   :自動速度違反取締装置  

(産経)自動速度取締装置           :自動速度違反取締装置(オービス)

(日経)速度違反自動取締装置         :自動速度違反取り締まり装置

(毎日)記事なし               :速度違反自動監視装置(オービス)

 

「朝日」は「取り締まり」から「監視」になり「自動」の位置が後ろになっています。

「読売」は「朝日」とは逆に、「自動」の位置が「前」に出て来て本文では「オービス」が消えました。

「産経」は「違反」が入り、(オービス)も入りました。

「日経」は頭に「自動」が入り、「取締」から「取り締まり」へと送り仮名が入りました。「オービス」は、前回も今回も使っていません。

「毎日」は前回は記事を確認できませんでしたが、今回「オービス」を使っています。

 

「ウィキペディア」を見てみると、

「自動速度違反取締装置は、アメリカのボーイング社で開発された、道路を走行する車両の速度違反を自動的に取り締まる装置である。通称のオービス(ORBIS)はラテン語で『眼』を意味する言葉からとったボーイング社の商標である。そのため厳密な意味ではボーイング社(もしくはライセンスを受けた会社)以外の『取締機』をオービスと呼ぶのは誤りであるものの、他社の製品を含めての取締機全般の通称として使われることが多い。」

とあります。

6月24日に放送した読売テレビの「かんさい情報ネットten.」では、

「自動速度違反取締装置」

で放送し、翌日の「スッキリ!!」でも同じ表現でした。(出稿は読売テレビ)

 

 

(追記)

2015年11月3日の午前0時過ぎの朝日新聞のネットの記事で、本文では、

「速度違反取り締まり装置」

で、見出しは、

「速度違反レーダー」

でした。

(2015、11、4)

 

 

 

(2015、6、26)

2015年7月 2日 20:23 | コメント (0)