新・読書日記 2015_088
『もたない男』(中崎タツヤ、新潮文庫:2015、6、1)
「じみへん」で知られる漫画家のコラム。
漫画も変わっていて面白いが、この人の性格も変わっていておもしろい。「じみへん」というか「へんじん」ですね。あ、そうか、「じみへん」は「地味でヘな人」と「ジミー・ヘンドリックス」をかけたものかと思っていたが、「変人(へんじん)」を逆から読んだものでもあるのか!今、気付いた、何十年も愛読していて、単行本まで買っていたのに。
「購買欲」はあるが、「所有欲」はない。「所有欲」はない、というか、「捨てたい欲」が一番強いと。「捨てる」には、一旦「所有」しなくてはならない。ほら、いわゆる「ゴミ屋敷」の人は「所有欲=捨てられない」という状況に陥るのだが、この著者はその"裏返し"で、捨てたくて仕方がない。ある意味「ビョーキ(病的症状)」ではあるが、それを自覚していて客観的に自分を見つめているので、考察はとても"哲学的"になる。そうか、こういうことがあって、あのマンガが生まれていたのか!あの漫画の「おもしろみ」「哲学的理屈っぽさ」は、ここから生まれていたのか!というのが分かると同時に、読んでいる私自身についても、いろいろと考えさせられる(内省させられる)一冊。
捨てる。便利と無駄のせめぎ合い。便利とは?便利のために犠牲にするものとは?という問いかけである。
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