新・ことば事情
5750「大きな荷物を抱えた人たち」
ゴールデンウイーク最終日のきょう(5月6日)、「Uターンラッシュ」がピークを迎えています。お昼のニュースは、各地の空港や駅の混雑の様子を報じていました。その中でテレビ朝日系列のニューで北海道・新千歳空港から中継していた男性アナウンサー(?)は、
「大きな荷物を抱えた人たちで」
と言っていました。しかしよく見ると、空港で大きな荷物を運ぶ人たちは、決して、
「抱えてはいなかった」
のです。大体、
「キャスター(車輪)付きのスーツケース」
を転がしているか、
「カートに荷物を積んで」
それを押して移動していました。
その後、千葉・成田空港から中継していた女性記者(?)は、
「おみやげなど、大きな荷物を持った人たちが」
と言っていました。「持った」ならば、「抱える」よりは、
「どんな形態あれカバーできる、より広義な表現」
に思えました。
しかしその後、スタジオの女性アナウンサーが読んだ成田空港の様子の原稿は、また、
「おみやげなどを抱えた人たち」
と「抱えた」になっていました。
正午のニュースでNHKの大阪局からの、関西国際空港に帰国した人たちの様子を伝えたニュース原稿は、
「大きなスーツケースや、みやげ物をカートに載せた人たち」
という表現で、「一番、事実を忠実に描写した表現」のように思いました。直接的ではありますが。
「昔はみんな、『大きな荷物を抱えていた』」
のでしょう。また、鉄道の駅であれば、「カート」は使わないでしょう。しかし、ここ10年から20年で、
「キャスター付きのスーツケース」
が、ビジネスマン以外にも普及し、空の旅以外でも使われるようになった。しかも働く女性が増えたことで、出張などの際に、男性よりも非力な女性がこの「キャスター付きスーツケース」を使うようになった。大きさも、それこそ1泊~2泊用から1週間以上のものまで様々あって、値段もお手頃になってますからね。女性が使っているのを見て、男性も使うようになったのではないでしょうか。あ、もしかしたら、
「パイロットやキャビンアテンダント」
が使っているのを見て、
「カッコイイし、ラク」
ということで、飛行機での出張をする女性が取り入れたのかもしれませんね。
この手のニュースの場合は、ついつい安易に、
「常套句」
に頼ってしまいがちですが、よく考えて「忠実に表現」したいものですね。