新・ことば事情
5743「『めぐる』は、なぜ平仮名か?」
「めぐる」
という言葉、漢字で書くと、
「巡る」
です。これは「常用漢字」なので、テレビや新聞では漢字で書けます。
しかし、なぜかテレビのテロップなどでは「平仮名」で、
「めぐる」
と書かれることが多いのです。その理由に、遅ればせながら先日、気付きました。
テロップは、例えばこんな感じです。
「契約めぐるトラブル」
この場合、なぜ漢字で書かないのか?実際に漢字で書いてみると、わかります。
「契約巡るトラブル」
ね!
わかりましたか?え?わからない?
これはつまり、
「『契約巡』と漢字が3つ続き『契約』と『巡る』の区別が付きにくくなるから」
なんですね。漢字で「巡る」と書きながら、区別を付けるには、どうすればいいのか?
それは、
「間に、助詞の『を』を入れる」
ことです。そうすれば、
「契約を巡るトラブル」
となり「契約」という言葉がハッキリと分かります。しかし、「見出し」「サブタイトル」の「サイドスーパー」としては、
「文章的すぎる」「説明くさい」
感じがするので、助詞の「を」を抜くのですが、そうすると最初の状態に戻ってしまい、漢字が続いて読みにくいので、「めぐる」は平仮名で書くことになっているのではないか?ということです。
これは、ほかにも、
「午後6時頃」「午後6時過ぎ」
と「頃」「過」を漢字で書くと、
「午後6時」
という重要なデータとしての「時刻」が目立ちにくくなってしまう。そこで、こういった場合は、
「午後6時ごろ」「午後6時すぎ」
のように書くのではないかなあと思います。
テロップは、パッと見て分かりやすいこと(=視認性)も、重要ですからね。