新・ことば事情
5727「矢が貫通」
茨城県取手市で、深夜に自転車に乗っていた男性が、クロスボウのようなもので右脚を撃たれる事件がありました。その際に、
「矢は右脚を貫通した」
と報じられましたが、そのあとに
「男性は、矢が刺さったまま病院に行った」
というような話が出てきたことについて、視聴者の方から、
「『貫通』の意味が分かっているのか?『貫通』したのなら『矢が刺さったまま』は、おかしいのではないか?」
というご指摘を頂きました。
ああ、たしかに!「貫通」は「貫き通り抜ける」であって、「矢が刺さったまま」を「貫通」と言っていいのかというと、疑問が残ります。しかし、
「矢の先(矢じり)が足を貫いている状態」
であれば、たとえ矢が刺さったままの状態であっても「貫通」と言えるのではないか?
つまり、「矢」の、
「"先"が貫通か?"全体"が貫通か?」
という問題ですね。
一般的に「体を貫通」と言うと、
「拳銃やライフルの弾」
の場合が多いので、「弾が貫通」というと、
「体内に弾が残っていない状態」
を指します。「弾が体内に残った状態」では「貫通していない状態」ですね。
しかし、「矢」のように「長い物」は、
「全体が体内に残ってもいても、先が足を貫通することもある」
のです。ほかにも、想像すると痛くなってきますが、
「『キリ』や『千枚通し』で『手のひら』を突き刺した場合」
は、「手のひら」に「キリ」や「千枚通し」が残ったまま、
「手のひらを貫通することは可能」
ですよね。(ああ、痛そう・・・)
今回の「矢」のケースは、「突き通す物が残ったままで貫通するケース」だと言え、その意味では、
「矢が貫通したまま、病院に行く」
ことも、「ありうる」ことになりますね。
(追記)
6月30日の朝、テレビを見ていたら、
「大分で見つかった、矢が刺さったシラサギ」
の映像が映っていました。その「矢」は、縦にシラサギの体を貫いていて、矢尻(矢の先っちょ)が、身体から突き出ていました。でも、「突き抜けて」はいませんでした。
「刺さったまま」
でした。
「『貫通』していても『突き抜けて体内に残らない』とは限らない」
ということが、よく分かりました。
(2015、7、6)