Top

『道浦TIME』

新・読書日記 2015_067

『アメリカはイスラム国に勝てない』(宮田律、PHP新書:2015、1、30)

 

著者は「ミヤネ屋」にも何度かご出演頂いた、イスラム関係の学者の第一人者のお一人。

まさに「イスラム国」が日本に牙を剥いて来て、ジャーナリストの後藤健二さんらが殺された時期に読んだ。タイトル通りだと、アメリカをはじめとした我々も「イスラム国」に勝てないことになるが・・・。内容は。。。

 

*「イスラム国」の財源は、石油の密輸と身代金そして不動産の奪取って、それってまんま「犯罪者集団」ではないか!昨今、日本でよく耳にする「半グレ」どころか、「暴力団」「犯罪者組織」なんですね!改めて確認。

*イラクやシリアが、アフガニスタンと同じ過程をたどっていたと。なぜそのようなことが起きるかと言うと、

「サダム・フセインがスンニ派だったので、旧政権を弱体化させるためにスンニ派とシーア派の対立を多国籍軍が意識的に煽った側面は否定できない」(23ページ)

「レバノンでは全人口の22%がクリスチャン、40%がシーア派、30%がスンニ派」

「レバノン北部のトリポリでは、スンニ派の急進的集団と、シリアのアサド大統領の出身宗派であるアラウィー派、シーア派とのあいだで、武力衝突が発生するようになった」

*「2014年6月下旬、米国はシリアの『穏健な武装勢力』に5億ドルの資金協力を行う事を決定した。(中略)米国が支援する『自由シリア軍』(FSA)は、『イスラム国』や『ヌスラ戦線』(アルイカイダ系とされ、現在は「イスラム国」と同盟)」との戦いでは形勢が悪く、弱体化を余儀なくされている」(24ページ)

「自由シリア軍の兵士たちも腐敗しており、米国から供与された武器を、『イスラム国』に売却し、現金を手にするものもいる。イラクのシーア派主体の政府軍から米国製の武器がブラックマーケットに流れることも、頻繁にある。」(25ページ)

といった、明快に敵・味方に分けられない実態というのがあるということが、読み進めるにつれて分かって来た。

また、「イスラム国」のような過激派が台頭する一つの要因としては人口増加があり、アラブ諸国では高い人口増加に見合うだけの職を供給できない。しかもそれに、生産性の効率の悪さという問題が加わる。(52ページ)

*『「イスラム国」の台頭を促す米国の戦争経済』(214ページ)の項などを読むと、結局こういった事態を引き起こした大もとに、米国の政策があったことも分かって来る。そうか、本書のタイトルは、そういったことに原因があるのだなと。

もう最初から最後まで赤線を引きまくったら、ほぼ全ページ赤くなって、何が何やら、わからなくなってしまいました・・・。これも明快に分けられない実態・・・。


star3_half

(2015、2、13読了)

2015年4月30日 18:13 | コメント (0)