新・読書日記 2015_063
『声優魂』(大塚明夫、星海社新書:2015、3、25第1刷・2015、1、10第2刷)
いつも「声優さんってすごいな」と思っている。
私もよく、「ミヤネ屋」で吹き替えをやっているが、これって結構、アナウンサーでは下手な人が多い。「吹き替え」は「セリフ」が多いので「語り」なのだが、アナウンサーは、つい「読んで」しまうのだ。「セリフ」だから「演じ」なくてはならない。つまり「声優」さんとは、その漢字が示す通り「声で演じる俳優」なのだ。しかし「声の専門家」であるアナウンサーも、声優には"勝てない"かもしれないけど、少なくとも「声の仕事」としては"負けない"ようにやらなくては!と思って、その「コツ」を掴めるかなあと思いながら、この本を手に取った。
「大塚明夫」さんの名前は、何となく聞いたことがあったが、
「あ、違った、私が知っているのは『大塚周夫』さんだった!」
と思って、「ちょっと待てよ、もしかして...親子?」と思ったら、案の定、親子。でも、こんな仕事は「一子相伝」でも、「二世議員」みたいなものでもないから、たまたま同じ道に進んだってことなんだろうな。
本を読んでいくと、初めから3分の1ぐらいまで、もう繰り返し繰り返し、
「声優なんか絶対に目指さないほうがいい」「悪いこと言わないから、やめときなさい」
とクドイほど書いている。何のための本なんだよ!と思うが、そんないやがらせ(?)にもめげないで読み進んだ人は、
「しょうがねえなあ、じゃあちょっと声優の面白みというか、やりがいも書いておくかな」
という感じになっていて、なかなか興味深い。
読んでいくと、「食っていける仕事」ではないということは、よく分かった。それでも好きで好きで仕方がなくて声優になりたい、声優の仕事がやりたい!と思える人か、もしくは、本当の「声優の天才」じゃないとやっていけない仕事のようです。「西友の仕事」じゃ、だめなんでしょうねえ。
「『感動』への志は持ちつつ、芝居中はあくまで『嘘をつかない』ことを貫く。それができなければ、役者としてひとつ抜けることはできないでしょう。こうした試行錯誤はおそらく、自分の胸に誰かの言葉が刺さった経験を持つ人間にしかできないことです。他人の言葉にハッとしたり、感動したり、あるいは深く傷ついたりーーそうした経験と感情のストックがあってこそ『言葉で人を刺す』ことの意味をふまえて、さまざまなキャラクターの陰影を表現できるのだと思います。」(118ページ)
人生経験は大事ですね、何事も。