新・ことば事情
5724「売り切らしておりまして」
近くの書店の本棚に『昭和天皇実録』(東京書籍)の「第二巻」が飾ってありました。
同時配本の「第一巻」はないのかな?と思って、カウンターにいた若い女性店員さんに聞くと、
「申し訳ありません、あいにく"売り切らして"おりまして・・・」
え?今、何て言ったの?
その言葉遣い「売り切らして」というのを奇異に感じたので、
「売り切らして?」
とオウム返しに言うと、言葉遣いに疑問を持ったとは露知らず、「売り切れ」の事実を確認したと思った彼女は、
「はい、"売り切らして"いまして・・・」
と繰り返しました。何を「やらかして」くれてんの?「撒き散らしておりまして」という感じですが、これは正しくは、
「"売り切れて"おりまして」
と言うべきところでしょう。新しい言葉かな、「売り切らす」は。
しかし、よく考えると「売り」が付かないの、
「"切らして"おりまして」
というのは「普通の」表現です。それに「売り」を付けたら、
「"売り切らして"おりまして」
となると推測するのは、自然とも言えます。若い人が、語彙が少ない中で、新しい言葉を解釈するとそうなるのかな?「混交表現」の一種だと思いますが。
でも、ここはやはり、従来通り、
「"売り切れて"おりまして」
「"切らして"おりまして」
のどちらかを使うように店長さん、ご指導をお願いいたします。
でも、感じの良い店員さんだったので、『昭和天皇実録 第二巻』を買いました。
ハードケースに入って2000円は安い!