新・読書日記 2015_059
『歴史の読み解き方~江戸期日本の危機管理に学ぶ~』(磯田道史、朝日新書:2013、11、10)
現代の「歴史家」の若手の大家で、向こう30~40年にわたって権威であろう磯田さんが、ご本人の一番得意な「江戸期」の分析で、現代に通じる「危機管理策」を教えてくれる至極の一冊。帯には、
「先達の叡智から 日本の未来を切り開く」
「危機への備え、先達の叡智に学べ」
とあり、さらに「見出し」的に、
「日本の犯罪率の低さは、綱吉時代に始まる」
「薩摩の実戦的 郷中(ごじゅう)教育が、維新の原動力」
「揺れを克明に記した江戸の地震計『天水桶』」
と興味深いものが並んでいる。読んでいて気になったものを記しておく。
「中世的暴力にとどめをさしたのが徳川綱吉の政権だった」(82ページ)
「歴史学では、鎌倉・室町時代(中世)を『自力の世界』ととらえ、江戸時代(近世)を『法治の世界』ととらえることが多い。中世の『自力』とはわかりやすくいえば、『やられたら、自分でやり返す』『自分の身は自分で守る』という思想で、自己武装が前提になった考え方」(82ページ)
「犯罪者を処刑するのは、被害者たる自分たちではなく、国家の警察力である。(中略)これが江戸時代の近代的なところ」(83ページ)
「長州人の学問好き」「長州人の理屈っぽさ」(107ページ)
さらに、宝永地震の際の富士山の噴火に関して、
「富士山の3倍、12キロ程度まで噴煙を噴き上げた」(187ページ)
「江戸でも火山灰の厚さが4~5寸、12~15センチ。火口の近所は3メートル積もったといいます」(187ページ)
「富士山の灰というのは、雪の重さに対して10倍の重さをもっており(中略)30センチ積もりますと、3メートルの積雪と同じ状態になります」(187ぺージ)
「私が危惧しているのは、火山灰の影響で、空気循環のためのフィルターが詰まってガスタービン式の火力発電所が動かなくなることです。」(188ページ)
「電力会社に強く伝えたいのは、『たとえ富士山の灰が5センチぐらい堆積しても、電力の供給が途絶えないように次善の対策を考えてもらいたい。』(188ページ)
これは、現代の我々にも参考になりますね。「富士山噴火」とか、チリの火山の噴火とか。
「金五郎さんのすごいところは、災害に対して緊急経済援助~今でいう補正予算ですね~をどのぐらいにしたかを書き残しているところです」(188ページ)
「米換算の総生産の2%を出した計算」
「各村からGDP全体のだいたい1%を復興事業に投入していることになります」(188~189ページ)
たいへん勉強になりました!!