新・ことば事情
5720「いつでもできま」
家の近くのスポーツクラブの入り口に、一つの窓に一文字、というぐらい大きな文字で「勧誘のことば」が記されていました。それは、
「見学いつでもできま」
というものでした。「大阪弁」で、
「できま!」(=「できます」の意味)
では、ありません。タネを明かせば、
「最後の『す』と書かれた紙が、剥がれて落ちた」
んですね、きっと。でも、「大阪弁」なら、
「できま」=「できます」
ですから、「まあ、そのままでもいいかな?」という感じですが、「標準語」で考えると、
「見学できま(す)」
なのか、それとも、
「見学できま(せん)」
なのか、わかりません。意味はまったく「正反対」になってしまいます。まあ、「できません」というのを大きく張り出すのも、おかしいのですが。
その貼り紙を見て、ここまで考えた後に「ハッ!」と思いました。
「大阪弁」では「できま」とか「おま」とか「だ」いう語尾の言葉があります。
関西の人にはおなじみの大阪・枚方市の遊園地「ひらかたパーク」(通称・ひらパー)の宣伝をしている「V6」の岡田准一さんがコマーシャルで、ものすごく"わざとらしく"
「そうでおま!」
というようにしゃべっていますよね。これらはすべて、
「語尾の『す』」
が脱落した形です。もともとは、
「できます」「おます」「だす」
なのです。でも「本当に脱落しているのか?」というと、実は、
「すごく勢いがいい」
んですね、この語尾。だから発音に正確に表記すると、語尾に小さい「っ」が付いて、
「できまっ」「おまっ」「だっ」
となります。
「この小さい『っ』こそ、『す』が変化した形なのではないか?」
つまり、
「語尾の『す』の母音の無声化を起こして『促音』となっているのではないか?」
と考えたのです。「大阪弁」というと、
「母音の無声化が行われにくい」
と考えられて来ましたが、この「語尾」については違うのではないか?と思ったのでした。