新・読書日記 2015_053
『他人の意見を聞かない人』(片田珠美、角川新書:2015、3、10)
著者は関西在住の精神科医。産経新聞でコラムを連載しているほか、「新書」の著作も多数著している。私も、新しい本が出るとほとんど読んでいます。以前、「読書日記」で感想を書いたところ、新著を贈って来てくれたことがあります。その節は、ありがとうございました。この本は買いました。
いやあ、この本のタイトルを見たときは「ドキッ」としました。自分のことを言われているようで。普段は、本に紙カバーをかけずに読むのですが、これは紙のカバーをかけて読んだもんね。
著者が本書を書く「きっかけとなった人」は「安倍晋三首相」だという。アベノミクスに対する町の人の批判のインタビューを聞いて「おかしいじゃないですか!」と感情的に反論した様子を見て、「こういう人が増えているのではないか?」と思い、そういった人を生み出す社会状況や、対処法などについて記した。
「第1章 なぜ他人の意見を聞かないのか」
「第2章 自分しか愛せない人が増えている理由」
「第3章 他人の意見を聞かない人と向き合うと、どんな気持ちになるのか」
「第4章 集団化する意見を聞かない人たち」
「第5章 他人の意見を聞かないのか、きけないのか」
「第6章 意見を聞かない人への対処法」
いやあ、もう、耳が痛い。そんな気持ちで読み進むと、こういった一節が。
「異質な意見を排除して、自分たちこそが『正義』だと声高に叫ぶのは、根底に渦巻く欲求不満ゆえだろう。<差異の恐怖>や<陰謀の妄想>、あるいは欲求不満を抱くのは、現在の日本が自尊心を持ちにくい社会だからではないか。」
と、日本社会のあり方に言及。また、
「自尊心は、①経験によって強化された全能感 ②対象リビドーの満足 ③幼児期のナルシシズムの残滓 の三つに由来すると、フロイトは述べている。」
と、フロイトの節を。<差異の恐怖>や<陰謀の妄想>はないけど、根底に「欲求不満」があるのかなあ。そして、
「欲求不満に陥った中間層への呼びかけは、歴史的ファシズムの典型的な特徴一つ」
と、ウンベルト・エーコ(あの『薔薇の名前』の)は挙げているのだという。それは恐ろしい。
私は「自分の利益のために」とは思わないが、「自分は間違っていない」という思いが人一倍強いことは、自覚している。でも、直そうと思わないけどね。だから直らないです。
「処置なし」
です。しかし、「あとがき」を読んで少し反省。
「他人の意見を聞かないことを無自覚のまま攻撃手段として用いる人が増えているということである。しかも、攻撃された側は、より弱い相手の言い分を聞かないことで鬱憤を晴らそうとするので、延々と連鎖していくことになる。この構造を理解すれば、できることは二つしかない。まず『いつかは聞いてくれるようになる』という甘い幻想を捨てることだ。そのうえで、『他人のふり見てわがふり直せ』ということわざを思い出して、他人の意見を聞かない人に自分自身がならないように気をつけることである。そうすれば、少しは生きやすい社会になるのではないだろうか。」
反省。