新・ことば事情
5709「『初対面』『初体験』の読み方」
<2014年10月13日に書き始めました>
「その相手と、生まれて初めて会う」
という場合の、
「初対面」
の読み方は、
「ショタイメン」
ですが、
「ノーベル賞受賞決定後『初対面』」
とあれば、これは、
「ハツタイメン」
と読むしかないのではないでしょうか?もちろん、
「初めての対面」
とすれば良いのですが。
例えば「野球」で、そのピッチャーとそのバッターが初めて対決する場合の、
「初対決」
の読み方も「ショタイケツ」ではなく、
「ハツタイケツ」
ですよね、きっと。
また、最近よく悩むのが、
「初体験」
の読み方が、
「ショタイケン」か?「ハツタイケン」か?
という問題です。使い分けはあるのでしょうか?
『広辞苑』を引くと、「ショタイメン」は載っていますが、「ハツタイケン」「ショタイケン」「ハツタイケン」は載っていません。
『新明解国語辞典』も「ショタイメン」は載っていますが「ショタイケン」「ハツタイケン」「ハツタイメン」は載っていません。
『新潮現代国語辞典』『岩浪国語辞典』『デジタル大辞泉』『明鏡国語辞典』『精選版日本国語大辞典』も同じです。ただ、『精選版日本国語大辞典』は「ショタイメン」の語釈の中に「はつたいめん」と書いてあります。
ところが!『三省堂国語辞典』は「ショタイケン」が「空見出し」で、
「ハツタイケンを見よ」
となっていました!「ハツタイケン」を引くと、
「はつたいけん(初体験)」=最初の(性の)体験。しょたいけん。
とシンプルな語釈が。また、「ショタイメン」は載っていて、「ハツタイメン」は載っていません。
また、『NHK日本語発音アクセント辞典』では、
「ハツタイケン(ショタイケン)」
と「ハツタイケン」を先に出して併記しています。また「ショタイメン」は載っていますが、「ハツタイメン」は載っていません。
そんなことを考えていたら、2015年4月3日に見た女性化粧品「マキアージュ」のCMで、
「春です。唇だって、はつ体験したい。」
というナレーションが聞こえて来ました。これは、
「ハツタイケン」
なんだ!いま「初体験」の読み方は、
「ショタイケン」→「ハツタイケン」
に変わりつつあるのではないでしょうか?
そして、以前は「初体験(ショタイケン)」というと、
「初めての性体験」
を意味していたのが、そういった特定の意味ではなく、広く、
「初めての体験」
の意味で使われるようになってきていると。そして、読み方を変えることによって、
*「ショタイケン」=「初めての性体験」(狭義)
*「ハツタイケン」=「一般的に初めての体験」(広義)
と「意味の分化」が行われているのではないでしょうか?
今後の国語辞典の「初体験」「初対面」の読み方について注目します。
「ハツタイメン」に「初対面」して「ハツタイケン」する日は来るのでしょうか。