新・読書日記 2015_034
『戦争を取材する~子どもたちは何を体験したのか』(山本美香、講談社:2011、7、12第1刷・2012、8、29第3刷)
シリア取材中に亡くなったジャーナリスト山本美香さんが、子ども向けに書いた本。
大きな字と豊富な写真で、やさしく「なぜ、戦争を取材するのか」を子どもたちに教えてくれる。読んでいると、自分も子どもになったような素直な目で、文章を追える。
日本にいるだけでは知らずに済んでしまうこと、世界各地の国々で、
「たくさんの命がひっそりと亡くなっている」
ということ。それを日本の人々にも知ってもらいたいという思いで取材していると。
それは結局、
「命とは?」「生きるとは何だろう?」
という問いにつながり、
「命を大切にすること」
につながる。その思いをみんなが持てるようになれば、世界はつながり、戦争はなくなる。「命の大切さ」を伝えることで、「平和」への理想を追うからこそ、「戦争」の現場で駆けずり回るようになるという、ちょっと逆説的な、皮肉なことになるのだけれども。
その戦場・市街地で、山本さんは銃撃され、亡くなった。「命の大切さ」を伝えようとして、自らの命を失った。その思いを考えさせられる一冊である。
なお、「2015読書日記025『戦場でメシを食う』」の著者・佐藤和孝は、仕事でも生活でも、山本美香さんのパートナーであった。
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