新・ことば事情
5690「マッサージのような」
去年(2014年)6月、大阪市内で、生後4か月の男の子をうつぶせの状態で首の動脈や胸などを繰り返しもみ、窒息状態に陥らせ死亡させた疑いで、57歳の女(姫川尚美容疑者)が逮捕された事件。
3月4日の各紙夕刊を見ると
*「マッサージのような施術」=読売・毎日・産経
*「自らが提唱する独自の施術」=朝日
*「『身体機能を回復する』とうたった乳幼児向けマッサージ」=日経
と分かれていました。
一般的には「肩などをもんだりする行為」を「マッサージ」と言いますが、それは、
「広義のマッサージ」
で、「狭義」では、
「『あん摩マッサージ指圧師法』で定められた『免許を持つプロの人』が営業行為として(お金を取って)行う行為のみ」
を、「マッサージ」と呼べると思います。
「厚生労働省のホームページ」には、こんな記述がありました。少し長いが引用します。
『*無資格者によるあん摩マッサージ指圧業等の防止について」
医師以外の方が、あん摩マッサージ指圧、はり、きゅう及び柔道整復の施術所等において、あん摩、マッサージ若しくは指圧、はり又はきゅう及び柔道整復を業として行おうとする場合には、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(昭和22年法律第217号)において、それぞれ『あん摩マッサージ指圧師免許』『はり師免許又はきゅう師免許』を、柔道整復師法(昭和45年法律第19号)においては『柔道整復師免許』を受けなければならないと規定されており、無免許でこれらの行為を業として行ったものは、同法により処罰の対象になります。 厚生労働省としましても、都道府県等関係機関と連携して、無資格者によるあん摩マッサージ指圧業等の防止に努めているところであります。
あん摩マッサージ指圧及び柔道整復等の施術を受けようとする皆様におかれましては、こうした制度の内容を御理解いただき、有資格者による施術を受けていただきますよう、お願いいたします。 』
姫川容疑者は、免許を持っているわけではないのに、「お金を取って」こういった行為を行っていた訳ですから、これを「マッサージ」と呼ぶと、
「免許を持ってちゃんとしたマッサージを行っているプロの人たちに迷惑がかかる」
と思います。そこで、各新聞は、
「マッサージのような施術」「自らが提唱する独自の施術」
「『身体機能を回復する』とうたった乳幼児向けマッサージ」
という表現にして「マッサージ」というダイレクトな言葉を避けていると思われます。
ただ、日経新聞の見出しは、
「マッサージ後に乳幼児死亡」
と「マッサージ」を使っていましたし、3月5日の朝刊では、特に説明もなく、
「マッサージ」
を本文の中でも使っていました。読売・毎日・産経は3月5日朝刊も、
「マッサージのような施術」
で、朝日新聞には、この記事は載っていませんでした。
なお読売テレビ報道局では、日本テレビからの指摘を受けたこともあり内部で検討した結果、
「マッサージのようなもの」「独自のマッサージ法」
などという表現にすることになりました。
ちなみに、「関西テレビ」では、
「ズンズン運動と名付けた独自の整体」
「朝日放送」では、
「『ズンズン運動』と称する独自のマッサージ」
「毎日放送」は、やはり「マッサージ」は使えないと意識して、
「首や肩、腹をもむなどして」
「胸や腹を繰り返し押さえつけるなどして」
というように、「揉む」「押さえ(つけ)る」という表現を使っているのだそうです。