新・読書日記
2015_031
『きのうの神様』(西川美和、ポプラ文庫:2012、8、5)
"西川美和"と言えば『ゆれる』『ディア・ドクター』などの作品で知られる映画監督・脚本家。その短編作品集。興味を持って読んだ。と言っても、本自体は、もう3年も前に出ていたものだけど。いわゆる「積ん読(どく)」になっていた一冊。3月中旬に行ったスペイン旅行のお供に持って行った9冊(読んだのは6冊)の内の一冊。帰りの飛行機の中で読んだ。「1983年のほたる」「ありの行列」「ノミの愛情」「ディア・ドクター」「満月の代弁者」の5編。
映画もそうだが、西川美和が描くテーマは、「村=過疎」における人間の生きざま、生と死、それを取り持つ仕事=医者といったものが多いなと感じた(これまで私が触れた作品の中では)。人がたくさん集まって作りだす「都市」ではなく、「村」の方が、「個人=人間」徒言うものが、よく見えて来るのかもしれない。
(2015、3、20読了)
(☆3つ半)
star5
2015年3月26日 10:04
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新・読書日記
2015_028
『大津波を生きる~巨大防潮堤と田老百年のいとなみ』(髙山文彦、新潮社:2012、11、30)
本が出てすぐに購入して「積んどく」になっていたもの。ノンフィクションライターとして高名な著者が、津波と闘い続けて来た岩手県宮古市の田老(たろう)地区を取材した。
「田老地区」と言えば、明治三陸大津波、昭和三陸大地津波で、二度とも町が消滅の危機にさらされ、「万里の長城」にも例えられる全長2,5kmもの「防潮堤」が築かれていたのだが、今回の大津波は、それさえも越えて来た。実は、津波が来た場合、三方は防潮堤なのだが、1か所だけ"波を逃がすため"に、わざと開けていた土地があった。しかし、昭和の大津波以降津波がなかったことからその記憶が薄れ、その「津波を逃がす土地」にまで家が建ってしまったため、今回、被害が広がったという。
先月(2月)中旬、その「田老地区」に行って来た。盛岡からバスで2時間かけて宮古、さらに三陸鉄道・北リアス線で17分、田老駅に降り立った。無人駅。海が、防潮堤が見える。その手前には家はない。更地。そしてその手前の道路は、土をいっぱい積んだ10トントラックが、ひっきりなしに走っている。ここもまた、「かさ上げ」が行われていた。「防潮堤」が、完璧に津波を防げるわけではないのだ。自然と人間の闘いの記録として(ちょうど現地にも行ったので)立体的に読むことが出来た。
(☆4つ)
star4
(2015、2、22読了)
2015年3月11日 21:18
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新・読書日記
2015_027
『南三陸から2011.3.11~2011.9.11』(佐藤信一、日本文芸社:2011、9、30第1刷・2013、12、1第9刷)
東日本大震災で津波に襲われ、町民1万7000人のうち、800人がのみ込まれて死亡・不明となった宮城県南三陸町。その写真館のご主人が撮り続ける町の姿をまとめた写真集。先月(2月)中旬、現地・宮城県南三陸町のホテルの売店で購入した。
南三陸町というと、最後まで津波からの避難を呼びかけていて亡くなった女性職員・遠藤未希さんがいた「防災対策庁舎」が、赤い鉄骨だけになって立っている。
ホテルの従業員の方も被災者で、現在も仮設住宅で暮らしてらっしゃるそうだが、その従業員の方が「語り部」として被災地の現状を案内してくれるバスツアー(1時間)に参加した。更地となった現地は今、津波被害を受けないように、10メートルもの土のかさ上げが行われている。「ふるさと」に住むことの困難さ、それでも「ふるさと」で住みたいという思い。安全を確保しつつ住むことのむずかしさ。それによって得ること、失うこと。その原点の「被災から半年の様子」が、この一冊には、しっかりと残されている。
star5
(2015、2、18読了)
2015年3月11日 19:15
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新・読書日記
2015_026
『むずかしいことをやさしく やさしいことを深く 深いことをわかりやすく』(永六輔、毎日新聞社:2014、1、20)
この長いタイトルは、故・井上ひさしが、よく口にしていた言葉だという。それを永さんも信条として生きて来たという。
パーキンソン病になってから、ラジオの番組も降りたり、でもその病気の中でも活動される様子がテレビで紹介されたりしている永さん。
自分に合う薬が見つかって、最近はパーキンソン病の進行が抑えられて、症状が小康状態だという。それをラジオで言ったり、エッセイに書いたりすると「どこの病院のどんな薬ですか!?」と、同じ病気で苦しむ人たちから問い合わせが殺到すると言うが、こればかりは「万能薬」ではなく、ひとりひとりの症状によって、合うか合わないかは違うので、名前は言えないと。未だに物凄い影響力を持つ人なのだなと改めて思った。
star4
(2015、2、10読了)
2015年3月10日 18:17
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新・読書日記
2015_025
『戦場でメシを食う』(佐藤和孝、新潮新書:2006、10、20)
もう9年も前に、出てすぐ買ったのに「積んどく」になっていた本。ちょっとタイトルがノンビリした感じだったので、「グルメ本かな?」と少し思ったりして・・・(んなアホな)。でも「メシを食う」はまさに、
「戦場で生活する人たちと一緒に暮らす」
ということ。同じ目線で考え行動し取材する。その自分を客観的に記録する。そして、
「その戦場の仕事で生きていく(いる)」
ということも示しているタイトルだったのだ!それに気付いたら、俄然、読む気持ちが前向きになった。
もちろんこの本を読むきっかけは、イスラム過激派組織"イスラム国"による日本人ジャーナリストらの殺害事件である。
著者はフリージャーナリスト・戦場ジャーナリスト。3年前(2012年8月20日)にシリアで取材中に亡くなった、あの山本美香さんのパートナーだった。
『なぜ、戦場を取材するのか?』
その問いに答えてくれる一冊だと思う。
star4
(2015、2、9読了)
2015年3月10日 15:29
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新・読書日記
2015_024
『聞き出す力』(吉田豪、日本文芸社:2014、12、31第1刷・2015、1、11第2刷)
タイトルは、阿川佐和子さんのベストセラー『聞く力』のパクリであることは、吉田豪氏本人も言ってるから、いいでしょう。ま、「パクリ」と言うよりは「パロディー」ですけどね、「タイトル」は。内容はというと、
「プロ・インタビュアー」
という、聞き慣れない職業の第一人者である著者・吉田豪にかかると、
「インタビューされた本人でさえ知らない魅力を引き出されてしまう」
ともっぱらの評判。インタビューされる相手に、
「豪さん、僕も知らないような話を引き出してくれるんですよね!」
と"先制パンチ"を浴びながら、本当にそんな内容を引き出してしまう吉田豪さんの「聞き出す力」とは、一体!それは、本書を読んでください。
とりあえず、「徹底的に調べる」。インタビューする相手の書いた本やら資料を読み込む、というのが「大前提」としてありますね。当たり前の事だけどスゴイ!なかなか、そこまでできる人がいないからこそ、吉田さんのすごさが際立つのですね。
「当たり前の事を極める(徹底的に行う)」
のは、なかなか出来ないのですよね!!
star4
(2015、2、9読了)
2015年3月10日 10:27
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新・読書日記
2015_023
『ドラマと方言の新しい関係』(金水敏・田中ゆかり・岡室美奈子、笠間書院:2014、8、20)
NHKのドラマを例に取り、その中で使われた「方言のあり方」を、実際にそのドラマを作ったプロデューサーや、方言指導の人に話を聞くという、ある意味、画期的なイベントの文字起こしをした一冊。対象となったのは『八重の桜』『あまちゃん』『カーネーション』の3作品。その中で私が少し見たのは『あまちゃん』ぐらいだが、それでも、大体イメージはつかめた。
最初に「役割語」という概念を提唱した大阪大学教授の金水敏先生が「フィクションの言語と方言」と題して講演。続いて「方言コスプレ」という概念を提唱した日本大学教授の田中ゆかり先生が「『あまちゃん』が開いた新しい扉」と題して、それまでのドラマで使われた「方言」の位置づけとは違う使い方を『あまちゃん』では行ったと。どう違ったのか?を説明。また「ドラマ批評」の立場から、岡室美恵子さんが「方言とアイデンティティー」についてのお話。どれも興味深い。
その後、プロデューサーたちを交えて具体的な話に入って行くというこのイベントは、去年(2014年)の3月22日に行われたもの。聞きに行きたかったなあ!でも、この一冊でそのエキスは味わえるから、まあいいか!
star4
(2015、1、29読了)
2015年3月 9日 20:26
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