新・ことば事情
5654「来駅」
JR鶴橋駅の改札の手前に「スタンプ」が置いてありました。子どもの頃は、このスタンプを押すのが楽しみだったなあ。大人になると、なぜか興味が失せたけど。そのスタンプを押すための「用紙」も一緒に置いてありました。そこに、こう書かれているのが目に留まりました。
「来駅記念」
この「来駅」という言葉は、意味はすぐにわかりますが、あまり目にしたことがありません。「来」のあとに「社」「校」「場」「園」「館」等を付けた、
「来社」「来校」「来場」「来園」「来館」
などは、普通の言葉として目にしますし、地名を付けて、
「来阪」(「大阪」に来る)
「来熊」(「熊本」に来る。「らいゆう」)
「来青」(「青森」に来る)
「来神」(「神戸」に来る)
「来道」(「北海道」に来る)
なども見たことがあります。「平成ことば事情1625訪日と来日」に、その辺りの話も書きました。2004年の3月、もう11年前ですが。
元NHK放送文化研究所の柴田実さんによると、
「来佐(らいさ:佐賀)」「来宮(らいぐう?らいきゅう?:宮崎)」
「来鹿(らいか?らいろく?:鹿児島)
なども、それぞれの地元紙で使われることがあるそうです。あ、もちろん、「国」=「日本」の名前の一文字を付ける、
「来日」
も一般的です。これに対して、
「来駅」
は、辞書には載っているのでしょうか?
『精選版日本国語大辞典』『デジタル大辞泉』『広辞苑』『明鏡国語辞典』『新明解国語辞典』『三省堂国語辞典』『岩浪国語辞典』『新潮現代国語辞典』
には、載っていませんでした。
「来駅」をグーグル検索してみると、
「市来(いちき)駅」=鹿児島県いちき串木野市
というのが出てきてしまうので、
「来駅記念」
で検索したら、
「3760件」
出て来ましたが、当然のことながら、大体が「鉄道関係者」の記述でした。「鉄道関連用語」と言えるでしょう。
「来駅記念入場券」
に関するものが多かったですね。
「駅」も「建物・人が集まるスペース」ですから、「来園」「来場」「来館」「来社」「来校」などと同じように使われても不思議ではありませんが、「園」「場」「館」「社」「校」が全て、
「音読み」
であるのに対して「駅」には「音読み」がなく、たぶんこれは、
「『らいえき』と『訓読み』をせざるを得ない」
ところに、違和感が生まれるのではないか?と思います。「重箱読み」になりますしね。
(追記)
読者の方から
「『駅』には『音読み』がなく・・・とあるのですが、『音読み』が『エキ』なのではないでしょうか?」
という問い合わせがありました。
あっ、そうだった!ご指摘の通りです。ありがとうございます。思い込みでした、すみません。
「エキ」=「音読み」
です。「音読み」がそのまま取り入れられて、
「事実上の訓読み」
になっているケースです。いわゆる「訓読み」は「ない」のですが、「意味の読み」では、
「えき」「うまや」
があり、「えき」が「事実上の訓読み」となっていると。同じような漢字には、
「肉」「菊」
があります。「にく」「きく」は「音読み」なんですね。
(2015、1、27)