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『道浦TIME』

新・読書日記 2015_004

『沈みゆく大国アメリカ』(堤未果、集英社新書:2014、11、19)

 

タイトルはあまりにも扇情的。内容から考えると、本書のタイトルは、

『知られざるオバマケアの実態』

とすべきところだろう。アメリカは日本のような「健康保険」がない国で、医療費がものすごく高いというのは、何となく聞いたことがある人が多いだろう。しかし、それではいけない!と、民主党のオバマ大統領は、「国民皆保険」を目指して制度を取り入れた!エライ!と思っていた私なんぞは、相当おめでたい人らしい。

実はそれまでも、少しは低所得者などへ対応した医療体制はあったのだが、オバマ大統領の肝いりで始めた「アメリカ国民全員が入らなくてはいけない保険制度」は、企業にも大きな負担をかけたために、「企業が負担しなくてもよい雇用体系」が選択されるようになった。つまり、「正社員を派遣社員にする」というようなことである。福祉・医療保障に関しては、明らかに「格下げ」である。私などは、「正社員」(私たちの時代では「当たり前」だった)が毎月給料から「天引き」される「健康保険料」などは、実は「同じ額を会社が払ってくれている」ということに気づくのに10年かかりましたね。やはり「正社員」の福祉はかなり恵まれていると言えるのではないでしょうか。若い正社員は、気付いていないかもしれませんが。

話しがそれましたが、つまりオバマ大統領の言う「国民皆保険=オバマケア」には、「例外の穴」がたくさん開いていたということだ。よく映画の広告で、

「史上最高の興行収入」

とか宣伝文句に書いてあって、よく見ると小さな字で、

「公開2日で。土・日公開の映画は除く」

とかなんとか、

「いろいろな『制限』『限定条件』を加えた上での『1位』」

だったりすることがあるが、どうもあれに似たような状況であるようなのだ。

そして、そのようなものを取り入れて「得」をするのは誰か?というと・・・。

非常に詳しく取材して、細かい数字がたくさん出て来て、ちょっと読みにくい部分もある。まるで論文のようだが、それに慣れて読み飛ばして重要な所だけ読むようにすると、「オバマケア」の背後に潜む陰の存在が見えてくるような気がする。本野帯には、

「1%の超・富裕層(スーパー・リッチ)が仕掛けた"オバマケア"で、アメリカ医療は完全崩壊!」

とあり、さらに大きな文字で、

「次なるターゲットは、日本だ!」

とある・・・そうか、「TPP」!そういう分野も含まれているのか?

いろいろなことを、よく考えないといけないなと思わせる一冊である。


star4

(2015、1、6読了)

2015年1月21日 18:44 | コメント (0)