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『道浦TIME』

新・ことば事情

5632「局部・性器・下腹部などの表現」

 

2015年1月13日の「ミヤネ屋」で、ASKA元被告の愛人で、覚せい剤取締法違反容疑で裁判を受けている栩内(とちない)香澄美被告への判決が出ました。「懲役2年・執行猶予3年」というものでした。この裁判を取り上げた際に、栩内被告側の主張として、

「ASKA元被告によって、覚醒剤を『性器』から摂取させられた」

というものがありました。この、

「性器」

というのが、あまりにもダイレクトで「下品」に感じられて(まあ、この裁判の内容自体、決して「上品」ではないのですが)、何か「言い換え」は出来ないものか?と思い、先輩等にも相談したところ、

「局部」

という表現にすることになりました。

実はこういった表現に関して、以前、新聞用語懇談会放送分科会で話し合ったことがあるような気がして過去の記録を調べてみたところ、似たような事例がいくつか出て来ました。

 

<2004年4月>

【ytv】大阪府和泉市で生後4か月の息子の「こう丸」を切除した母親の事件で、「乳児の被害部位」の表現が新聞は、ほぼすべて「下腹部」だった。読売テレビは「生殖器の一部」「こう丸」を、ABCは「こう丸」を使った。他社は?

→(KTV)=長崎の事件を参考にして、「下腹部」という表現を使った。今回、逮捕された母親の映像(名前)を出したのはKTVとABC、出さなかったのはytvとMBS。映像を出すことと、乳児の被害部位の名称を婉曲表現することはリンクして考えられたのではないか。

(ytv)=性的虐待とつながるのでは、ということで「こう丸」という表現を出した。ただし母親の顔出し(名前も)はない。

(NHK)=被害者(乳児)の人権を考えたことと、加害者(母親)の精神状態が正常かどうかについて、事件当時、疑問符がついたこともあって表現をボカしたのではないかと思う。

 

<2006年6月>

【共同通信】「下半身露出の巡査部長を逮捕・警視庁が公然わいせつ容疑で」

 というニュースの見出しがあったが、 露骨な感じがする。何か他にいい表現方法はないのか、ご検討を。

→「下半身露出」と漢字ばかりで熟語っぽくしないようにするために「下半身を露出した」と、話し言葉ふうにするか「下半身にも何も付けない」のような表現になるだろう。ただ「見出し」的に「下半身露出男」というような使い方をしてしまう時があり、それをそのまま読んでしまうことはある。気をつけたい。

 

<2011年2月>

【ytv】押尾学の裁判で、検察の文章の中に「セックス」という言葉が頻発したが、それをそのまま放送するのはいかがなものか?いわゆる「発表もの」であるが、視聴者のことを考えて「性行為」「性交渉」のように言い換えるべきか?

→(TBS)「セックス」については、視聴者モニターから「『セックス』という言葉が多すぎる」という指摘があった。これに関しては「放送が夜の時間帯だったので、そのまま放送した。夕方のニュースで出た方が問題であった」と。

(ABC)「セックス」という言葉については「時間帯を考えて・・・」「あえて出した」などいろいろ意見はあるようだが・・・。

(日本テレビ)視聴者から「子供も見るのでこういう言葉ははずしてほしい」と。かといってこの言葉を出さないわけにもいかないので、できるだけ出す回数を少なくした。

(フジテレビ)社会部に聞くと「セックス」は使わなかった(この言葉を含む部分を使わなかった)。

(テレビ朝日)お昼のニュースの中継で女性記者が「セックス」という言葉を連発したのでさすがに局内でも問題になり、その後「性交渉」と言い換えることに。

 

<2013年2月>

【共同通信】「レディー・ガガを撮影した写真家逮捕」のニュースで、 新聞各紙には、

「男性器が写った写真集を展示会で販売」

などと書かれていますが、この「男性器」という文言をどのように伝えたのでしょうか。教えてください。

→ほとんどの社は「男性器」または「局部」を使用。NHKは「男性の性器」「男性の裸」。テレビ朝日と朝日放送は「男性の局部」。フジテレビは、逮捕時は「局部」、その後「男性器」。

 

というようなことでした。

この<2013年2月>の例が、今回は参考になりますかね。

(2015、1、13)

2015年1月14日 23:57 | コメント (0)