新・ことば事情
5631「次男か二男か2」
「平成ことば事情864 次男か二男か」で書いた続報です。これを書いたのは、
「2002年10月」
でしたが、その後の動きです。
「2008年9月」
に開かれた「新聞用語懇談会放送分科会」で、私のほうから、こんな質問を出しました。
『「次男」か「二男」か?』
というのは、それまでマスコミでは
「二男」
という表記が多かったのですが、その頃から
「次男」
という表記が増えて来ているように感じたからです。前年に発行された『新聞用語集2007年版』でも、
「次男」
という表記が採用されていました。そこで、
『『新聞用語集』では「次男」だが、テレビ朝日は「二男」。従来「二男」表記だった媒体で「次男」表記に変更された理由の決め手は? (新聞用語ルールでは一般用語が次男、戸籍などは二男としている) 』
と質問したのです。これに対して、日本新聞協会の金武伸弥氏(当時)は、
『「二」に「ジ」という読み方が「常用漢字表」にないので、「次男」と変更した。』
と答え、また、放送各社は、
(NHK)NHKはずっと前から「次男」。
(日本テレビ)戸籍にあわせて「二男」。
(TBS)「二男」。先日、明治の戸籍を見る機会があったが「弐男」だった。
(共同通信)「二男」やってきたが、2008年2月に「次男」「次女」に変更した。『新聞用語集2007年版』の影響で、新聞各社も「次男」「次女」になった。
(フジテレビ)2008年7月からFNNは「二男」→「次男」に変更した。
(MBS)「次男」に「差別的意味合いだ(「次の男」という意味で)」という議論はあったのか?
(NHK)その議論を受け入れると「長男」→「一男」にしなくてはならないので。「次男」に苦情はない。
(新聞協会・金武氏)そういった話が「新聞用語集」改訂の際に、ちょっと出た。
(NHK)「続柄(つづきがら)」に関しては「けしからん!」という声はある。
というような議論がされました。この時点で「二男」を使っていたのは、
「日本テレビ・TBS」
のようでしたが、それからさらに5年が経過した、
「2013年9月」
の放送分科会で、また私から次のように質問しました。というのは、この時点ではすでに「日本テレビ系列」を除くと「二男」表記を余り見かけなくなっていたからです。他社はどのようにしているのかを、確認したかったのです
『「じなん」の表記は「次男」でしょうか?それとも「二男」でしょうか?新聞社は、現在「読売・朝日・毎日・産経・日経」とも「次男」のようです。』
これに対して、読売新聞の用語幹事・関根氏は、
『新聞は1996年版の『新聞用語集』では「二男」が多く「次男」は少なかったが、『2007年版』で「次男」に統一した。読売が最後まで「二男」だった。その中で例外は「次男坊」だけ。なぜ「二男」かと言うと「戸籍法」がそうだったからと言われていたが、調べてみると「戸籍法」に「二男」の表記はなく、「戸籍法の施行規則」の中の「続柄」に「二男」があるのみだった。常用漢字の読みでは「二男」を「じなん」とは読めない。』
という答えを下さいました。放送各社は、
(TBS)2012年10月から「二男」をやめて「次男」の表記に変更した。
(NHK)昔から「次男」表記。
(テレビ朝日・フジテレビ・テレビ東京ほか各社)「次男」
ということで、この時点で「二男」を使っているのは
「日本テレビ(系列)のみ」
ということになって、現在に至る、という状況です。
この話を、同じく用語委員のHアナウンサーにしたところ、
「ふーむ、それは『三男』『四男』がほとんど見られなくなったことと、『次男』という名前の人が減ったから、続柄の『次男』にも抵抗がなくなったんじゃないですかね?」
という意見をくれました。
「2015年1月現在」、日本テレビ系列は、まだ「二男」表記です。いつまで「二男」を使うのかなあ。