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『道浦TIME』

新・読書日記 2014_183

『努力する人間になってはいけない~学校と仕事とシャカイの新人論』(芦田宏直、ロゼッタストーン:2013、9、2第1刷・2014、4、25第5刷)

 

学生や新入社員など、若者を相手に行った講演の内容などを集めたもの。読みやすいが、物凄く分厚いのですよ。持ち運んで電車の中で読むのは、ためらわれるぐらい。500ページ以上あると思う。実際、電車の中で読んだら、腕がだるくなった。

標題のコピーは「え?なんで?努力する人間にならなきゃだめでしょ?」と思わせる。もうそこで、向こうの「勝ち」ですね。うまいタイトルだと思います。

要は、人間を、仕事上で「努力する・しない」「仕事ができる・できない」という2つの座標軸を基に「4つのパターン」に分類する(よくある話ですが)。

(1)努力しないが、仕事ができる。

(2)努力して、仕事ができる。

(3)努力するが、仕事ができない。

(4)努力しないで、仕事ができない。

そうすると、一番問題なのは(3)の努力するが仕事ができない、という人だと。(4)の人はほおっておいてもドロップアウトするから無視する。努力の有無にかかわらず仕事ができれば、それでよし。問題は努力してもダメな人。それが、組織としては一番問題だから、そういう人になってはいけないと。それはそうだけど・・・・そんなこと言ったら「会社」とか「社会」とか「組織」なんて成り立たないじゃない!!「なかなかできない人」を、どうやってできるようにして、うまく使うか?というのが、組織に求められることじゃないのか!?単に「勝ち組・負け組」に分けて「『負け組』になるな」というだけで「教育」と言えるのか?と、ものすごく疑問が残った、冒頭の講演内容でした。

しかし、それ以降のところでは、含蓄に富む、考えさせられる話もたくさん出て来たので、まあ、ざっと読んでみたらどうかなと思ったのでした。

 

特に面白かったのは、第9章の「ツイッター微分論」。「現在の微分は、身体と死の微分」「エクリチュール(書き言葉)は限りなくパロール(話し言葉)に近づく」のほか、「ツイッターの五つの特徴」として、

(1) ツイッターはデータベース=ストック情報ではない

(2) 単にフローではなく、<現在>を共有している

(3) 現在の共有=インプットとアウトプットとが同時に存在する

(4) 情報の受発信の先に、書き手と読者とがいつも同時に存在している

(5) この書き手とは、いつも断片化し、ストック化に抗う

とあって、なるほどと思いました。ツイッターのつぶやきは現在の共有。時間自体が意味だと。<いま>を伝えるからこそ、ツイッターは短文でならなければならないと。ツイッターは、間断なく<現在>を微分しながら、退屈と大事件とを同時に微分しながら継続している。この継続性は単調そのものだ。しかしそれが退屈に見えないのは、小さな終わりを刻み続けているから。小さな終わりであるにも関わらず、それが終わりの単調性を免れているのは、それが<現在>という時間を微分しているからであると。

うーん、難しいけど、脳みその運動にはいい本だと思いました!

 

 

 


star4

(2014、12、12読了)

2015年1月 8日 10:14 | コメント (0)