新・ことば事情
5624「今年度と本年度」
『関西情報ネットten.』のSチーフプロデューサーから質問を受けました。
「道浦さん、『今年度』って言葉、使っちゃいけないんですか?テロップの発注をしたら自動的に『本年度』に変わっていたんですが・・・。」
「そんなことないと思うよ。『今年度』の方が普通でしょ。それに『本年度』というのは"当事者側"からの言葉で"主観的"、『今年度』のほうが"客観的"な感じがするね。」
と、ここまで答えて「待てよ」と。たしか、これと同じ会話を以前したことがあるような気が・・・・。検索してみると、やはり出て来ました!同じ質問を誰かから受けて、共同通信の知り合いにメールで質問をしたものが残っていました。2年9か月前の話でした。
【2012年3月23日】
『 読売テレビの道浦です。さて今回は、ひとつ質問があってメールいたしました。 きょうのお昼のニュースで、
「今年度」
というスーパーを発注したところ、自動的に、
「本年度」
と直されました。修正を願い出たところオペレーターから、
「『今年度』と打つと、『本年度』に直すように...との表記が出てくる」
との説明でした。
確認すると、電子テロップシステムには、共同通信の『記者ハンドブック用字用語集』がインスールされていて、当該の用字用語集には「日時の書き方」という項目の中に、
「今年度、明年度は使わず、本年度、来年度を使う」
と書かれていました。ちなみに『読売スタイルブック』には、「今年度」の表記を排除する記述はありません。使い方として間違っているわけでもなく、日常会話として普通に使っている言葉なのに、なぜ「今年度」は使わないのでしょうか? これは「新聞向け」も「放送向け」も同じでしょうか?そのあたりの事情を、差支えがなければご教示ください。宜しくお願いいたします。』
これに対して、すぐにお返事をいただいていました。
『共同の『記者ハンドブック新聞用字用語集』ではご指摘の通りになっていますね。なお、放送向けは"反対"で、「放送ニュースの手引」で
「『本年度』『明年度』は使わない」
と規定し、放送用記事では「今年度」「来年度」を使用しています。これは"聞き取りやすさ"や、道浦さんの指摘にあるように「今年度」の方が日常的に使う言葉だからだと思います。調べるのに少し時間をください。また連絡します。よろしくお願いします。』
そして、さらに4日後のメールには、
『「本年度」と「今年度」の件ですが、共同通信ではかなり以前から「本年度」を使用しています。しかし統一した当時、どうしてそうしたかについては、はっきりした根拠が分かりませんでした。申し訳ありません。なお『放送ニュース』については、前のメールでお知らせしたように「本年度」ではなく「今年度」を使用しています。』
とのことでしたので、これは、
「今年度」
を使うということで、いいでしょう。少なくとも、「今年度」と「来年度」は。