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『道浦TIME』

新・読書日記 2014_177

『暴力的風景論』(武田徹、新潮新書:2014、5、25)

 

タイトルから、「風景」に関する環境論的な本かなと思ったのだが、よく考えたら武田徹さんが、そんな本は書かないわな。ということで、この本では、

「『風景』とは、人間が『暴力的に』造り上げたものである」

という視点で、その「風景」が如何にして造り上げられたのか、なぜそういう風景になったのか?という「人間の行為の歴史」について記されたものである。

「見る人の気分や世界観によって映り方が変わる風景は"虚構"を生み、やがて"暴力"の源泉となって現実に襲い掛かる」

「<風景>は、かくも危険なものである。」

ここで出て来る「暴力」は、以前、民主党の政治家が「自衛隊」を「暴力装置」と呼んで問題になったことを想起させるが、そもそも社会学・政治学において「国家」とは、

「合法的に暴力を行使できる権利と手段」

を備えているものであるから、「風景」に対して「暴力」を使える存在な訳だ。ほれ、「日本列島改造論」とかさ。各地の「ダム」も、見方によっては「暴力」だよなあ。

本書で、例として語られる「風景」は、

「沖縄の米軍基地、連合赤軍と軽井沢、村上春樹の物語、オウムと富士山、酒鬼薔薇とニュータウンというように、戦後日本を震撼させた事件の現場を訪ね、その風景に隠された凶悪な"力"の正体に迫る(裏表紙より)」

というものだ。それぞれ、時代も古いものから新しいものへ。「歴史」が紡がれる様子も察せられ、とても興味深い一冊。


star4

(2014、12、3読了)

2014年12月22日 20:37 | コメント (0)