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『道浦TIME』

新・ことば事情

5620「後ろ倒し2」

 

平成ことば事情5075「後ろ倒し」の続報です。

今月(2014年12月)開かれた「新聞用語懇談会 放送分科会」で、毎日放送の委員から出た質問です。

『大学生の就職活動開始時期を3年生の12月から4年生の4月に"後ろ倒し"にするというニュースがありましたが、当該用語を使っていますか?また、社内で議論等はありましたか?』

これに対する各社の回答は、

→(ytv)去年4月の放送分科会で討議しました。

(NHK)政治家の談話などで出て来る。現場で特に議論したことはないが「いわゆる"後ろ倒し"」のような使い方をする。単独では使わない。最近の言葉のように思われるが、過去データを調べたら30件ほど出て来て、古い物は1987年の原稿で見つかった。

(日本テレビ)「引用以外では使用しない」としたが、「every.」で" "付きの"後ろ倒し"というスーパーが出て来た。

(フジテレビ)数は多くないが出て来る。経済部出稿の原稿で、就活・TPP関連など。役所が使う。「使うのはやめよう」という話は、無い。

(テレビ朝日)報道デスクに話を聞いたところ、「気持ちのいい言葉ではないので、できたら言い換えたい。引用は仕方がない。しかし100%のチェックは、できていない」とのこと。

(テレビ東京)「開始時期をずらす」「先送り」などとする。過去データを検索したら2件だけ出て来た。「東証取引時刻の後ろ倒し」「オバマケア登録の後ろ倒し」。

(WOWOW)使わない。

(共同通信)読者から苦情が来たので、「使わないように」と去年4月、社内通達を出した。「繰り下げる」「時期を遅らせる」などに置き換える。去年4月以降は「後ろ倒し」は出ていない。なお、「前倒し」も『岩波国語辞典』によると、「『繰り上げ』でも済むのに、1973年ごろに官庁俗語として現れたのが、広まった語」と載っている。朝日新聞は、見出しに何回か使っていた。

(ABC)特に規定なし。ラジオニュースでは事例なし。わかりにくいので、使わないようにしている。

(KTV)発言引用は仕方がないが、「遅らせる」に言い換えるようにしている。

(ytv)就活のリポートの記者の顔出しで出てきたことはある。特に問題にはならなかったが、できるだけ使いたくない。

(TVO)就活の場合、「いつ」を基準にして「後ろ倒し」なのかが分かりにくい。

(TBS)「後ろ倒し」は、見出しでは使いやすいので出て来たが、「引用」以外には使わないほうが良い。「前倒し」があるので、その「対語」として出て来たのでは?「死にざま」の「対語」として「生きざま」が出て来たように。

(新聞協会・伊東用語幹事)朝日新聞が「わかりやすい」という理由で「後ろ倒し」をよく使っているが、新聞他社は使っていない。「繰り下げ」だと順番も下げるので、それは違うという声も。読売新聞では「役人と経団連が作った、品のない言葉だから使うな」とお達しがあったそう。期間をずらすだけなので、「倒し」ではない。

 

というものでした。

この中で、NHKさんのデータでは、

「古い物は『1987年』の原稿で見つかった。」

というのは驚きですね!「昭和」ですやん!そんな昔から「後ろ倒し」は、あったのか!

それと、テレビ朝日さんのご指摘、

『「前倒し」も『岩波国語辞典』によると、「『繰り上げ』でも済むのに、1973年ごろに官庁俗語として現れたのが、広まった語」と載っている。』

これも『岩波国語辞典』を引いてみたら確かに載っていました。『岩波』は「1973年ごろから」とか「具体的な年代が書いてあるのが特徴」ですね。たとえば、

「十手」

は、「じって」と読むのが正しいのに、本来の読み方ではない「じゅって」という言い方が出て来たのは、

「1955年ごろから」

と書いてあります。このあたり、特徴的です。

話がそれましたが、「前倒し」も「1973年ごろから出て来た官庁俗語」とのことで、

「1973年」は、誰が「総理大臣」かな?と思ったら、

「田中角栄」

でした。いろいろと「前倒し」させたのでしょうかね?

(2014、12、17)

2014年12月18日 17:39 | コメント (0)