Top

『道浦TIME』

新・ことば事情

5625「クリスマスイブ」

 

12月24日。きょうは「クリスマスイブ」です。

 

というこの文章は正しいでしょうか?と、スタッフから質問を受けました。

「え?合ってるんじゃないの?」

と思われた方。実は、厳密に言うと「間違い」なんですね。

よく見てください、「クリスマスイブ」

「イブ」

というのは、

「前夜」

という意味でしょ、つまり「前日」ではなく「前夜」なんです。「クリスマスイブ」は、

「クリスマスの前夜」

が、正しいわけです。もしくは、

「聖夜」

とも言いますね。「聖日」ではありませんね。

しかし、今や、

「12月24日=クリスマスイブ」

とほとんどの人が認識しているし、これに文句を言う人もほとんどいない。もし、クレームを付けたら、

「相当"堅物"の、融通の利かない人」

と思われてしまうので、

「ま、『きょうは、クリスマスイブ』で、いいんじゃないの」

と答えておきました。「きょうの夜は」の「の夜」を省略した形であると考えれば。

でも、

「『元旦』は『元日の朝』のことだから、『元旦の朝』というのは"重複表現"だからダメだけどね。『旦』は、『日』が地平線から上って来る"象形文字"だからね。」

というのは付け加えておきました。

メリークリスマス!

(最近は、これもダメ、『シーズンズ・グリーティング』と言う国もあるようですが、日本ではまだ大丈夫でしょう。)

(2014、12、24)

2014年12月24日 19:11 | コメント (0)

新・ことば事情

5624「今年度と本年度」

 

『関西情報ネットten.』のSチーフプロデューサーから質問を受けました。

「道浦さん、『今年度』って言葉、使っちゃいけないんですか?テロップの発注をしたら自動的に『本年度』に変わっていたんですが・・・。」

「そんなことないと思うよ。『今年度』の方が普通でしょ。それに『本年度』というのは"当事者側"からの言葉で"主観的"、『今年度』のほうが"客観的"な感じがするね。」

と、ここまで答えて「待てよ」と。たしか、これと同じ会話を以前したことがあるような気が・・・・。検索してみると、やはり出て来ました!同じ質問を誰かから受けて、共同通信の知り合いにメールで質問をしたものが残っていました。2年9か月前の話でした。

 

【2012年3月23日】

読売テレビの道浦です。さて今回は、ひとつ質問があってメールいたしました。 きょうのお昼のニュースで、

 「今年度」

 というスーパーを発注したところ、自動的に、

 「本年度」

 と直されました。修正を願い出たところオペレーターから、

 「『今年度』と打つと、『本年度』に直すように...との表記が出てくる」

 との説明でした。

 確認すると、電子テロップシステムには、共同通信の『記者ハンドブック用字用語集』がインスールされていて、当該の用字用語集には「日時の書き方」という項目の中に、

 「今年度、明年度は使わず、本年度、来年度を使う」

 と書かれていました。ちなみに『読売スタイルブック』には、「今年度」の表記を排除する記述はありません。使い方として間違っているわけでもなく、日常会話として普通に使っている言葉なのに、なぜ「今年度」は使わないのでしょうか? これは「新聞向け」も「放送向け」も同じでしょうか?そのあたりの事情を、差支えがなければご教示ください。宜しくお願いいたします。』

 

これに対して、すぐにお返事をいただいていました。

『共同の『記者ハンドブック新聞用字用語集』ではご指摘の通りになっていますね。なお、放送向けは"反対"で、「放送ニュースの手引」で

「『本年度』『明年度』は使わない」

と規定し、放送用記事では「今年度」「来年度」を使用しています。これは"聞き取りやすさ"や、道浦さんの指摘にあるように「今年度」の方が日常的に使う言葉だからだと思います。調べるのに少し時間をください。また連絡します。よろしくお願いします。』

 

そして、さらに4日後のメールには、

『「本年度」と「今年度」の件ですが、共同通信ではかなり以前から「本年度」を使用しています。しかし統一した当時、どうしてそうしたかについては、はっきりした根拠が分かりませんでした。申し訳ありません。なお『放送ニュース』については、前のメールでお知らせしたように「本年度」ではなく「今年度」を使用しています。』

とのことでしたので、これは、

「今年度」

を使うということで、いいでしょう。少なくとも、「今年度」と「来年度」は。

(2014、12、24)

2014年12月24日 15:49 | コメント (0)

新・読書日記 2014_180

『餃子の王将 社長射殺事件』(一橋文哉、角川書店:2014、11、28)

 

「餃子の王将」の社長が、早朝、出勤したところを射殺される事件から、12月19日でちょうど1年。その直前に出版された。1年経っても、犯人の行方は杳(よう)として知れない。著者はフリージャーナリストとして、この事件を追ってきた。そして、犯人の特定はできないものの、なぜ「餃子の王将」の創業家の直系ではない3代目の社長が狙われたのか?どういう人たちに命を狙われたのか?その背景に迫り、ぼんやりとではあるが、その結論を記した。「ぼんやりと」というのは、「あえて」はっきりと書いていないのかもしれない。それは、本当は分かっているが書くと大変な事態に・・・ということなのか?それはわからないが・・・。

暗殺の手口は「プロ」だが、使われたピストルは「25口径」という口径の小さい物で「プロらしくない」など、謎はいくつも残る。

事件から1年を前に、京都府警は、犯人が逃走に使ったとみられる盗難バイクから「硝煙反応」出たという情報を出したが、これまでに掴んでいた情報を今頃出すのは、それ以外の捜査が手詰まりであることを示すのではないだろうか。事件はこのまま「迷宮入り」してしまうのだろうか・・・・?

 


star3_half

(2014、12、15読了)

2014年12月23日 20:30 | コメント (0)

新・読書日記 2014_179

『内側から見たテレビ~やらせ・捏造・情報操作の構造』(水島宏明、朝日新書:2014、11、20)

 

著者は元札幌テレビの記者で、その後、海外の特派員を長く勤めて日本テレビに移り、テレビの最前線で取材・リポートを続けて来た。系列の先輩(4つ上)だから、もちろんお名前とお顔は存じ上げているが、お会いしたことはない。例の「住む家がないのでネットカフェで寝泊まりする若者たち」の現状をリポートした「ネットカフェ難民」の名付け親でもある。2012年からは法政大学社会学部の教授だそうだ。

そのテレビの内側を知り尽くした著者が、"テレビへの愛"をベースに持ちつつ、その病巣を描いていく一冊。

「なぜセシウムさん事件が起きたか」「根底にある視聴率第一主義」「進むNHKの民放化」等々、具体的な事例を挙げながらその背景につて述べていく。私たちテレビ局の内部にいるものとしては、全て見てきたこと、知っていることばかりであるが、改めてこうやって一冊の本としてまとめられると、その流れを整理することができる。

最終章「テレビの希望はどこにある?」では「テレビは『しょせんマスゴミ』か?」と、あえて提示している。これは「反語」だ。

そのほか、

「日々のニュースは、ますます『東京目線』になっている」

ことや、視聴者も、

「物事の背景事情を理解しようとしたり、理詰めで考えたりせず、『好き嫌い』で瞬時に判断する傾向もどんどん顕著になっている」

「(テレビ番組を)『見てない』という人たちが、テレビのっ外側では増加している。その増加ぶりはテレビで働く人たちの想像以上だ」

「想像力が乏しい、反知性的な若い世代が広がっているとつくづく思う。」

だという。これを読んでいたら、先日読んだ『なぜ世界は不幸になったのか』(適菜収)につながって来る。そこには、こう書かれていた。

「民主主義の本質は、反知性主義である」

つまり「反知性主義」とは「民主主義が進んだことを表す」ということか。

うーむ、テレビは間違いなく、「民主主義」を推進・加速させてしまったのである。


star4

(2014、11、26読了)

2014年12月23日 17:28 | コメント (0)

新・読書日記 2014_178

『創価学会と平和主義』(佐藤優、朝日新書:2014、10、30第1刷・2014、11、30第5刷)

 

ものすごく精力的に本を書き、対談を重ねる著者が、「創価学会」に斬り込んだ!

そもそも、同志社の神学部出身で宗教に造詣の深い著者である。そんじょそこらの人が、ちょこちょこっと取材して書いたような「創価学会論」でないことは想像が付く。読んでみると、「宗教」という側面から、創価学会の成り立ちを説明し、「公明党の平和主義」の根本は何であるか?ということを明らかにしたいという思いが伝わってくる。

創始者の経歴から言うと、牧口常三郎と戸田聖城は、1943年治安維持法と不敬罪容疑で検挙・投獄され、牧口は1944年に東京拘置所の病監で病死している。つまり創価学会は、「権力である国家」と闘ってきた歴史があると。その上で、「信教の自由」を「国家」から勝ち得るには、「その権力」を手中に収めることが必要だということで、「政治」に参画するようになってきたと。

そういった歴史を踏まえた上で、ことし7月の「集団的自衛権容認の閣議決定」に、与党である公明党は、どういう態度を取ったのか?一般的には「平和主義の公明党が、それを放棄した。与党の立場を失うこと惜しさに、安倍・自民党の言いなりになった」というような意見がある。たしかに、以前、「自社さ」政権から社会党が降りたのは、そういった問題が起きたときに、ついには自民党の主張に対して党内を調整できなかったことによる。それを踏まえて、「政権与党の立場を守るために日和(ひよ)った」と見られるのは、仕方がないかもしれない。

しかし、著者はこれを否定する。

実は、既に湾岸戦争の後、日本がイラク戦争・アフガニスタン戦争で「後方支援」として自衛隊を海外に派遣した行為は、海外の国から見れば、紛れもない「集団的自衛権の行使」であると。国内的には「紛争地域には行かないから、集団的自衛権の行使ではない」と「言い訳」が一応は通用しても、国際的には通用しないと。だから、今回の「集団的自衛権容認の内閣決議」を巡る問題も、「何をいまさら・・・」というふうに国際的には見られているのだという。そして、今回の閣議決定で「『集団的自衛権』を行使するケース」として挙げられているのは、全て「『個別的自衛権』で対応できることばかり」で、かえって「『集団的自衛権』を行使するには、憲法を改正するしかない」ということを際立たせてしまったという見方なのである。そういう状態にしたことを、公明党は認識しているという話なのだ。一度、じっくり読むことをお勧めする。


star3_half

(2014、12、6読了)

2014年12月23日 15:25 | コメント (0)

新・読書日記 2014_177

『暴力的風景論』(武田徹、新潮新書:2014、5、25)

 

タイトルから、「風景」に関する環境論的な本かなと思ったのだが、よく考えたら武田徹さんが、そんな本は書かないわな。ということで、この本では、

「『風景』とは、人間が『暴力的に』造り上げたものである」

という視点で、その「風景」が如何にして造り上げられたのか、なぜそういう風景になったのか?という「人間の行為の歴史」について記されたものである。

「見る人の気分や世界観によって映り方が変わる風景は"虚構"を生み、やがて"暴力"の源泉となって現実に襲い掛かる」

「<風景>は、かくも危険なものである。」

ここで出て来る「暴力」は、以前、民主党の政治家が「自衛隊」を「暴力装置」と呼んで問題になったことを想起させるが、そもそも社会学・政治学において「国家」とは、

「合法的に暴力を行使できる権利と手段」

を備えているものであるから、「風景」に対して「暴力」を使える存在な訳だ。ほれ、「日本列島改造論」とかさ。各地の「ダム」も、見方によっては「暴力」だよなあ。

本書で、例として語られる「風景」は、

「沖縄の米軍基地、連合赤軍と軽井沢、村上春樹の物語、オウムと富士山、酒鬼薔薇とニュータウンというように、戦後日本を震撼させた事件の現場を訪ね、その風景に隠された凶悪な"力"の正体に迫る(裏表紙より)」

というものだ。それぞれ、時代も古いものから新しいものへ。「歴史」が紡がれる様子も察せられ、とても興味深い一冊。


star4

(2014、12、3読了)

2014年12月22日 20:37 | コメント (0)

新・読書日記 2014_176

『なぜ世界は不幸になったのか』(適菜 収、角川春樹事務所:2014、12、8)

 

著者は、週刊誌などのコラムではかなりの毒舌・辛口だが、この本は「哲学の本」なので、比較的理知的なというか、そんなに暴言なしで読めて勉強になる。

一番気に入ったのは、第2章「『言葉」の破壊が不幸な社会を生み出した」で、「ことばの破壊が行き着く先」として「ジョージ・オーウェル」が出て来る。これは「我が意を得たり」という感じ。『一九八四年』に出て来る「ビッグブラザー」の言葉、

「戦争は平和なり」「自由は隷従なる」「無知は力なり」

は深く考えさせられる。矛盾している中に真実あると、ジワジワわかる。

また第7章「民主主義の本質は反知性主義である」もなるほどと。「『民意に従え』は政治の自殺」だという。「『民意に従う』『国民の判断を仰ぐ』ことが正しいのなら、すぐにでも議会を解体して(注:「解散」ではない)すべての案件を直接投票(民主主義決)で決めればいい」というのも納得できる。「議会制民主主義=間接民主主義」を否定しているのだが、「直接民主主義」は、昔の「ポリス」のような小さな規模の自治体ならできるが、現在の日本のこんなに大きな自治体や国では無理である。それが分からんのか!?と、うなずいてしまいました。

 


star4_half

(2014、12、2読了)

2014年12月20日 15:12 | コメント (0)

新・ことば事情

5623「トレーラーの前の部分の呼び方」

12月18日の「ミヤネ屋」で、寒波の影響で各地で事故が相次いだというニュースを伝えました。その準備をしていた時に、担当ディレクターのT君から、

「トレーラーが転落した事故で、『トレーラーの前の運転席がある所』を何と呼べばいいでしょうか?」

と質問を受けました。さあ・・・

「トレーラーの運転席部分」

でいいんじゃないの?と答えましたが、調べて見ると専門用語では、

「トレーラーヘッド」

と言うそうです。専門的には、

*「引っ張るほう=トラクター・けん引車・けん引自動車」

*「引っ張られるほう=トレーラー」

なんだそうですが、まあニュースでは、

「トレーラーの運転席部分」

でいいでしょう。それで放送しました。

 

(2014、12、18)

2014年12月19日 16:56 | コメント (0)

新・ことば事情

5622「凛と凜」

 

平成ことば事情3646「凛か?凜か?」で書きましたが、

「リンとして」

という時の「リン」は同じ漢字で字体の違う物が両方、人名用漢字に採用されています。

「凛」と「凜」

どこが違うかというと、「つくり」の部分の下の方が、

「凛」=「示」

「凜」=「ノ木」

なのです。わかりますか?

それを久々に思い出したのは、明治生命が毎年発表している「赤ちゃんの名前」のランキングを目にしたからです。

2014年の女の子の「名前ランキング」の「1位」は、

「陽菜」と「凛」

だったそうです。「示」のほうの新しい「凛」ですね。これは、「平成ことば事情3646凛か?凜か?」によると、「ベネッセコーポレーション」の「赤ちゃんの名づけランキング」の「2009年」の女の子部門で、「凛」堂々「1位」に入っていますから、2009年からずっと人気の名前で、「明治生命」デモようやく「ベスト10」に入って来たと。一方、注目は、「10位」に、

「『ノ木』のほうの『凜』」

が入っているのです。ややこしい!

過去の「明治生命」のランキングで、「凜」と「凛」に注目して見てみると、全て「ノ木」のほうの「凜」が、

2013年 「凜」=6位

12年 「凜」=8位

11~06年 ******(ランクインなし)

05年 「凜」=7位

04年 「凜」=3位

03年 「凜」=4位

02年 「凜」=8位

01~   ********(ランクインなし)

ということで、「明治生命」の赤ちゃんの名前ランキングで「凜」が初めて出て来たのは、

「2002年」

で、その後も「ベスト10」の常連ですが、「示」のほうの「凛」がベスト10に入ったのは「今回が初めて」ということですね。

(2014、12、17)

2014年12月19日 10:55 | コメント (0)

新・ことば事情

5621「『メロス』は歌」

 

中川右介さんの『すっきりわかる!超訳「芸術用語」事典』(PHP文庫)を読んでいたら、

「『メロス』はギリシャ語で『歌』」

と書かれていました。え!本当!?

「メロドラマ」

「メロ」は、そこから来ていると。「ソープオペラ」にも通じるかもしれませんね。

いや、それはいいとして、

「走れメロス」

ですよ、中川さん。あの「メロス」=「歌」だとすれば、「走れメロス」は、

「走れ、『歌』」

ということだったのですか?

知らなかったなあ・・・。

(2014、12、17)

2014年12月18日 21:46 | コメント (0)

新・ことば事情

5620「後ろ倒し2」

 

平成ことば事情5075「後ろ倒し」の続報です。

今月(2014年12月)開かれた「新聞用語懇談会 放送分科会」で、毎日放送の委員から出た質問です。

『大学生の就職活動開始時期を3年生の12月から4年生の4月に"後ろ倒し"にするというニュースがありましたが、当該用語を使っていますか?また、社内で議論等はありましたか?』

これに対する各社の回答は、

→(ytv)去年4月の放送分科会で討議しました。

(NHK)政治家の談話などで出て来る。現場で特に議論したことはないが「いわゆる"後ろ倒し"」のような使い方をする。単独では使わない。最近の言葉のように思われるが、過去データを調べたら30件ほど出て来て、古い物は1987年の原稿で見つかった。

(日本テレビ)「引用以外では使用しない」としたが、「every.」で" "付きの"後ろ倒し"というスーパーが出て来た。

(フジテレビ)数は多くないが出て来る。経済部出稿の原稿で、就活・TPP関連など。役所が使う。「使うのはやめよう」という話は、無い。

(テレビ朝日)報道デスクに話を聞いたところ、「気持ちのいい言葉ではないので、できたら言い換えたい。引用は仕方がない。しかし100%のチェックは、できていない」とのこと。

(テレビ東京)「開始時期をずらす」「先送り」などとする。過去データを検索したら2件だけ出て来た。「東証取引時刻の後ろ倒し」「オバマケア登録の後ろ倒し」。

(WOWOW)使わない。

(共同通信)読者から苦情が来たので、「使わないように」と去年4月、社内通達を出した。「繰り下げる」「時期を遅らせる」などに置き換える。去年4月以降は「後ろ倒し」は出ていない。なお、「前倒し」も『岩波国語辞典』によると、「『繰り上げ』でも済むのに、1973年ごろに官庁俗語として現れたのが、広まった語」と載っている。朝日新聞は、見出しに何回か使っていた。

(ABC)特に規定なし。ラジオニュースでは事例なし。わかりにくいので、使わないようにしている。

(KTV)発言引用は仕方がないが、「遅らせる」に言い換えるようにしている。

(ytv)就活のリポートの記者の顔出しで出てきたことはある。特に問題にはならなかったが、できるだけ使いたくない。

(TVO)就活の場合、「いつ」を基準にして「後ろ倒し」なのかが分かりにくい。

(TBS)「後ろ倒し」は、見出しでは使いやすいので出て来たが、「引用」以外には使わないほうが良い。「前倒し」があるので、その「対語」として出て来たのでは?「死にざま」の「対語」として「生きざま」が出て来たように。

(新聞協会・伊東用語幹事)朝日新聞が「わかりやすい」という理由で「後ろ倒し」をよく使っているが、新聞他社は使っていない。「繰り下げ」だと順番も下げるので、それは違うという声も。読売新聞では「役人と経団連が作った、品のない言葉だから使うな」とお達しがあったそう。期間をずらすだけなので、「倒し」ではない。

 

というものでした。

この中で、NHKさんのデータでは、

「古い物は『1987年』の原稿で見つかった。」

というのは驚きですね!「昭和」ですやん!そんな昔から「後ろ倒し」は、あったのか!

それと、テレビ朝日さんのご指摘、

『「前倒し」も『岩波国語辞典』によると、「『繰り上げ』でも済むのに、1973年ごろに官庁俗語として現れたのが、広まった語」と載っている。』

これも『岩波国語辞典』を引いてみたら確かに載っていました。『岩波』は「1973年ごろから」とか「具体的な年代が書いてあるのが特徴」ですね。たとえば、

「十手」

は、「じって」と読むのが正しいのに、本来の読み方ではない「じゅって」という言い方が出て来たのは、

「1955年ごろから」

と書いてあります。このあたり、特徴的です。

話がそれましたが、「前倒し」も「1973年ごろから出て来た官庁俗語」とのことで、

「1973年」は、誰が「総理大臣」かな?と思ったら、

「田中角栄」

でした。いろいろと「前倒し」させたのでしょうかね?

(2014、12、17)

2014年12月18日 17:39 | コメント (0)

新・ことば事情

5619「薬事法の名称変更」

 

11月25日に「薬事法」が改正されて名称が変わりました。

新しい名称は、

「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」

だそうです。長いな。この法律の、医薬界での略称は、

「薬機法」

のようですが、放送でどうすればいいのでしょうか?「危険ドラッグ」関係などで、今後しばしば出て来そうです。当面は、

「改正された薬事法」

等と言えると思いますが、いつまでも、そう言っているわけには行きません。

「改正薬事法」

とするとわかりやすいですが、「薬事法」はこれまでにも、ちょくちょく改正されているので、

「どの改正を指すのか、分からない」

上に、今回の改正は、名称も変わるぐらい大きなものなので、やはり「新しい名前」が必要かと思います。ちなみに「薬事法」という名前は「略称」ではなく「正式名称」です。

 

放送各社はどのように定めているか、今月(2014年12月)5日に開かれた「新聞用語懇談会 放送分科会」で尋ねてみたところ、

【NHK】

おととい(12月3日)、社会部で「医薬品医療機器法」に統一した。原稿などでは「薬事法、現在の医薬品医療機器法」という言い方も。

【共同通信】

役所(厚労省)がそう言っているので、社会部で「医薬品医療機器法」としたが、見出しは「医薬品法(旧・薬事法)」

 

という回答を頂きました。今後も注目していきます!

 

(追記)

平成ことば事情5796「医薬品医療機器法」も、お読みください。

(2015、7、28)

 

 

(2014、12、17)

2014年12月18日 14:17 | コメント (0)

新・ことば事情

5618「『馬油』の読み方」

ASKA元被告関連の栩内香澄美被告の裁判で、

「馬油」

というのが出て来ました。この読み方は、

「マーユ」

でしょうか?それとも、

「バーユ」

でしょうか?あるいは、それ以外でしょうか?「ミヤネ屋」では、

「バーユ」

と読みましたが、各社はどうしているのか?今月(2014年12月)の「新聞用語懇談会 放送分科会」で質問したところ、各社から、以下のような回答を頂きました。

 

(NHK)「馬油」はニュースでの用例はない。しかし「マーユ」と言うと「麻油」と間違いやすいのではないか。区別するなら「バーユ」。「バ」は日本語読み、「マ」は中国語読み。「バユ」の「バ」が、言いやすいので伸びて「バーユ」となる。

(日本テレビ)温泉などに行ったときに見る化粧品の一種は、「マーユ」。

(TBS)30年以上前から寒冷地のスポーツ・マラソンなどで使用しているのは、「バーユ」。

(KTV)30年ほど前に野球選手の間で「毛が生えてくる」と評判だったのは、「バーユ」だった。商品名は「尊馬油(ソンバーユ)」。

(MBS)ヤケドにも効く万能軟膏「バーユ」。

(TVO)先日の熊本での「新聞用語懇談会 秋季合同総会」の際に、土産物屋で見かけたものに、「よかばいバーユ」という商品があった。

(NHK)私がきょう持って来た実物(!)には「バーユ」とカタカナで表記がある。

(テレビ朝日)中国語では「マーヨー」。それが「マーユ」になったのでは?アナウンサーに聞いたところ、「これまで『マーユ』としか読んだことがない」というアナもいた。

 

ということで、「マーユ」「バーユ」両方の意見が出ましたが、多数派は「バーユ」ということで、「ミヤネ屋」では、今後出て来る「馬油」は、ルビを振って、

「馬油(バーユ)」

とすることにしました。

(2014、12、17)

2014年12月18日 10:12 | コメント (0)

新・ことば事情

5617「『インスタグラム』の言い換え」

 

先日、フィギュアスケートの安藤美姫さんが、スペインのハビエル・フェルナンデス選手と付き合っていると、インターネット上に写真を載せて発表しました。そのネット上のアプリは、

「インスタグラム」

という物だったのですが、これは「ツイッター」などと同じく「登録商標」のはず。放送で、そのままの名前で出してもいいのか?というか、

「インスタグラムで発表」

と聞いて、視聴者の皆さんは分かるのか?何か説明文が要るのではないか?という話になりました。「ミヤネ屋」では、

「写真共有サイト」

という説明を付けました。また、11月27日の日本テレビ「スッキリ!!」では、

「写真投稿サイト」

という説明を付けていました。

これに関して12月の「新聞用語懇談会 放送分科会」で各社の委員に聞いたところ、

【テレビ東京】

「写真共有アプリの『インスタグラム』」

「スマホのアプリ」

【NHK】

「インターネット上の画像共有サービス『インスタグラム』」

「写真共有サービス『インスタグラム』」

「スマホ向けの画像共有サービス『インスタグラム』」

【ABC】

「インターネット上の写真投稿サイト『インスタグラム』」

「『インスタグラム』という写真版のツイッター」

という風に説明を付けていることがわかりました。

ネット関連のカタカナ文字は、本当にすぐ新しい物が出て来て、説明が大変ですね・・・。

(2014,12,17)

2014年12月17日 23:08 | コメント (0)

新・ことば事情

5616「モンサンミシェル」

平成ことば事情3913「モンサンミッシェルの表記は?」で書いた続報です。

この地名は、たまにしか出て来ないのですが、今月(2014年12月)行われた「新聞用語懇談会・放送分科会」で、毎日放送の委員から質問が出ました。

『フランスにある世界遺産(文化遺産)【英語:Mont-Saint-Michel and its Bay】の表記・読み方は「モン・サン・シェル」「モン・サン・ミッシェル」のどちらでしょうか?TBS『世界遺産』の過去2回のOAでチェックしたら、1回目は「シェル」と「ミッシェル」が混在、2回目の放送は「シェル」だった。MBSの放送では、表記は「シェル」、ナレーションは「ミッシェル」としたが・・・。外国地名の表記・読み方に関して根拠としている資料・社内規則等があればお教えください。』

これに対する各社の回答は、

(NHK)「モンサンミシェル」。共同通信の「世界年鑑」や「ユネスコ」のHPなどにも準拠。外国地名には原則「・」は入れない。

(日本テレビ)10年分の原稿を調べたが2回しか出て来ず、「モンサンミシェル」だった。

(フジテレビ)共同原稿に準拠して「モンサンミシェル」。

(テレビ朝日)決まりはないが「モンサンミシェル」。「・」は地名には入れない。外報部が決めるが、そこで分からないと、朝日新聞や共同通信を参考にする。余談だが、オバマ大統領の奥さんの「ミシェル夫人」も、当初は「ミッシェル」と「ミシェル」があったが次第に「ミシェル」に統一された。

(テレビ東京)「モンサンミシェル」。共同原稿準拠。フランス語に詳しく留学経験もある大岡委員によると「モンサンミシェル」とのこと。

(WOWOW)統一はしていない。「ミシェル」と書いて「ミッシェル」と読むと思う。

(共同通信)ハンドブックには載っていないが、実際は「モンサンミシェル」。

(ABC)社内規定なし。

(KTV)表記はフジテレビに準拠。読みは「ミッシェル」でも良いのではないか。

(ytv)以前番組で辛坊キャスターらが「モンサンミシェル」へ弾丸取材に行った際に、表記に関して広報部から問い合わせがあり、そのときに調べたものでは「NHK・読売新聞・朝日新聞・産経新聞」が「モンサンミシェル」(が一番よく出て来る)とのことで、そのようにしたことがある。

(TVO)過去5年間のニュース原稿に出て来なかった

(TBS)今回新たに「南北朝鮮・中国・台湾」以外の外国の地名表記に「統一基準」を設けないことになった。理由は、あまりにも外国地名のカタカナ表記が揺れていることや、事業局主催のイベントなどと、新聞協会の用語集などの表記が食い違うことも多いため。その都度、番組ごとに、あるいは大会ごとに表記を統一するということになった。

(NHK)「ことばのハンドブック」で規定しているが、現在カタカナ語に関しては「ウィ」「ウイ」、「ウェ」「ウエ」等の表記に関しての改定を議論している最中。

(日本テレビ)「新聞用語集」と「ATOK」を基準にしている。

(テレビ朝日)報道のニュースでは「ヴ」の「ウ濁」は使わないが、スポーツ中継などは、原則当てはまらない。制作番組には「報道ではこうだ」を説明するが、臨機応変に対応している。韓国人の人名は原則「漢字」だが、「キム・ヨナ」は、新聞みたいに「漢字」で書くと誰だかわからないので「カタカナ」。そういう例外はある。

(WOWOW)テニスの選手名で「ワウリンカ」か「バブリンカ」か、「シリッチ」か「チリッチ」かなどは、プロデューサー判断。基準としては「会場内でどうコールされているか」。例外は「フェデラー」で、会場内では「フェデレ」とコールされているが、一般的な「フェデラー」としている。

(共同通信)「共同ハンドブック」には、「原音に近く、日本人に読みやすい表記」と書かれている。原則通りにいっていないものの代表は、サッカーの「クリスチアーノ・ロナウド」。原則から言うと「ロナルド」だが、「ロナウド」としている。「ルーヴル美術館展」などのイベント名は、「ルーブル美術館」とはせずに、その表記に合わせる。

(ABC)表記は、テレビ朝日に合わせる。以前、社内のアナウンサーでその分野に詳しい先輩が、個人的に「ナブラチロワ」のことを「ナブラチローワ」と言ったり、「三者凡退」を「ワン・トゥー・スリー・イニング」と呼んで、プロデューサーやスタッフを困らせることがあった。

(MBS)TBSに合わせる。

(KTV)フジテレビに合わせる。競馬の種牡馬で、英語だと「ダンジグ」、ドイツ語だと「ダンジヒ」という呼び方で、どちらが正しいのか困ったことがあった。

(ytv)日本テレビに合わせる。「新聞用語集」に大体準拠。「ボジョレ・ヌーボー」は、「新聞用語集」は「ボージョレ・ヌーボー」と伸ばすが、日本テレビは共同通信に合わせて「ボジョレ・ヌーボー」と伸ばさないので、ytvも伸ばさない。『新聞用語集2007年版』に載っていない場合は、読売新聞の『読売スタイルブック2014』に合わせる。

(TVO)先日、テニスの若手の大会の中継で、中国の選手で「チェン」選手と呼ぶことで放送局側・大会事務局も合意し、実況アナウンサーなどは中継では「チェン」で放送したのに、審判だけが「チュン」とコールして困ったことがあった。

 

というものでした。

実際に「モンサンミシェル」に、おととしの夏に行きました。パリからのツアーで、観光バスで片道3時間半ぐらいかかって「一日仕事」になりました。(仕事じゃないけど。)

離れて見ると、とっても幻想的なんですが、実際に中に入ると「全景」が見えないので、特に何ということがない・・・というと怒られますが、ずっと階段や坂道なので、

「しんどい」

というのが感想です。離れて、写真を撮るのが良かったかな。

(2014、12、17)

2014年12月17日 21:03 | コメント (0)

新・読書日記 2014_175

『コサインなんて人生に関係ないと思った人のための数学のはなし』(タテノカズヒロ、中公新書:2014、6、10)

 

この長いタイトルと、表紙のマンガのイラストを見たときには、

「これはまさに、私のための本だ!!」

と思ったんだけだなあ・・・・。レベルが高すぎました。それと、各章の1ページ目を読み終わってページをめくると、見開きの漫画になっていて、ちゃんと文章を読もうとしている思考が分断されるという読みにくさ!これは、やめてほしいです。漫画の絵はとても上手なんだけど、内容が頭に入って来なくて、どこがおもしろいのかわかりませんでした・・・。難しかった。残念!


star2_half

(2014、12、11)

2014年12月17日 19:03 | コメント (0)

新・読書日記 2014_174

『株価暴落』(池井戸潤、文春文庫:2007、3、10第1刷・2011、7、15第6刷)

 

「半沢直樹」シリーズでおなじみの池井戸潤の作品。舞台は、銀行とスーパー。拡大手法が失敗し経営危機に陥っている大手スーパー。ワンマン経営者と取り巻き、ワンマンに反対する勢力、スーパーと一体で融資を続けてきた銀行員と、それをチェックする銀行員。チェックする側の銀行員が主人公。大手スーパー進出の際、それに反対した商店街の個人商店店主とその息子・・・。人間模様が絡み合って、最後まで息をつかせない物語になっています。


star3_half

(2014、11,27読了)

2014年12月17日 14:02 | コメント (0)

新・ことば事情

5615「サンかザンか?」

先日、「阿蘇山」が噴火した際に、「ミヤネ屋」で川田アナウンサーが、

「アソザン」

「山」を濁って読みました。私は当然、

「アソサン」

は「濁らない」ものだと思っていたのですが、確認するとやはり「濁らない」のが正しい。知らなかったのでしょうね。ま、「勉強不足」と言ってしまえばそれまでですが、

「なぜ、濁ったのか?」

という原因を考えてみる価値はあるなと思いました。「濁る」か、「濁らない」かは、どうやって決まるのでしょうか!?

そこで、具体的な山の名前を思い浮かべてみて、「サン」と「濁らない」か、「ザン」と「濁る」のかを分類してみました。私がすぐに思いついた「山」は以下の通り。

****************************************

【サン(濁らない)】

阿蘇山=「あそサン」

富士山=「ふじサン」

御嶽山=「おんたけサン」

八甲田山=「はっこうだサン」

岩木山=「いわきサン」

岩手山=「いわてサン」

高野山=「こうやサン」

 

【ザン(濁る)】

比叡山=「ひえいザン」

天保山=「てんぽうザン」

 

【サン・ザン、両方ある?】

六甲山=「ろっこうサン」と「ザン」

金剛山=「こんごうサン」と「ザン」

 

【セン】

大山=「だいセン」

 

【ヤマ】

生駒山=「いこまヤマ」

うーむ、このくらいの量だと、あんまりわからないな。もう少したくさん、山の名前を分類できないかな?あ、そうだ、あれがあるぞ!

「日本100名山」

この山の名前を分類してみましょう!

ということでさっそくやってみたら、

「サン(山)」=32

「ザン(山)」= 2(大雪(タイセツ)山・鳳凰山)

「ダケ(岳)」=38

「タケ(岳)」= 6

「セン(山)」= 1(大山)

「ヤマ(山)」=16

「その他」  = 5(トムラウシ、八幡平、美ヶ原、霧ケ峰、早池峰)

という結果が出ました。

これで見ると、明らかに「サン」と「濁らない」山が多い!「濁る」のは、

「大雪(タイセツ)山」「鳳凰山」

の2つだけでした。

私が思いついた「ザン」と「濁る」ものを足してみると、

「大雪山」「鳳凰山」「比叡山」「天保山」「六甲山」「金剛山」

これらを見ていて浮かんだ共通点は、「大雪山」を除けば、「山」の前の部分が、

「ホーオー」「ヒエー」「テンポー」「ロッコー」「コンゴー」

というように「長音」になっているのです!もしかすると、

「『長音』の後は『濁る』傾向があるのではないか?」

そうすると「阿蘇山」は「長音ではない」ので「濁らない」のですが、「アソ」という「2文字」は安定しないので、ちょっと伸ばして「3拍(3音)」の「アソー」とすると・・・・、あーら不思議、

「アソーザン」

と「濁った方」が、自然な感じになりますね。これからの類推で、もしかしたら、

「『長音』の後は、『濁る』傾向がある」

「『山』の前の部分が『2文字』の山の名前は、『ザン』と『濁って』読みたくなる傾向がある」

のかなという気がしましたが、いかがでしょうか???

(2014、12、15)

2014年12月17日 11:11 | コメント (0)

新・ことば事情

5614「正月ぶり」

 

12月8日の朝の日本テレビ『ZIP!!』を見ていたら、ことしのノーベル物理学賞受賞者の天野教授の長女で、京都大学大学院生・天野彩さん(24)が、

「家族で集まるのは、いつ以来ですか?」

と聞かれて、

「正月ぶりですかね」

と答えていました。

この「~ぶり」という言い方は、「一種の若者言葉」でしょうね。従来であれば、

「正月以来」

と答えるところですからね。

以前からこの「~ぶり」の使い方は気になっていましたが、このところ、よく耳にするようになりました。2006年に、

「平成ことば事情2722 いつぶりですか」

で気付き、ことしの3月には、

「平成ことば事情5041どれくらいぶり」

夏には、

「平成ことば事情5551小学生ぶり」

先月は、

「平成ことば事情5592いつぶり」

と、その都度書いて来て、今月・12月です。明らかにことし、「~ぶり」の使用例が増えているように思います。

早稲田大学非常勤講師で『三省堂国語辞典』の編纂者・飯間浩明さんが主宰していた、

「今年からの新語」

に、「いつぶり・正月ぶり・小学生ぶり・どれぐらいぶり」を応募すればよかったな。

(2015、12、15)

2014年12月16日 18:59 | コメント (0)

新・ことば事情

5613「高齢化率が最悪」

 

12月10日の「関西情報ネットten.」で、「高齢化が進む大阪市西成区の問題」を特集で取り上げていました。その中の、

 

「西成区の高齢化率は、大阪市内最悪の36%」

 

というフレーズが引っかかりました。

 

「高齢化率が最悪?」

 

「高齢化率が高い」のは、「悪」なのでしょうか?

 

「失業率」「事故率」「犯罪発生率」

などは明らかに、

「望ましくない出来事=悪」

ですから、この率が一番高いと「最悪」でしょう。

しかし、「高齢化」とは「悪い」ことなのでしょうか?

「高齢化」に伴ういろいろな不便な出来事、困ったことはあるでしょう。しかし、

「高齢化率=人口における高齢者の割合」

が高いことを、

「最悪」

と呼んだら、秋田県や島根県、高知県は「最悪の県」になってしまいます。

が、普通そんな風には言いません。失礼にあたりますから。

「良い・悪い」

という価値基準を、ここに持ち込むのは、おかしいのではないでしょうか。

たぶん「そんな意識はなかった」のだと思うのですが、その「意識がないこと」がまた問題だと思います。

ここは、

 

「西成区の高齢化率は、大阪市内で最も高い36%」

 

が妥当な表現だと思いました。

(2014、12、10)

 

(追記)

そのあと、よく考えてみたら、「最悪」という言葉は、実は、

 

「『当事者サイド』から出ているのではないか?」

 

つまり、

 

「自分たちが、いかにひどい状況にあるかをアピールするための表現」

 

でもあります。

だから、もしかしたら取材先の西成区関係の人がそう言っていたのかもしれません。それを、そのまま受け入れて使ってしまったということも考えられます。それだけ、

「弱い立場の人たちに寄り添う取材」

ということが言えるのかもしれません。しかし取材をする際は、

「取材先と一体化」

してしまってはいけません。もちろん、思い入れはあるかもしれませんが、あくまで、

「中立・公正の立場」

で判断して報道する姿勢がなくてはいけません。

その意味では、やっぱり「最悪」という表現を使っちゃダメだな。

(2014、12、15)

2014年12月15日 16:32 | コメント (0)

新・ことば事情

5612「愛息子」

 

「ミヤネ屋」のスーパーをチェックしていたら、こんな発注が。

 

 

「愛息子」

うん?「まなむすこ」?・・・聞いたこと、ないなあ。

 

「愛娘(まなむすめ)」

 

はあっても「愛息子(まなむすこ)」はないですね。その意味の言葉で言うならば、「子」は取って、

 

「愛息」

 

はありますね。「あいそく」と読みますが。

辞書を引いてみると、「広辞苑」「精選版日本国語大辞典」「デジタル大辞泉」「明鏡国語辞典」「新明解国語辞典」「岩波国語辞典」「新潮現代国語辞典」には「愛息子」は載っていませんでした。

結局、放送では「愛」をはずして、

 

「息子」

 

とシンプルにしました。「愛息」はどっちかというと「書き言葉」っぽいですからね。

一応グーグル検索(12月15日)。

「愛娘」=138万0000件

「愛息子」=36万8000件

「愛息」 =35万8000件

意外とネットでは「愛息子」が出て来ましたね。

それにしても、なぜ「愛娘」はあって「愛息子」はないのか?

思うに、「娘」は「愛でる」対象であるが、「息子」は「愛でる」対象ではないということでしょうか。とはいえ「愛息」という言葉はあるから、それは成り立たないか。

あ、そもそも「愛息」という言葉があったので、同じ意味で「愛息子」というのが出て来なかった、というのはどうでしょうか?

それが「音読み」で漢語っぽい「愛息」はなじまないので、「むすめ=むすこ」という対応から「まな娘=まな息子」という対応で、「愛息子」が生まれて来たという解釈は、いかがでしょうか?たぶん、これが正解だな。

でも「愛息子」は、放送では・・・「ミヤネ屋」では使いません!

(2014、12、15)

2014年12月15日 12:31 | コメント (0)

新・読書日記 2014_173

『ジワジワくる関西(WEST)』(吉村智樹、扶桑社:2014、11、25)

 

ま、関西人としては押さえておこうと。ま、「ジワジワくる」シリーズ、(最初は)インパクトがあって、嫌いじゃないので手に取った。ウム、おもしろいじゃない!これは一昔前の『VOW』だな、と思って巻末のオマケ(?)として載っていた「じわじわくる」シリーズの著者と、この本の著者の対談(もう一人、いたので「鼎談」か)を読むと、著者の吉村さんは『VOW』の関西編3冊を担当していたというではありませんか!道理で『VOW』だわ。その鼎談によると、あの『VOW』は、先日亡くなった赤瀬川原平さんの「路上観察学会」に影響を受けていると。たしかに。そして、いまや『VOW』を知らない若者もいるとのことで、この「じわじわくる」シリーズの存在意義はあると話していたが、そうか、んなに時間が流れたのか、と。たしかに、もう20年以上前かもしれませんね。当時の『VOW』、笑い死にするぐらい面白かったけど、今読んでも、そんなにおかしくないかもしれない。それは、読者である私が"年を取ったから"なんだろうな。そんなことを感じながらも、笑わせてもらいました。本棚のどこかを捜せば、『VOW』の10冊や20冊、出て来ると思います。


star3_half

(2014、12、7読了)

2014年12月11日 21:12 | コメント (0)

新・読書日記 2014_172

『MasterキートンReマスター』(浦沢直樹、ストーリー・長崎尚志、小学館:2014、12、3)

 

懐かしい漫画の「新作」です。その新作も、連載時に全て読んでいますが、単行本が出たことをツイッターで知って、翌日本屋さんで見つけて即購入。改めて、こうして"通して"読んでみると、中身が濃い!『ゴルゴ13』のように、世界の紛争の情勢が分かります。今回は、親子の愛情、仲間との友情、世界の国の民族の情勢、さらに主人公は「考古学者」でもあるので、「ヨーロッパの歴史」も、ストーリーに大きく関係してきます。それがまた勉強になるというか、「古代への情熱」のように、新しい世界に目を向けてくれます。余韻もあります。続きを読みたいです。

今回、画はもちろん浦沢直樹さんで、ストーリーが長崎尚志さん。もう、おなじみのコンビですが、この『Masterキートン』が連載されていた当時は、確かストーリーは「勝鹿北星」という、聞いたことのない名前の人だったけど、あれは、まだ小学館の社員だった長崎さんのペンネームだったのかな?と思って調べてみたら、「長崎尚志=東周斎雅楽=勝鹿北星」説と「勝鹿北星=ラデック・鯨井=きむらはじめ=菅 伸吉(=2004年12月死去)」があるようで、どうやらその辺りは、色々ときな臭くて、関係者以外にはよく分からないみたいです。そんなこととは関係なく、作品はとても素晴らしいと思います。


star5

(2014、11、30読了)

2014年12月11日 17:11 | コメント (0)

新・読書日記 2014_171

『スクープ音声が伝えた戦後ニッポン』(文化放送報道部監修、新潮社:2005、7、30)

 

11月25日は、今から44年前に、自衛隊の市ヶ谷駐屯地で、三島由紀夫が割腹自殺をした日である。そういったニュースをツイッターなどで見て、「そういえば・・・」と本棚から引っ張り出して来たのが、この一冊。つい、この間買ったつもりが、もう9年前でした・・・。薄い一冊ですが、最初の方だけ読んで、ほったらかしにしていました。それを引っ張り出した訳は、「CD付き」の冊子だったから。「文化放送」の音源を、付録(と言うか、それがメインなんでしょうけど)で付けた本なのです。それで、三島由紀夫の演説を聴こうと思ったんですね。

ところが!CDだけ、紛失している・・・この本を買った時に、先に音声だけは聴いて、そのまま本の中に戻さなかったツケが、こんなところに。整理整頓は大事ですねえ。結局、肝心の音声は聴けませんでした。本は本棚に入っているけど、CDはCDラックのどこかに紛れ込んでいるのでしょう。出て来たら、聴いてみたいと思います。


star4

(2014、11、25読了)

2014年12月11日 12:09 | コメント (0)

新・ことば事情

5611「自衛隊大阪地方協力本部」

12月10日の読売テレビのお昼のニュースで、

「自衛隊大阪地方協力本部」

に勤務する自衛官が暴力をふるって逮捕されたというニュースを放送していました。

そのニュースの「大阪地方協力本部」の部分をTアナウンサーが、

「オ/オサカチ\ホー・キョ/ーリョクホ\ンブ」

と読んだのに違和感がありました。これだと、

「大阪地方・協力本部」

と区切って読んだ感じになります。しかし、皆さん、

「大阪地方」

って、聞いたことがありますか?「近畿地方」「関西地方」ならば聞いたことがありますが。おそらくこれは、

「地方協力本部」

というのが自衛隊にあって、その「大阪支部」的なものなのでしょう。

調べてみると「ビンゴ!」でした。各都道府県に「地方協力本部」があるのです(北海道は、4つの地域に分けてあります。)そう考えると、発音は、

「オ/オサカ・チ/ホー\・キョ/ーリョクホ\ンブ」

となり、意味の区切りは、

「大阪・地方協力本部」

なのではないでしょうか?

似たようなものには、

「大阪地方裁判所」

が挙げられます。これはもちろん、

「大阪地方・裁判所(オ/ーサカチ\ホー・サ/イバンショ)」

ではなく、

「大阪・地方裁判所(オ/ーサカ・チ/ホーサイバンショ)」

ですよね。それと同じようなことですね。

これは「大阪地方」という言い方がないので普通は気付くのですが、これが「近畿地方」だと、より判断が難しくなります。例えば、国土交通省の、

「近畿地方整備局」

の読み方は正しくは、

「近畿・地方整備局(キ/ンキ・チ/ホーセービ\キョク)」

ですが、「近畿地方」をひとことで言って、

「近畿地方・整備局(キ/ンキチ\ホー・セ/ービ\キョク)」

と間違ってしまいがちなので、注意が必要です。

(2014、12、10)

2014年12月10日 13:08 | コメント (0)

新・読書日記 2014_170

『すっきりわかる!超訳「芸術用語」事典』(中川右介、PHP文庫:2014、11、19)

 

著者の中川さんから贈って頂きました。ありがとうございます。とってもハデな「蛍光ピンク」の表紙の文庫本。これは中川さんの趣味ですか?と聞いたら「PHPの『すっきりわかる超訳事典』シリーズで既に出ている『哲学用語』『カタカナ語』『故事成語』『哲学名著』事典(=これは「超解」)の表紙の色で、まだ使っていなかったのがこの色だ」ということで決まったそうです。あ、これも「PHP」か。飯間さんの『不採用語辞典』も「PHP」で、共に「蛍光色」の表紙で「辞典・事典」。「PHP」の方針かもしれません。

一口で「芸術」といっても「音楽、絵画、彫刻、演劇、映画」などなど、いろいろある。「絵画」といっても現代アートから古典まで、音楽だってムズカシイ。もういろいろ出てくると、よく分からなくなるんですよね、「系統立てて」という部分が。共通の言葉もあれば、単独の分野の言葉もある。ま、いずれも、

「難しければ難しいほと、"ツウ"ぶれる」

という気がしないでもない。スノッブな感じ。そんな気なしに、当然の言葉として使っている専門家も、いっぱいいるんだけどね。

でも皆さん、この一冊があれば、皆さんも「ツウ」ぶれること、請け合い!さあ、買った買った!と、「ガマの油売り」みたいに・・・。

大体、一つの言葉に2~3ページで説明してますから、気軽に読めます!勉強になりました!

 


star4_half

(2014、11、30読了)

2014年12月10日 12:01 | コメント (0)

新・読書日記 2014_169

『辞書には載らなかった不採用語辞典』(飯間浩明、PHP:2014、12、4)

 

飯間さんから頂きました。ことし飯間さん4冊目?ものすごく精力的に書かれていますが、これらは『三省堂国語辞典・第7版』編纂の際に生じた、いわば「余得」と言うか「余剰品」というか、つまり、大豆から「豆腐」を作るときにできた「豆乳」みたいなものですが、これがまた、おいしいんですね。

とっても目立つ「かき氷のレモンシロップ」のような「蛍光イエロー」の表紙は、「三国」に本採用されなかった鬱憤を晴らすかのような。採用されなかった「151語」もの言葉について「1語1ページ」という「ちょうどよい長さ」でコメントされているので、大変読みやすい。その中に「お祈りメール」というものがあった。企業の採用試験に落ちた受験者に、採用担当者から「今回は残念ながらご縁がなかったということで・・・今後の貴殿のご健闘をお祈り申し上げます」などと書かれたメール。この最後の慇懃無礼な文章から「お祈りメール」と呼ばれているものだが、この本は、採用担当者が「心ならずも不採用にした受験者」を「関連会社で採用してあげた」ようなもので、「反・お祈りメール」の精神を感じる。「プロ野球のスカウト」が目を付けた有望選手を、自分のチームではドラフト指名できなかったけど、他のチームに指名してくれるように頼むような感じかな。それは、著者・飯間さんの「言葉に対する愛情」に裏打ちされていると思うんですよね。

一つ、気になったのは88ページ、2008年当時の菅直人さんを「発言当時は民主党"党首"」としていたのは、「発言当時は民主党"代表"」なのではないでしょうか?

あと、178ぺージの「カルーセル」、「メリーゴーランド」「回転木馬」のことですが、私がこの言葉を「カルーセル麻紀」以外で知ったのは、リチャード・ロジャースとオスカー・ハマースタインⅡ世によって書かれたミュージカル『回転木馬(Carousel カルーセル)』の名前で、でした。


star4_half

(2014、12、8読了)

2014年12月 9日 18:30 | コメント (0)

新・ことば事情

5610「負けじとも」

先日の『関西情報ネットten.』で「ドバイ」の特集を放送していました。その中で、旅行会社の女の人が、

「ドバイは、ハワイに"負けじとも劣らない"」

と話していて、その通りにコメントフォローのスーパーが出ていましたが、これは間違い。

正しくは、

「ドバイは、ハワイに"勝るとも劣らない"」

ですね。おそらく、

「負けじと頑張る」

という表現と、

「勝るとも劣らない」

が混ざっちゃって、

「負けじとも劣らない」

になったのでしょう。典型的な「混交表現」でした。

こういった場合、スーパーで「直すか、どうか」、迷う所ですが、間違った表現を広めることを手伝ってはいけないですね。そう間違ってしゃべってしまった人には申し訳ないですけど、「ミヤネ屋」では、

「正しく直してスーパーを出す」

ことにしております。

(2014、12、4)

2014年12月 8日 12:22 | コメント (0)

新・ことば事情

5609「文太さん死す」

 

「平成ことば事情5600健さん死す」で、11月10日に亡くなっていたことがわかった映画俳優の高倉健さん(83歳)の訃報を報じた11月19日付のスポーツ紙の見出しを紹介しました。以下のようなものでした。

 

【サンケイスポーツ】健さん死す

【日刊スポーツ】  健さん死す

【スポーツ報知】  健さん死す

【デイリースポーツ】健さん逝く

【スポーツニッポン】健さん旅立つ

 

それから、3週間もたたないうちに、今度は菅原文太さんの訃報。11月28日に亡くなっていたそうです。81歳。この年頃の名優が次々と・・・。

12月2日のスポーツ紙各紙の見出しは、以下のようなものでした。

 

【サンケイスポーツ】(健さんに続いて)「文太さんも逝く」

【日刊スポーツ】(仁義なき戦い 菅原)「文太さん死す」

【スポーツ報知】(健さん追うように)「文太兄い死す」

【デイリースポーツ】(昭和の名優がまた...)「文太さんも逝くなんて」

【スポーツニッポン】(寂しい 昭和のスターまた一人)「文太さん死す」

 

文太さんの訃報で「死す」としたのは、「日刊」「報知」と「スポニチ」。「日刊」と「報知」は健さんのときも「死す」でした。しかし「デイリー」と「サンスポ」は、

 

(昭和の名優がまた...)文太さんも逝くなんて」【デイリースポーツ】

(健さんに続いて)文太さんも逝く」【サンケイスポーツ】

 

と、「健さん」と並べて、その「死」を「2人分」、悼んでいるように見えました・・・。

謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

(2014、12、4)

2014年12月 7日 12:09 | コメント (0)

新・ことば事情

5608「『日本鹿』のアクセント」

 

元青森放送のアナウンサーで、現在アナウンス学校の先生をされている大先輩からメールが届きました。

「先日、若手アナの間で『日本鹿』のアクセントをどこに置くかで議論をしていたのを耳にしました。対立していたのは、『日本鹿(ニホン+ジカ)』を、

『日本海』『日本一』『見本市』

などのように『ホ』にアクセント核を置くべきだと意見、『中2高』です。それに対して、

『日本人』『日本猿』『手長猿』

などは、『~ジ』『~ザ』『~ザ』といずれも『中4高』にアクセントがあるのではないか?といった声でした。小生も、

『複合名詞の前部が漢字2字以上、後部が漢字1字、2拍名詞のものは、原則として

前部の最後の拍まで高い』

という規則から、『日本鹿』は

『ニ/ホンジ\カ』

のように『中4高』で下降するのが適切と考えますが、如何でしょうか?

『後部要素は1拍、2拍の場合は"平板型"』

という規則もあるようですが...。(例)日本犬、日本髪、日本間、日本画 日本晴れなど」

 

うーん、難しい問題を・・・。

一応いろいろ考えて、こんな返事を出しました。

「さて、お尋ねの件ですが、私の結論から言うと。

『ニ/ホ\ンジカ』あるいは『ニ/ホン\ジカ』

です。

『ニ/ホンジ\カ』

は難しいのではないかと。

理由は、『日本+鹿』という複合語の主体は『鹿』である。『鹿』のアクセントは『シ/カ』と『平板アクセント』であり、複合語になってもその形が出来るだけ残されるほうが望ましい。まだ『日本鹿』という複合語は、『1語』となってしまうほど認識されていないと考えられ、それ故にコンパウンドはしない。コンパウンドして『ニ/ホンジ\カ』となってしまうと『シ/カ』(平板アクセント)は維持されず、『頭高アクセント』になってしまうので好ましくない。

『鹿』の種類で、

『○○ジカ』

という複合語を『広辞苑』から挙げてみると、

 

「オオジカ」「オオツノジカ」「オジカ」「ケラマジカ」「ジャコウジカ」※「ニホンジカ」「ヘラジカ」「ホエジカ」

「マメジカ」「メジカ」「ヤベオオツノジカ」「ヨツメジカ」

 

でした。これをアクセント別に分類すると(「ニホンジカ」を除く)、

 

【平板】「オ/ージカ」「オ/ジカ」「ヘ/ラジカ」「ホ/エジカ」「マ/メジカ」「メ/ジカ」

【中高】「ヤ/ベオオツノ\ジカ」「ヨ/ツメ\ジカ」「オ/オツノ\ジカ」「ケ/ラマ\ジカ」「ジャ/コ\―ジカ」

になると思います。(私の区分では)

一つも『○/○○ジ\カ』となるものはありません。

 

『NHK日本語発音アクセント辞典』を引いて、載っている単語のみ確認すると、

【平板】「オオジカ」は無くて、濁らずに「オ/ーシカ」。

【平板&頭高】「オ/ジカ」・「オ\ジカ」、「メ\ジカ」・「メ/ジカ」

【中高】「ジャ/コ\―ジカ」

 

ついでに、

『○○シカ』

と『シカ』が濁らないものは、

「アカシカ」「ウシカモシカ」「エゾシカ」「カモシカ」「サオシカ」「ヌマシカ」「マオシカ」「ヤクシカ」

でした。これをアクセント別に分類すると、「ウ/シカモ\シカ」(中高)以外は、

「ア/カシカ」「エ/ゾシカ」「カ/モシカ」「サ/オシカ」「ヌ/マシカ」「マ/オシカ」

「ヤ/クシカ」

と全て『平板アクセント』だと思いました。

『NHK日本語発音アクセント辞典』を引くと、載っていたのは、

【平板】「カ/モシカ」

だけでした。

つまり『○○○シカ』のアクセントは、『○/○○シカ』(平板)、もしくは『シカ』の『シ』の前でアクセントが降りる、

『○/○○\シカ』(中高アクセント)ではないでしょうか?

 

次に『動物の名前』の前に『日本』が付く形の『2音』の動物の名前を考えてみましょう。一番分かりやすいのは『桃太郎』のお供の動物、つまり、

『サ\ル』(頭高)・『キ/ジ』(平板)・『イ/ヌ』(尾高)

です。いずれも『2音』です。この前に『日本』を付けると、

「ニ/ホンザ\ル」・「ニ/ホ\ンキジ」(or「ニ/ホン\キジ」)・「ニ/ホ\ンイヌ」(or「ニ/ホン\イヌ」)

となります。(「犬」は「ケン」と音読みせずに元の意味を残した「イヌ」にしました。音読みと訓読みでも、アクセントが変わることもあると思います。)

 

確かに『ニ/ホンザ\ル』は『ザ\ル』となりますが、これは最初から『サ\ル』という『頭高アクセント』であり、それを保存しているのでしょう。

これに対して、『キジ』(平板)、『イヌ』(尾高)は、複合語になるので、そのまま『平板』『尾高』ではないですが、少なくとも『(ニ/ホン)キ\ジ』『(ニ/ホン)イ\ヌ』とはならないでしょう。よっぽど人口に膾炙すれば、なるかもしれませんが。

 

昔は、

『赤とんぼ』

のアクセントが、

「ア\カ」+「トンボ」→「ア\カトンボ」(頭高)

で、『赤』のアクセントを残していましたが、複合語として定着することでコンパウンドして、

「ア/カト\ンボ」

になったように、『日本鹿』もなるかもしれませんが、現時点ではまだそこまでは定着していないように思います。

(青森では、大阪よりは定着しているかもしれませんが、それでもまだそれほど定着していないからこそ、こういった議論になるのでしょう)

 

『NHK日本語発音アクセント辞典』で、

「日本○○」

の読み方で分類してみると、

(1)「ニホン」とだけ読むもの

=日本画、日本海、日本海溝、日本髪、日本酒、日本茶、日本脳炎、日本風、日本間、日本物、日本料理 

(2)「ニッポン」とだけ読むもの=なし 

(3)「両方」載せているもの

=日本銀行、日本語、日本犬、日本三景、日本史、日本紙、日本式、日本人、日本製、日本男児、日本刀、日本晴れ、日本文学、日本歴史、日本列島

となっていました。

 

これらのアクセントを分類すると、

【平板】日本画、日本画家、日本髪、日本犬、日本語、日本式、日本酒、日本製、日本茶、日本刀、日本晴れ、日本風、日本間、日本物

【中高】日本海、日本海溝、日本海流、日本記録、日本銀行、日本三景、日本人、日本男児、日本脳炎、日本文学、日本料理、日本歴史、日本列島

【平板・中高両方あるもの】日本史、日本紙、

でした。

このうち『中高アクセント』で、『ニ/ホン○\○』の形を取っているものは、『「日本海」以外の全ての単語』でした。

逆に『ニ/ホ\ン○○』の形を取っているのは、『日本海』だけでした。

 

<結論>

『日本+○○』という複合語を考えた場合に、NHKアクセント辞典では圧倒的に『ニ/ホン○\○』が多いのですが、

『○○+鹿』という複合語に注目した場合には、『○/○○ジカ』『○/○○\ジカ』が多い。

それがぶつかった場合に、どちらが優先されるのか?ということではないでしょうか。

 

今回はこんなところでいかがでしょうか。ではまた。。。」

 

これ、まだまだ議論は続きそうですねえ・・・。

(2014、12、4)

2014年12月 6日 12:54 | コメント (0)

新・ことば事情

5607「少年か?青年か?」

フジテレビの知り合いから、こんな質問を受けました。

「アメリカのミズーリ州の18歳の黒人が、白人警官に発砲されて死亡した事件で、この18歳の黒人を『少年』としていますか?それとも『青年』ですか?」

あ!?全然気にしていなかった!微妙ですね。というのも、

「『少年』の定義」

は、法律によっても違いますし、「少年=未成年」ですが、「未成年=少年」とは限らないところが、ややこしい。また逆に、「青年」も「少年」の場合もあれば、「成年」の場合もあり、これまた、ややこしくなっています。(「青年」と「成年」も、音が「セイネン」で同じだから、余計にややこしい。)

体の大きさから言えば、「アメリカの18歳」と言えば、おそらく見た目は、

「青年」

でしょう。また州によって違うのかもしれませんが、「選挙権」などの権利から言うと、

「18歳=成年」

のところが多いでしょう。この「成年」は、「少年」ではなく「青年」ですね。ややこしいけど。

一方で「お酒を飲める」のは、

「21歳から」

のところが多いので、その面では、

「18歳は『未成年』」

かもしれません。これは、

「イメージとしての『少年』」

ですね。というように、

「アメリカは、日本と違う」

という面もあります。

グーグル検索(12月3日)では、

「ミズーリ・不起訴・黒人少年」=8万1600件

「ミズーリ・不起訴・黒人青年」=8万3900件

と拮抗しています。

ネットで「新聞・放送各社の表記」を見てみると、

「黒人少年」=NHK・TBS・日本テレビ(11月25日頃まで)・CNN

朝日新聞・産経新聞・

「黒人青年」=テレビ朝日・フジテレビ・日本テレビ(11月27日以降)

読売新聞・日経新聞・毎日新聞・中日新聞・赤旗

ウォールストリート・ジャーナル

となっていました。

日本テレビは「少年→青年」に変えたのかな?なぜだろう?

一般的には、「少年」としてほうが、加害者(「白人警官」)の罪が重く感じますね。

「『少年』でも『青年』でも良い」

という場合に、あえて「少年」を使うのは、そういった「イメージ操作」の意図がある場合もあります。もしくは「権利」ということを強く意識すると、やはり「少年」という表現になるのではないでしょうか?

そして、いま(12月4日)のお昼のNHKニュースでは、

「黒人少年」

で放送していました。

(2014、12、4)

2014年12月 5日 13:40 | コメント (0)

新・ことば事情

5606「オスメス」

 

久々の社員食堂で、テレビを眺めながら昼食を取っていたら、こんなスーパーが目に飛び込んできました。

「オスメス」

何の話だろう?と思ってよくみると、「グルメリポート」のようです。え?なんでグルメリポートで「オス・メス」なんだ?と思ってよく見ると、「オスメス」ではなく、

 

「オススメ」

 

でした。漢字を交えて書くと、

「お勧め」「お奨め」「お薦め」

ですね。全部「カタカナ」で書くと、紛らわしい!

どうも、右目の白内障の手術をしてから変えたメガネが、まだ、なじんでいないようです・・・・。

(2014、12、4)

2014年12月 4日 19:38 | コメント (0)