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『道浦TIME』

新・読書日記 2014_168

『後妻業』(黒川博行、文藝春秋:2014、8、30第1刷・2014、9、25第4刷)

こわい!

タイトルは「ごさいぎょう」と読む。つまり、「後妻さん」に納まって、その後、"旦那の財産を奪う仕事"を、その筋の業界ではそう呼んでいるらしい。

小説だけど、今、進行中の事件のノンフィクションとちゃうのか!?と思わせるほど、「よく似ている」のだ。そう、ちょうど一週間前に逮捕された、京都府向日市の筧(かけひ)千佐子容疑者の事件である。読めば読むほど、「よく似ている」。しかし初出は『別冊・文藝春秋』2012年3月号~2013年11月号に連載されたもので、今回の千佐子容疑者の事件が発覚するより前の話。つまり・・・「他にもいる」である、「後妻業」に携わる者は・・・闇は深い。

著者は今年の直木賞受賞作家で大阪出身。この小説の舞台も、大阪及びその近辺である。この本は「直木賞受賞第一作」として発表された。週刊誌『FLASH』誌での著者へのインタビューによると、この小説の"モデル"となった人物は実在する。4年前にある知人姉妹から「93歳の父が、とんでもないおばさん(78歳)と付き合っている。どうすればよいか?」と相談を受けたのがきっかけだそうだ。その父の死後、公正証書遺言を楯に、全財産(遺産)をぶん取ろうとする78歳の女は、過去に少なくとも4人の男性と結婚し、夫は次々と不審死していたという。

小説では、9年間に「名城小夜子→黒澤小夜子→津村小夜子→武内小夜子」と結婚を繰り返して名字が変わり、最後は内縁関係の中瀬耕造が死亡。その前にも多くの男が事故死や病死している・・・という。しかもこの小説では、「結婚相談所」もグルだというのである・・・うーん、読めば読むほど怖くなってくる一冊。8月30日の発売から1か月で「4刷」である。今読んでおく一冊だろう。帯の言葉は、

「爺(じじい)をだますのは功徳や」

つまり小説の主人公の女は、「悪い」とは、これっぽっちも思っていないのである・・・。


star5

(2014、11、25読了)

2014年11月27日 19:55 | コメント (0)