新・ことば事情
5579「~するも」
きょう(10月21日)の日本テレビ・お昼の「ストレイトニュース」で、神戸市長田区で起きた女児殺害事件で、これまで黙秘を続けてきた君野康弘容疑者が、一転して容疑認めたというニュースが、読売テレビ発で全国に放送されました。
その際に出た、画面右上のサイドスーパーで、
「黙秘続けるも・・・一転して容疑認める供述」
と出ていました。この、
「続けるも」
に違和感が。こういった場合の「~するも」の「も」は、
「新聞や放送業界特有の言葉」
のような気がします。意味は「逆接」で、スポーツの原稿などによく出て来ますね。
「一気にホームを狙うも、タッチアウト」
「逆転を狙うも、1点を返すにとどまり万事休す」
といった具合です。今回のケースは、正しくは、
「黙秘続けたが・・・一転して容疑認める供述」
なのではないでしょうか?
「が」も「も」も同じように「逆接」ですが、明らかに用途・意味が違います。その意味の違いを考えてみると、
*「も」=「~するも」のように動詞にくっついて使われ、「~する」という動作・行動が、その時点でも続いている。しかしその結果、「~する」という動作・行動の「目的」が達せられなかった、ということを示します。「~する」という行動はいまだ「継続中」なのですが、その意味がなくなるような出来事が起こり、それが「も」の後に続いて提示されます。
*「が」=「~だが」「~ですが」「~しましたが」のような形で、自然に使われる。今回のケースだと、「が」の前は「黙秘を続けるが」という「現在進行形」ではなく「黙秘を続けたが」という「過去形」になる。「が」の前に行っていた動作・行動が、いったん「中止・終了」したことを示していると思います。ただ、
「言葉の意味を書き続けるも、伝わらなかった」
「言葉の意味を書き続けたが、伝わらなかった」
というような場合は、あまり「も」と「が」の意味合いに違いがないようにも感じます。その辺りが使い方で難しいところなのかもしれませんね。