新・ことば事情
5569「祖国は国語」
10月9日の「産経新聞」朝刊を読んでいたら、ふと目に留まった記事がありました。スコットランドの独立問題について書かれたコラムで、スペインのカタルーニャやバスクなども同じような問題を抱えていると。そしてその中で、ルーマニア出身でパリで活躍した思想家・シオランという人の言葉を紹介していました。それはこういったものです。
「私たちは、ある国に住むのではない、ある国語に住むのだ。祖国とは、国語だ。それ以外の何ものでもない」
あ、これ見たことがある!作家の藤原正彦さんの著書は、まさにここから名前を取ったであろう、
「祖国とは国語」
というものだったと思います。「シオラン」という人の言葉だったのか。それも、もしかしたら書かれていたかもしれないけれども、忘れてました。今度は覚えておこう。
ネットで「シオラン」を検索してみると(ウィキペディア、10月9日)、
「エミール・ミシェル・シオラン(Emil Cioran/仏名:Émile Michel Cioran, 1911年4月8日 - 1995年6月20日)は、ルーマニアの作家・思想家。若年期のエクスタシー経験と、メランコリー、鬱、不眠など生涯にわたる精神的苦悩をもとに、特異なニヒリズム的思索を展開した。」
とありました。おや!?ついこないだまで、生きていた方なんだ、1995年まで!もうちょっと引用すると、
「彼は『私は知識人としての自分の位置付けを最もよく表現できる国籍というものを持たない』という名言を残した。彼の初期の仕事はルーマニアで、彼の後半の仕事はフランスで行われ、そのほとんどはアフォリズムと短いエッセイの形式を取った。」
「アフォリズム」というのは、いわゆる「警句」。あ、そうか、その「警句」の一つが「祖国とは国語」であり、それはルーマニア出身で、その後フランス・パリで生活したシオラン自らの体験を踏まえたものなのかもしれませんね。
そうすると、「愛国心」というのは、
「国語を愛する」
ということになるのですね・・・私は「愛国心」にあふれる人間です!