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『道浦TIME』

新・読書日記 2014_148

『現代日本語史における放送用語の形成の研究』(塩田雄大、三省堂:2014、9、1)

 

 

NHK放送文化研究所のエース・塩田雄大氏の初めての単著。贈って頂きました。ありがとうございます。塩田さんは、これまでに数多くの論文を書かれ、『NHK日本語発音アクセント辞典』や『三省堂国語辞典』の編纂にも携わられ、「放送における話し言葉」における現在第一人者の一人と言える。"初めての著書"というのは驚いたが、会社(NHK放送研究所)の仕事として書かれたものがほとんどだろうから、「単著」とはならなかったのだろう。しかし実質的には、これまでにたくさん書かれてきている。

本書は、ラジオ放送開始以来、日本全国に伝える「放送の言葉」を先導してきたNHKが、「放送の言葉」とはいかにあるべきか?について検討・実施してきたかの歴史を、資料に基づいて追ったものである。

NHKにおいては「放送用語委員会」という組織が発足当初から存在し、その会議録などを発掘することによって、「放送の言葉のあり方」がどのように変遷して来たかが分かる。方言への対応、参考にしたイギリスBBC放送のあり方、そして放送用語のアクセントはどのようにして決められたのか?を、資料に基づいて明らかにしていく様子は、推理小説を読むようなドキドキ感がある。太平洋戦争中から戦後・現代に至るまでの「外来語」の扱い方なども、参考になる。

放送用語、そして(NHKの)アナウンサーの話す言葉が、日本語の「規範」として視聴者から思われているという事実は、我々をして、襟を正させるものである。放送関係者、必読の一冊。


star5

(2014、8、28読了)

2014年10月13日 15:34 | コメント (0)