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『道浦TIME』

新・読書日記 2014_138

『「自分」の壁』(養老孟司、新潮新書:2014、6、20)

例によって「語りおろし」。もう70歳をとうに過ぎているだろうに、精力的です、養老先生。一貫して同じことを述べているように感じるのだけど。哲学的です。

帯には「『自分探し』なんてムダなこと!」

「『バカの壁』のその先へ~最初から最後まで目からウロコの1冊」

とバンバン押して来ています。売れているようです。内容、結構難しいとは思うのだけど。でも一貫して同じことを言っているので、新鮮味はない。しかし勉強になる。私たちも、一回、読んでも忘れてるからね。

「アメリカ人は共生が好きではない」(56ページ)

「長期的な議論をする場が必要」(75ページ)

「政治問題化の弊害」(85ぺージ)では、

「政治問題化した緊張した状況では、なにか発言するとしてもいつも『どちらの味方なのか』だけで判断されるようになる。どちらでもない、という立場が許されなくなってしまうのです」

として、東電の問題でも「原発は悪い」「即時撤廃」とすると、今後「廃炉」など原子力の問題に取り組もうとする若い人たちがいなくなってしまう。短期間の意見としては正しくとも、長期的に取り組まなければならない問題の弊害になってしまうとして、短絡的なものの考えをする"人間"に警鐘を鳴らしています。その通りだと思います。

「日本では、土地に関する私権が強すぎるとされています。(中略)その点から考えていくと日本は昔から民主主義の国だったともいえるのです。山本七平は「『大言海』には、『下克上』とは『でもくらしい』ということと書いている」と紹介している。」(93ページ)

ここに出て来た「でもくらしい」=「デモクラシー」=「民主主義」ですね。

「日本の特殊性を示す例としては、自殺の問題も挙げられます。日本は自殺が多すぎる、といった話ではありません。むしろ逆です。(中略)一人あたりのGDPと自殺率は比例することが分かっています。一人あたりのGDPが高くなるほど、自殺は増えるというと、『逆なのでは?』と思われるかもしれません。(中略)統計を見る限り、実はそうではない。一人当たりのGDPが低いエジプトでは、自殺はほぼゼロです。なぜそんなことになるのか。理由として考えられるのは、全体のGDPが高くなると格差が拡大するために、相対的な貧乏が増えるということです。実際に、格差が広がった国では自殺率が高くなるようです。要するに、貧乏とは絶対的なものではなくて、周りに金持ちがいるときに強く感じるものだということでしょう。」(101ページ)

これなんか、「目からウロコ」でしょうね。

ほかにもいっぱい、ページの耳を折った所がありますが、これぐらいにしておきますね。あとは、本書を読んでみてください。


star4

(2014、10、4読了)

2014年10月 9日 22:44 | コメント (0)