9月19日の新聞用語懇談会放送分科会で議題に取り上げられたのは、フジテレビの委員から出された、
「ということになります」
という表現についてでした。最近「~になります」という表現が目につくが、誤用ではないか?というのです。例えば、
「○○選手が、史上二人目となる投手と野手での選出となりました」
「昨日は貴重な晴れ間となりましたが、今日これからは広い範囲で雨となります」
「これで一つスコアを落とすことになります」
「二人のマッチレースということになります」
「最後のチャンスということになります」
などで、特にスポーツ・経済・天気の原稿で多くみられるとのこと。フジテレビでは、原稿に書いてあっても、アナウンサーが訂正するよう指導しているそうですが、徹底できていないのが現状だといいます。
各局の使用状況について、会議で意見が出ました。それによると、
(NHK)特に指導はしていない。
(日本テレビ)明らかな誤用は注意している。ここで挙げられた例は、正しいものと間違ったものが"混在"しているのではないか。「です」と断定したらよいケースも多い。
(テレビ朝日)アナウンサーはこういう言い方を使っているが、特に「言い換えろ」とは言っていない。スポーツデスクに聞くと、『2人のマッチレース』というカギカッコをきわだたせるために、その後に「ということになります」を付けているのでは?という意見だった。
(テレビ東京)指導は特にしていない。それほど多用もしていない。
(共同通信)ニュース原稿では使わない。出て来ない。
(朝日放送)多用・乱用はしていないと思うが、ゴルフ中継で、スコアがまだ確定していない段階では「スコアを1つ落とすことになります」というような使い方はしている。スポーツ中継では「~しました」が実況の基本。
(関西テレビ)ゴルフ中継の実況で、パーパットを外したようなシーンでは使う。競馬中継でも「最後方からのレースをすることになります」などと使う。アナウンサーの「時間稼ぎ」「調子を整える言い方」だと思う。
(読売テレビ)フジテレビの例は正しいものと間違った言い方が交ざっているが、要は、「婉曲表現」なのではないか?また「~します」を「~したいと思います」と言うのと同じような「時間稼ぎ」でもあると思う。
(テレビ大阪)「予測」をするコメントなのではないか?だから、もう確定した出来事に対しては使えない。既に「マッチポイント」になったのに、「『マッチポイント』ということになります」というような表現は、ダメ。
(毎日放送)ゴルフ中継では使う。天気予報で「雨になります」はダメで、「雨となるでしょう」と言うべきだ。
(TBS)ファミレス用語の「オムライスになります」などの「~になります」は、もちろんダメ。「です」で言い切れるものは「です」を使うべきだ。しかし、天気予報の「雨になります」は、かなり使っているかもしれない・・・。
朝日放送や関西テレビの委員の発言のように、スポーツ中継、特に「ゴルフ中継」の場合はパーパットを外して、折り返しのパットをする直前で、プロなのでおそらくボギーは取るだろうという状況では、
「これで、スコアを一つ落とすことになります」
という表現は「正しい」表現ですね。しかし、それが他のスポーツにも広がってしまったのかも知れません。
会議でこの議題が出てから、ちょっと気を付けて聞いていると、たしかに、かなり使われています。先日、耳にしたのは、アジア大会の「なでしこジャパン(女子サッカー)」の香港との試合の実況です(TBS)。
「ゴールラインへ出すのが精いっぱいという形のゲームになっています」
「チーム内ランキングで並んでいるということになります」
「残り12分半ということになっています」
「自陣からの攻めということになります」
「代表5試合目ということになりますが」
「どういう選手で構成していくかということになります」
「増矢のゴール、○○からのボールということになりました」
「あとは○○のプレーぶりはどうか?ということになっていきます」
また、9月27日午後4時45分ごろ、NHKラジオの大相撲中継を聞いていたら、
「○時△分に『満員御礼』ということになりました」
「九州場所も盛り上がってくれれば、ということになります」
といった「ということになります」表現が出て来ました。これも違和感がありますね。
スポーツ中継を中心に、かなり広範囲で使われている表現のようです。
アジア大会の実況中継では、そのほか、
「~というゲームになっています」
「コーナーキックを得ています」
「日本のフリーキックと替わっています」
「これはゴールの右にはずれています」
「きょう1ゴールを決めています」
「最後は臼井が上から狙っていった格好です」
というような表現もありました。
これを聞いていて考えたのは、
「本来実況は、見たものを伝えるので『過去形』。例えば選手が『倒れました』と表現する。しかし、より『生』ということを重要視した場合には、『倒れた』という動作が『現在も継続中』という表現の方が良い。そこで『倒れています』と言う。しかし、この表現が一般的になって使われ過ぎると、さらに『生』の情報表現が求められる。そこで出て来たのが、『倒れているということになります』、あるいは『倒れているという形になります』という表現になったのではないか?」ということです。さらに「未来形」にするには、アジア大会でのTBSのアナウンサーのように、
「あとは○○のプレーぶりはどうか?ということになっていきます」
のように、
「ということになっていきます」
という形になるのでしょう。
もちろん、実況の「口調」とか「間(ま)・テンポ」のための言葉であるのが"第一義"なんでしょうけど、もしかしたら私が考えたような事も、一つの理由ではないかなと思います。
(2014、10、13)