新・読書日記 2014_128
『江戸しぐさの正体~教育をむしばむ偽りの伝統』(原田実、星海社新書:2014、9、25)
「江戸しぐさ」というのを聞いたことがあるだろうか?雨の日に狭い通りを、傘をさしてすれ違うときに、ちょっとお互いに傘を斜めにする仕草「傘かしげ」が、私の知っている「江戸しぐさ」だ。へえー、昔の人はそんなマナーが良かったのね・・・と思っていた。ところが!
これは「ウソ」だというのだ。江戸時代には、現在のような「傘」はあまり使われず、頭の上に被る「笠」が主流で、「傘かしげ」などなかったというのだ!じゃあ、「江戸しぐさ」ってどうやってできたの?その起源は江戸時代ではなく、ここ20年ぐらいで急速に広がって来たもので、検証していくと辻褄の合わないことがたくさん出て来る。
「でも、マナーが良くなればいいじゃない」
とも思うのだが、著者は「虚偽を基に組み立てられたものは、たとえその結果が善であっても、『よし』としない」という姿勢で、「江戸しぐさ」が誰によってどのように作られて広まって来たかを追跡していく。思いも寄らなかった事実が出て来て、目からウロコの一冊。
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