9月9日、円安が進んで、
「5年11か月ぶりの円安」
というニュースが流れました。その「11か月」を、
「ジューイチカゲツ」
と読んでいるケースを、「テレビ朝日」と「読売テレビ」のニュース番組で耳にしました。正しくは当然、
「ジューイッカゲツ」
だと思うのですが、若い人の間に「ジューイチカゲツ」と読むような傾向があるのではないでしょうか?
そこで、9月19日に名古屋で開かれた新聞用語懇談会放送分科会で質問したところ、放送各社から以下のような意見が出ました。
(朝日放送)「ジューイチカゲツ」はわからないが、最近の若い人は、時間の「4分」は、もう全員「ヨンフン」と言う。
(毎日放送)それはもう、デスククラスまでもが「ヨンフン」と言っている。
(テレビ朝日)「11か月」について、アナウンサー7人に聞いたところ、1人だけ「ジューイチカゲツ」と言う人がいた。理由を聞くと「スポーツ中継などでは"数字を強調したいから"」ということだった。
(NHK)『NHKアクセント辞典』の改訂作業に際して「11か月」は「ジューイッカゲツ」で間違わないだろうが、同じ「11」でも「11か国」「11か所」「11か条」は、「ジューイッカ(国・所・条)」と「ジューイチカ(国・所・条)」の言い方があると思うので、悩んでいる。
(関西テレビ)「『ジューイチカゲツ』と言う」と答えた30歳の男性アナウンサーは「『ジューイチカゲツ』のほうが"丁寧な感じ"がする」と答えた。
(日本テレビ)「8」を「ハチ」と言うか、促音で「ハッ」と言うかということに似ているかもしれない。
(毎日放送)たしかに、「(0時)28分」を「ハチフン」と言うか「ハップン」と言うかだと、事件・事故のニュース原稿で「ハップン」は、軽い感じがして、違和感がある。
というような意見が出ました。ここで「ハッ!」としたのは、関西テレビの30歳の男性アナウンサーの答え、
「『ジューイチカゲツ』のほうが、"丁寧な感じ"がする」
ということでした。たしかにその気持ちはわかります。
しかし「1か月」の読み方は、これまでの歴史から言うと、
「言いやすいので促音化して『イッカゲツ』」
となったのです。だからそれに「10」が付いて「11か月」となっても、「1か月」の促音の読み方が維持されて、
「ジューイッカゲツ」
となってきたのですが、最近は「イッカゲツ」が定着していないので、「11か月」は、
「11」と「か月」
に分けて考えられて、
「ジューイチ」「カゲツ」=「ジューイチカゲツ」
となったのではないでしょうか?都言うようなことを、会議でも発言しました。
名古屋の会議の翌日、私用で盛岡に行き、さらにその翌々日、盛岡から仙台空港に向かう東北新幹線「やまびこ」の車内で聞いたアナウンス。それほど若いとは思われない男性の車掌が、到着予定時刻を次々と言っていくのですが、その中で、
「上野、ゴジジューイチフン」
といっていたではなりませんか!!
もうすでにこんなに広がっているのか!いや、もしかしたら、
「鉄道の時刻」
からこの言い方が広がったのかもしれません。「ヨンフン」にしても、
「北海道の電車のアナウンス」
で聞きましたし。詳しくは「平成ことば事情2079『3ふん前、4ふん前』」&「平成ことば事情4169『よんふん』の理由」をお読みください。
(追記)
11月6日のテレビ朝日「ワイド!スクランブル」で、舞鶴の女子高校生殺害事件で無罪判決を受けた中勝美容疑者が、11月5日に大阪梅田の繁華街で38歳の女性を刺して殺人未遂の現行犯で逮捕された事件位関して、男性のアナウンサーが、
「11か所を刺して」
という部分の「11か所」を、
「ジューイチカショ」
と読んでいました。普通は、
「ジューイッカショ」
なんだけどな。
(2014、11、6)
(2014、9、25)