新・読書日記 2014_116
『サッカーと人種差別』(陣野俊史、文春新書:2014、7、20)
浦和レッズで「JAPANESE ONLY」と書かれた横断幕が「人種差別」に当たるとして、社会問題になった。その少し前にも、試合中の黒人選手に対して「バナナ」が投げ入れられるという"事件"が相次いでいる。「バナナ=サル」という侮蔑表現である。その投げ入れられたバナナについて「差別に屈しない、気にしてない」という表現として、拾ってパクリと食べる選手も現れ、その行為を称賛して「差別反対の意思表示」として「バナナを食べるパフォーマンス」も話題になった。とはいえ、サッカーファン以外は、気にもしていなかった(知らなかった)ことかもしれない。
近年、「ヘイトスピーチ」など「差別行為」が公然と行われる傾向にある。米・ミズーリ州での黒人少年を白人警察官が発砲して殺してしまった"事件"もしかり。閉塞感あふれる世界の中で、"不満のはけ口"を弱い者へ向ける傾向が強くなっているように思える。
本書では「サッカー界」における「人種差別」が、どのように行われて来たか、また差別の対象となった選手たちはどう闘ってきたかを記す。帯には、
「テュラム、アンリ、エトー、ダニエウ、アウベス、バロテッリ、ボアテング、バーンズ、アネルカ、カランブー、オシム・・・凄まじい憎悪と彼らはいかに闘って来たのか?」
とある。その大部分の選手の名前は記憶にあるが、どのような「差別」を受けて闘って来たかはよく知らなかった。また、女子サッカーにおける「ヒジャブ」問題などにも言及している。勉強になった。
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