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『道浦TIME』

新・ことば事情

5533「行方不明者と安否不明者」

 

2014年8月20日未明、広島市に局地的な豪雨が降り、安佐南区と安佐北区で、多くの被害が出ました。20日午後2時現在で、警察庁の発表によると、

「死者27人 安否不明10人」

となっています。(その後、午後5時20分には、死者は32人に増えました。安否不明は9人です。)

この「安否不明(者)」は「行方不明(者)」とは、どう違うのでしょうか?

 

実は3年前の東日本大震災のすぐ後に、「行方不明者」と「安否不明者」の違いについて疑問を持ち、調べました。その際のメモによると、

 

「警察に家族などから届出のあった」=「行方不明者」

「およそ8000人の所在がわからない」=「安否不明者」

「岩手県内で行方がわからなくなっている人は3814人」=「行方不明者」

NHKは『所在不明の方』と(=「安否不明者」のこと)

NHKのニュースを見て(聞いて)いたら、『家族などから行方がわからないと届けのあった「行方不明者」の数は』という説明つきの原稿でした」

 

その際の私の考えでは、

*「行方不明者」=「行方がわからなくなっていることが確定している人」

「『行方が分からない』という届け出がある人で、縁者がいると思われる人。

*「安否不明者」「安否確認が取れない人」=「行方不明であるかどうかもわからない人」(もしかしたら、全く連絡が取れない場所で、無事でいるかもしれない人)で、縁者などからの問い合わせもないが、役場などで連絡を取ろうと試みるも連絡が取れない人。

ではないかと考えていました。

「東日本大震災のような大きな災害なので『安否不明者』という表現が出てくるが、普通なら『行方不明者』だけで済む」

ともメモしていました。また、

「先日、宮城で『安否不明者 約2000人』の生存が確認されたというニュースがありました。たぶんですが、『行方がわからなくなっている人』は『3202人』とヒトケタまで、具体的数字なのに対して『安否がわからない人』は『2万人を超えている』という『概数』なのも、それを表わしているのではないでしょうか?」

と書いています。

ただ当時の「日テレ24」のニュースでは、

「東日本大地震による死者・行方不明者数は、警察や自治体などが把握しているだけで計7000人以上となっている。また、安否がわからない人は2万人を超えている。警察庁などによると、(3月)15日午前0時現在での地震による死者は全国で1897人に上っている。最も多いのは宮城県の785人、次いで岩手県の627人、福島県の431人などとなっている。」

宮城県の災害対策本部の席上で『南三陸町内だけで、すでに遺体は1000体以上ある』との報告があった他、宮城県警が『牡鹿半島で1000体を超える遺体を発見した』と発表した。また、仙台市若林区でも、津波で死亡したとみられる200~300人の遺体が発見され、20体が収容されている。岩手県などによると、今回の地震で安否がわからない人は2万人を超えている。また、行方がわからなくなっているのは全国で3002人で、岩手県で315人、宮城県で1106人、福島県で1573人などとなっている。」

のように「死者・行方不明者が7000人以上」とリードで言いながら、本文では

「死者1897人」「行方がわからなくなっている人3002人」とあり「あわせても4899人」

で、7000人」とは開きがあるというケースもあったようです。

 

「行方不明者」は、家族や知人、親戚、同僚等から「この人いませんか?」というように、「どこどこの誰かさんがいない」ことがわかっていること。

「安否不明者」は、この街や市に何人かいたことはわかっているはずなのに、届け出がないから、把握出来ない人達です。「行方が不明」と言うよりは、「誰だかわからないけど、生きているか死んでいるかわかっていない人」で、家族・親戚もろとも被災している場合が多く、でも被災の人数としてカウントしている人達のようです。

福島出身の詩人・和合亮一さんの詩集『詩の礫』(96 ページ)には、「安否不明」「行方不明」という言葉が両方出て来ます。

「安否不明16630人以上。20113222242。」

「行方不明のご親戚と、発見されたご親戚のお話も伺った。20113232257

 

この「安否不明」は、2013年10月15日~16日の伊豆大島の台風26号に伴う被害でも出て来ました。10月28日に「ミヤネ屋」スタッフから届いたメールには、

「死者数で変更がありました。死者:33人  安否不明:9人」

とありました。

 

きょう、広島の土砂災害を受けて、改めて考えてみましたが、

「大きなくくり」としては、

「『行方不明者』のカテゴリーの中に『安否不明者』が入る」

と思います。

そして、事故などが起きてから"直近"の時間帯は、

「生きているかどうかに関して言う場合」は「安否不明」。

事故などからだいぶ時間が経って(1週間とか1か月とか)、

「もう生きてはいないだろうな、でも行方が分からない場合」は「行方不明者」。

という区別を考えました。そして今回の広島は、

「まだ豪雨被害・土砂崩れから時間もたっていない」

ですし、

「おそらく家の中にいて家ごと流されたのだろう。ある程度場所は分かっているが、生きているかどうかわからないという状態」

なので、

「安否不明」

が妥当だと判断しました。(日本テレビはより広いカテゴリーの「行方不明」を使っていたようですが。)

ただし、ナレーション原稿に出て来た、

「行方不明者の安否が気遣われる」

というのは「安否不明者の安否が気遣われる」ではおかしいので、そのまま「行方不明者」使いました。

(2014、8、20)

2014年8月20日 18:12 | コメント (0)