新・ことば事情
5528『野放図か野方図か?」
阿川佐和子さんの『叱られる力~聞く力2』を読んでいたら、120ページと166ページの2か所に、
「野方図」
という表記が出て来て、気になりました。これは当然、
「のほうず」
と読むのでしょうね。これって、普通は、
「野放図」
と書くのではないでしょうか?もしかしたら阿川家では(阿川弘之先生は)、また、その師匠である志賀直哉先生は、
「野方図」
と書く伝統があるのでしょうか?
そう思って『新聞用語集2007年版』を引くと、
「のほうず(野放途・野放図)」→野放図
とありました。やはり新聞・放送ではそうなんだな。
でも、『広辞苑』『精選版日本国語大辞典』を引くと、なんと
「野方図・野放途」
の順で載っていて、なんと「野放図」は載ってない!『明鏡国語辞典』は、
「野放図(野方図)」
と、「野放図」も「野方図」もありました。『デジタル大辞泉』は、
「野放図・野方図」
の順で載っていて、
「『の』は接頭語、『野』は当て字」
とあります。阿川佐和子さんが帯で「推薦」している『三省堂国語辞典・第7版』は、
「野放図」
しか載せていませんでした。阿川さんったら「推薦」しておきながら、その辞典の表記は使っていないんだ・・・。道理で、帯の文字に「三国」とは書いていなく、「国語辞典」としか書いてないと思ったら・・・。
『新明解国語辞典』も、
「野放図」
しかなく、「表記」の欄に、
「『野放』は借字」
とありました。総合すると、
「『野放途』『野方図』の方が古い表記で、最近は『野放図』と書く」
ようですね。つまり、
「漢字の表記で、年がバレる」
ということのようでした。