Top

『道浦TIME』

新・ことば事情

5543「どんもの」

 

8月27日の「ZIP!!」の中の人気コーナー「MOCO'S・キッチン」を見ていたら、速水もこみちさんが、

「丼物」

を何度も、

「どんもの」

と言っているのが気になりました。これは、

「どんぶりもの」

と普通は言うのではないでしょうか?

そもそも「丼」の読み方は、

「どんぶり」

しか、改定常用漢字でも認めていないはずです。(2010年の常用漢字改定で「丼」は常用漢字の仲間入りをしましたが、その検討当の際に「どん」という読み方を入れるかどうか検討されたが、結局入れなかったと聞いています。そもそも「丼」は「国字=日本で作られた漢字」で、「井戸」に石を投げ込んだ様子を表し、その際の音「ドンブリー」「ドブン」から読みを取ったのだと、どこかで読みました。「象形文字」ならぬ「象音文字」ですかね。)

しかし、一般的には、

「天丼」「カツ丼」「牛丼」

などでは「どんぶり」ではなく、

「どん」

と読まれています。(「どん」としか読まれていません。)ある牛丼店では、その証拠に、

「丼ぶり」

という表記も見られるほどです。(関西では元々「牛肉」が主流のため。「牛丼」ではなく「肉丼」でした。今でも、うどん店などの「丼物」メニューは、「牛丼」ではなく「肉丼」です。これは「豚肉」が主流の関東においては、豚肉を使ったまんじゅうが「肉まん」なのに対して、関西では「豚まん」という現象のちょうど逆ですが、同じ流れです。)

これは「天丼」「カツ丼」「牛丼」が、そもそも、

「複合語の略語」

であるからです。省略する前は、

「天ぷら丼(どんぶり)」「トンカツ丼(どんぶり)」「牛肉丼(どんぶり)」

だったのですが、複合語の前部要素が、

「天ぷら→天」「トンカツ→カツ」「牛肉→牛」

と略されたために後半の「どんぶり」も歩調を合わせて略し「どん」になったと考えられます。

「親子丼」

の場合は、前半の「親子」が略されていないので、

「親子どんぶり」

ですが、他の「丼物」の多くが「どん」と省略されていることにそろえて「どん」と読む傾向もあるため、

「『親子どんぶり』と読まれたり『親子どん』と読まれたり」

します。もしかしたらこの先、「親子」を略して「親」として、

「親丼」             

という言い方も出て来るかもしれません。(もう、出ている?)

ふと、思いついて、若手アナウンサー(20代後半)のY君に、

「丼物」

という文字を見せて「どう読む?」と聞いたら、

「え?『どんもの』ですよね?」

と言っていましたし、やはり若手(20代前半)のディレクターと30代後半の編集マンに同じ質問をしたら、

「どんもの」

という答えが返って来ました。アナウンス部でも聞いてみたら、30代のアナウンサー2人がともに、

「どんもの」

と答えました。夕方のニュースを担当している30代のアナウンサーと20代の女性アナウンサーは、

「どんぶりもの」

と答えました。40代半ばのプロデューサー2人と、50代のアナウンサー2人に同じ質問をしたら、4人とも、

「どんぶりもの」

でした。さらに「ミヤネ屋」の20代の若手スタッフ数人に聞いたところ、全員、

「どんもの」

と答え、中でも一番若い女性スタッフ(21歳)は、

「どんぶつ」

と答えました・・・「天王寺どんぶつ園」か!・・・「どんびき」でした。

(2014、8、27)

2014年8月28日 22:20 | コメント (0)